オーストラリア野球界にとって2023年3月のWBCは歴史的な大会となった。1次ラウンドプールB初戦、韓国を相手に激闘の末8-7で勝って勢いに乗ると、初の1次ラウンド突破を果たした。この韓国戦はプールBで番狂わせとして話題になった。
オーストラリア代表は今回のアジアプロ野球チャンピオンシップに初めて参戦し、アジアの強豪を相手に戦う。WBCのように大会をかき回す期待を抱かせる選手が集まっている。
3月のWBCで本塁打を放ったアレックス・ホール
今回のオーストラリア代表では国内リーグに限らずアメリカなど他国で活動する選手が多く、選手のバックグラウンドは多種多様である。アメリカのマイナーリーグで実績を残した選手のほか、アメリカ各地の大学で力をつけた選手など、様々な環境で世代を代表する実力をつけてきた選手が集まっている。
祖国から離れ、より高いレベルで揉まれ成長した経験は、24歳以下の若い年代の選手にとって強みとなるはずだ。海外での経験を持つ選手を、MLBでの実績があり中日にも所属していたデービッド・ニルソン監督が率いる。
打線の軸となるのはアレックス・ホールとリクソン・ウィングローブだ。
ホールはブリュワーズ傘下で安定した活躍を続け、WBCでは高橋宏斗(中日)からホームランを放つなど存在感を見せた。今大会では正捕手としての起用が期待される。
ウィングローブはフィリーズ傘下A+で101試合63打点を挙げた大型スラッガーで、WBCではキューバ戦でホームランを放っている。今大会では一塁又は指名打者で起用されるだろう。
二遊間にはWBCでの経験があるリアム・スペンスを起用できる。MLBでの経験もあり国際大会の度に走攻守で大車輪の活躍を見せるアーロン・ホワイトフィールドがオーバーエイジ枠で入り、弱点だった外野を強みに変えてくれそうだ。
投手ではコーエン・ウィンが中心的な存在となる。アメリカの名門・グランドキャニオン大を卒業後、国内リーグで昨年デビューすると先発ローテーションに定着。WBCでも追加招集され重要な局面で登板した。
オーバーエイジ枠で経験豊富なダニエル・マグラスとサミュエル・ホランドは先発もリリーフも可能であり、先発経験がある投手が少ないことを踏まえると、どちらかの先発起用も考えられる。リリーフでは約150 キロのストレートを持つカイノア・ウィンヤードから、クセのある技巧派ウィル・シェリフまで様々なタイプの投手が揃っている。
コーエン・ウィンが投手陣の中心的な存在となる
オーストラリア代表は従来、リリーフ陣を豊富に揃え、タイプの異なる投手を小刻みに継投し少ない得点でも守り切ることが多かった。しかし、今大会の代表では野手にホールやウィングローブのようなWBCの主力メンバーが含まれ、他にも年齢制限のない代表を経験した選手もいる。何かきっかけがあれば大量得点も期待できる布陣だ。
オーストラリア代表が国際大会をかき回すのは年齢制限なしの代表に限ったことではない。2019年のU-18ワールドカップの日本戦では、序盤に4点を取ってリードを守り切り4-1で勝利した。
また、2017年のU-18ワールドカップでは3-4で敗れはしたものの、小園海斗(広島)、藤原恭大(千葉ロッテ)らを擁する日本代表と延長11回まで大接戦を繰り広げた。
今大会のオーストラリア代表にはこれらの大会に出場した選手が多く含まれている。アジアプロ野球チャンピオンシップには初出場となるが、海外での経験が豊富な選手が番狂わせを狙っている。