9月10日に閉幕した「第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で、侍ジャパンU-18代表は悲願の初優勝を飾った。その要因には、馬淵史郎監督の一貫した方針の中で揃えられた幅広い戦い方ができる陣容と、選手たちの高い技術力や人間性があった。

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
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
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前回大会の経験を生かした選手選考
通常は隔年で行われるワールドカップがコロナ禍による延期で2年続けて開催された。昨年の第30回大会はアメリカ(9本塁打、長打率.487)や韓国(4本塁打、長打率.413)の長打力と比べると日本は1本塁打、長打率.301と明らかにパワーで下回った結果となった。
そこで今回はどんな選考をするのかが最初の注目点となったが、前回に引き続き指揮を執った馬淵史郎監督は「日本の高校野球の特徴である、しっかり守って機動力が使える選手、バントができる選手を選びました」と、前回の選考基準を継承した中でその精度を上げることを選んだ。
登録20選手で10日間9試合を戦い、その中で球数制限もあるという国際試合特有のレギュレーションを鑑みて、投手ができる選手の選出を1名増やし9投手を揃えた(昨年は捕手登録ながら登板した野田海人を含めた8選手)。その中で野手もできる武田陸玖(山形中央)、木村優人(霞ヶ浦)、中山優月(智辯学園)といった二刀流の選手を3名選んだ。
こうして長打力こそ欠いて見えたものの、幅広い戦法を駆使し調子の良い選手を使える陣容を整えた。
馬淵監督が大会前から感じていた手応え
大会が始まるとそれが見事に功を奏す。好調かつ制球力の高い東恩納蒼(沖縄尚学)とドラフト上位候補に挙がる球のキレと投球術を持つ前田悠伍(大阪桐蔭)を軸に投手陣を回し、球数を気にしながら、両投手は要所で3試合ずつ先発。東恩納は11回を投げて無失点、前田は16回3分の2を投げて1失点と期待に応えた。その他の投手たちも好調な投手を随時起用し9試合で計11失点のみに抑えた。
また、野手陣も守備力の高い選手たちを選んだことで失策もわずか3個と、守備から流れを作り攻撃に繋げた。打線も好調の選手を馬淵監督が見極め、適材適所に起用。大会序盤から中盤にかけては森田大翔(履正社)が4番・指名打者を中心に起用され8打点を挙げる勝負強さを見せた一方で、最後の3試合は4番・指名打者に武田を起用。武田はその3試合で8打数4安打3打点と起用に応えた。
こうして終わってみれば打率(.303)、長打率(.408)、OPS(出塁率+長打率=.806)はどれも参加12チーム中トップ。馬淵監督は分かりやすい標語として「スモールベースボール」と何度も口にしたが、優勝会見で「そうは言ってもバントや盗塁、エンドランばかりじゃなくて打つ時は打つんです」とも話したように、高い技術力を持った選手たちを揃えたことで、長打・短打、大技・小技を絡めた選考時の狙い通りである幅広い戦法で戦うことができた。
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
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そこに加えて選手たちのひたむきな姿勢がそれを可能としたのだろう。馬淵監督は優勝記者会見の最後にこう話した。
「代表結成時から日常生活、あいさつ、グラウンド整備、ベンチの掃除などを見ていても本当に良いチームだなと思って密かに期待していたんです。これからプロに行く選手、アマチュアで続ける選手といますが、全国各地でリーダーになれる選手になってもらえればと思います」
昨年の経験、それを生かした選手選考と方針、選手たちの心身両面での能力。様々な要素が掛け合わさり、史上初の快挙は成し遂げられたのだった。
表彰選手コメント
緒方漣(横浜)
MVP、首位打者(.571)、最多得点(10)、ベストナイン(二塁手)
「結果的にMVPになりましたが、全員でやってきたことの結果が自分に舞い込んできただけだと思います。とにかく低い打球でと打ち続けたことが結果に結びつきました。コンタクトに全集中を捧げて芯をとらえた強い打球を打つことができました。試合を重ねるごとに強くなって馬淵監督の目指す野球が体現できて世界一に結びついたのかなと思います」
東恩納蒼(沖縄尚学)
ベストナイン(先発投手)
「世界一も獲れて個人賞も獲れたので、とても良い大会になりました。たくさん投手がいたので最初から飛ばしていったのが良い結果になったのかなと思います。次は大学でプレーするので、そこでも侍ジャパンに入って世界一を獲れるように頑張っていきます」
第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2023年8月31日~9月10日
オープニングラウンド
9月1日(金)19:30 日本 10 - 0 スペイン
9月2日(土)19:30 日本 7 - 0 パナマ
9月3日(日)17:35 アメリカ 3 - 4 日本
9月4日(月)21:00 ベネズエラ 0 - 10 日本
9月5日(火)19:30 日本 0 - 1 オランダ
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
スーパーラウンド
9月7日(木)15:30 日本 7 - 1 韓国
9月8日(金)11:30 日本 10 - 0 プエルトリコ
9月9日(土)19:00 チャイニーズ・タイペイ 5 - 2 日本
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
決勝
9月10日(日)19:00 チャイニーズ・タイペイ 1 - 2 日本
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
開催地
台湾
出場する国と地域
グループA
メキシコ、チャイニーズ・タイペイ、韓国、オーストラリア、プエルトリコ、チェコ
グループB
日本、アメリカ、ベネズエラ、オランダ、パナマ、スペイン