9月8日まで行われた「第13回 BFA U18アジア選手権」(台湾)で惜しくも準優勝に終わった侍ジャパンU-18代表。僅差の勝負を制して決勝進出を果たした要因や2大会ぶり6回目の優勝に届かず残った課題、彼らが得たものを総括する。
小倉全由監督は帰国後の取材対応の第一声で「まずは17日間、一日一日を重ねる中でチームになってよくまとまってくれました」と選手たちを労った。8月24日から短期間でチームを作り上げていったが、結束力が日に日に増していく手応えを、大会期間中にどの選手たちも自然と口にした。
試合に出ていない際のサポートはその象徴であり、スーパーラウンドの韓国戦前には藤田琉生(東海大相模)が、決勝のチャイニーズ・タイペイ戦前には坂井遼(関東第一)が打撃投手に。大会規定の球数制限により今大会の登板が無くなった2人が相手先発の左右に合わせて買って出て、打者たちの貴重な仮想敵となって器用に球を投げ込んだ。
小倉監督もこうした献身には「すごいな、いいチームだなと思いましたね」と目を細め、全体を見渡しても「みんなよく動いてくれましたし、素直な選手たちが多かったです。和を乱す選手はいませんでしたし、自覚ある行動を取って、練習も一生懸命やってくれました」と感謝した。
スーパーラウンドでは1戦目のチャイニーズ・タイペイに1対0で勝利、2戦目の韓国には0対1で敗れた。オープニングラウンドではチャイニーズ・タイペイが韓国に1対0と勝利していたため、勝敗で並んだことはもとより、順位の優劣を決める際に採用される当該チーム同士での得失点率【得点率(得点/イニング数)―失点率(失点/イニング)の大きい数のチームが上位】の比較は熾烈を極めた。
結果として「あと1点取られていれば決勝進出を逃す」かつ「安打がほとんど打てない」(1戦目が1安打、2戦目が5安打)という状況をチーム一丸となって戦い抜いたことで、3チーム間の比較で最上位となり決勝進出に繋がった。
そして、決勝戦では1対6で敗れたものの、2日前に1安打しか打てなかった相手に対して10安打を放つ対応力の高さを見せた。これには小倉監督も「相手の速い球に対してセンターを中心に打つことができた。練習の時点からみんながバットを最短で出していました」と対応力の高さに舌を巻いた。
そんな中、決勝では1得点にしか繋がらなかったことに対しては「“監督がダメだから勝てなかった”と謝ったんです」と自らを責めたが、来年には強力な相手がより増えるU-18ワールドカップが予定されているだけに「機動力を使える選手や、塁に出られる選手を見つけたり育てたりしたいですね」と課題克服を誓った。また、選手選考についても今回は全員が夏の甲子園出場選手だったが「甲子園に出た選手から選んだわけではありません」と話すように、来年も監督・コーチを中心に全国規模で情報収集を進めていく意向を示した。
さらにこのアジア選手権で選手たちやスタッフが学んだのは、結束力の重要性や国際大会で優勝する難しさだけではない。日本、チャイニーズ・タイペイ、韓国を除けば、野球の支援体制が整っていない国や地域も多く、主将の間木歩(報徳学園)ら選手たちと小倉監督らスタッフは「恵まれた環境で野球ができていることの感謝」を、大会期間中、随所で語った。今大会はパキスタンが、出場が決まっていながらも政治的な事情で選手が揃わず棄権となったことで、同代表のジャン・ハスネン(青森・三沢高)を予備日に行われた公式練習に招待。閉会式後にフィリピン代表へのボールを贈呈と、日本高校野球連盟も様々な形でアジア地域における野球の普及・発展に寄与する行動を取った。
「このような機会を与えてくださったこと、一緒に戦ってくれた仲間やたくさんの人に感謝の気持ちでいっぱいです」と4番を務めた石塚裕惺(花咲徳栄)が語ったように、次なるステージでのプレーや今後の人生において貴重な時間を過ごしたことは間違いない。そして、スタッフたちも今大会の悔しさや出た課題を糧に、昨年に続くU-18ワールドカップ連覇を目指していく。
こうした様々な未来に繋がるかけがえのない経験が今後、彼ら一人ひとりや侍ジャパンU-18代表のチームにどんな好影響を及ぼすのか。その行方を楽しみにしたい。
選手コメント
濱本遥大(広陵)
※打率.600で首位打者、ベストナイン(外野手)
「周りの方のサポートがあってこその結果なので感謝したいです。アシスタントコーチやチームメイトが練習で速い球を投げてくれるなど、サポートしてくれたおかげで打つことができました。サポートしていただいた方のためにも今後の結果で恩返しをしたいです」
間木歩(報徳学園)
※主将
「解団式では“準優勝で悔しいけれど、応援してくれた人のためにも胸を張って今後の生活もしっかりやっていこう”と話しました。明るいチームでしたし、一人ひとりの役割を考えて行動できる選手たちばかりだったので、頼もしかったです。また、日本で野球ができていることを当たり前と思わないようにという感謝を、この大会で再確認しました。今回ともにプレーしたレベルの高い選手たちを目標にして、大学でも頑張っていきたいです」
※ベストナインには、熊谷俊乃介(関東第一)が捕手、宇野真仁朗(早稲田実)が一塁手、徳丸快晴(大阪桐蔭)が外野手として、濱本とともに選出。最多打点は徳丸が8打点、最多得点は髙山裕次郎(健大高崎)が8得点で、それぞれ表彰を受けた。
第13回 BFA U18アジア選手権
大会期間
2024年9月2日~9月8日
オープニングラウンド(グループB)
2024年9月2日(月)14:30 日本 19 - 0 香港
2024年9月3日(火)14:30 スリランカ 1 - 20 日本
2024年9月4日(水)19:30 日本 13 - 0 フィリピン
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
スーパーラウンド
2024年9月6日(金)19:30 日本 1 - 0 チャイニーズ・タイペイ
2024年9月7日(土)19:30 日本 0 - 1 韓国
3位決定戦・決勝
2024年9月8日(日)19:30 日本 1 - 6 チャイニーズ・タイペイ
開催地
台湾(台北、桃園)
出場する国と地域
グループA
韓国、チャイニーズ・タイペイ、パキスタン、タイ
グループB
日本、フィリピン、香港、スリランカ