侍ジャパン社会人代表がアジア王座の奪還を目指す第28回BFAアジア野球選手権大会は、台湾・新北市の新荘棒球場と台北市の天母棒球場で10月2日に開幕した。
開幕の2日前に中国が出場を辞退となった。出場8チームを2つのグループに分けて実施する一次ラウンドは、日本が入ったグループBから中国が抜け、香港、パキスタンとの2試合になった。
また、監督会議でグループAのフィリピンから、スーパーラウンドへの進出チーム決定戦を実施すべきという提案があり、一次リーグを終えて休養日の予定だった10月5日に、グループAの3位とグループBの2位が対戦し、勝者がスーパーラウンドに進出することになった。
日本にとっては、中国戦が予定されていた10月4日も休みとなり、5日との2連休を経てスーパーラウンドに臨むという日程変更となった。選手の一体感が高まりにくいという懸念もあったが、香港との第1戦ではそれらを見事に吹き飛ばした。
先発に指名されたのは、今夏の都市対抗一回戦で、トヨタ自動車を相手にタイブレークの延長12回まで一人で投げ抜いた谷川昌希。
「初めての台湾で、食事はやや合わないけれど、マウンドの感触はよく、気持ちよく投げられた」
そう笑顔で語った右腕は、1回表を3者連続三振で立ち上がる。すると、その裏に田中俊太(日立製作所)、福田周平(NTT東日本)、藤岡裕大(トヨタ自動車)とドラフト候補の左打者が並ぶ上位で無死満塁のチャンスを築き、敵失で先制点を貰うと、菅野剛士(日立製作所)や山内佑規(東京ガス)がきっちりとタイムリーを放ち、打者一巡は誰もアウトにならずに9点を奪う。
さらに、2回裏には打者二巡する12安打の猛攻で18点をもぎ取り、3回裏にも神里和毅(日本生命)の2ラン本塁打で30点目。4回表は左腕の平尾奎太(Honda鈴鹿)、5回表は昨年から代表入りする渡邉啓太(NTT東日本)が投げて5回コールド勝ちを収めた。
これまで、国際大会における社会人日本代表の攻撃面での課題は、140キロ台後半を超える重い球質のストレートへの対応力とされてきた。だが、実際には、スピードへの対応よりも始動の遅さとタイミングの取り方にプロ選手との決定的な差があるという印象だった。ゆえに、この試合の香港投手陣のように、120~130キロ台のボールをしっかり溜めて打ち返すことができるかどうかが、今回の打線、あるいは個々の選手の技術や対応力を見極める要素だと考えられた。その点では、大きな期待を抱ける攻撃を見せてくれたと感じている。
初の代表入りで5打数5安打5打点と大活躍した山内は、「ボールが遅いから打てた」と謙遜しつつも、「選考合宿の段階から、しっかりスイングするという意識づけが徹底されており、直前合宿でも選手の状態が上がってきている」と明かす。打撃部門を担当する若林重喜コーチも「技術を持った選手が多い。30点はあまり記憶にないが、相手のミスではなく、積極的に打って取ったのは頼もしい」と目を細める。
現地入りしてからのチームのムードもよく、3日のパキスタン戦でも投打に溌剌としたプレーを見せてくれるだろう。