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会見レポート

侍ジャパントップチーム栗山英樹監督が退任会見「これからもないと思うくらい充実していた」

2023年6月2日

 6月2日、「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(WBC)で侍ジャパンを優勝に導き、5月31日付で任期満了となった侍ジャパントップチームの栗山英樹監督が、東京都内のホテルで退任会見を行った。

 栗山監督はまず2021年12月に指揮官へ就任してからの日々を「短い期間なのか長い期間なのか分からないが、結果的に(WBCで)勝ち切ることができて、先輩方がつくってくださった日本野球の素晴らしさを少しだけ伝えることができたかなと。見ている子供たちに『面白いな』と思ってもらえるように戦ってきたが、そう感じてもらえたら。僕も思い切りやることができた。あれだけ必死になる環境を与えてもらい感謝している。これからもないのかな、と思うくらい充実していた」と振り返った。

 約1年半の監督生活の中で、一番印象に残っている試合は「WBCの試合すべて」だという。「中国戦でもチェコ戦でも相手の選手の一生懸命な姿を感じながら、こちらも気づきがあったり、すべての試合に意味があった。(決勝でアメリカに)勝ち切った瞬間は大きなものかもしれないが、1試合1試合が生涯、忘れられない試合」と思いを語った。

 大谷翔平(エンゼルス)やダルビッシュ有(パドレス)といった日本人メジャー・リーガーも出場した今回の侍ジャパンは、史上最強との呼び声も高かった。栗山監督は代表選手を選出するにあたって「どの選手と顔を合わせても、『本当に最高のチームをお願いしますよ』という思いが伝わってきた。選手がどういう形で集まってくれるのか正直、プレッシャーもあったが、すべての選手が自分のことを捨てて、日本野球のために集まってくれた。本当に感謝している」と感謝の言葉を口にした。

 一方で、「僕は選手とコミュニケーションをとりながら前に進むタイプなので、選手とゆっくり話すことができなかったことが印象に残っている」と、新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く残っていた中での難しさや、「超一流の選手たちをケガさせてはいけない。実際にケガも起こってしまったが、各球団から宝物を預かっているという大変さ、責任というのが大きかった」といった苦労も吐露していた。

 指揮を執る中で心掛けていたことは「遅れない」ことだった。準々決勝からは一発勝負、負けたら終わりのトーナメントに突入する中で、「野球というのは迷うシーンがいっぱいある。その中で打てる手は打ち切ろうと思っていた」という。

 WBC優勝という最高の結果に導いたことで、次世代を担う野球少年少女たちに日本野球の素晴らしさを届けることができたのではないか、という思いもある。「今回のWBCを戦った選手たちは、小学生や中学生のときにWBCを見て、『いつか自分も』と思ってやってきた。10年後なのか、将来、侍ジャパンになった選手たちが、『今回(2023年)のWBCを見て刺激を受けた』という話をしてくれると信じている」と、未来への期待を口にした。

 最後に、ともに世界の頂点に立った選手たちに、「僕も一緒にやっていて、本当に感動した。今、各チームに戻って一生懸命、野球をやっている姿は見ているが、『野球をやっていてよかった』と思えるようなシーズンになってほしい」とエールを送り、「結果的に見たことのない景色を選手たちに見せてもらった。これから何度会っても、『ありがとうな』と言い続けるんだろうなと、そういうふうに思います」と、あらためて笑顔で選手たちに感謝を伝えていた。

 栗山監督がずっと口にしてきた「日本野球の魂」。それを最高の形で世界に示し、手にした最高の栄誉。その裏には指揮官と選手たちの厚い信頼関係、そして「日本野球」への熱い思いがあった。そのことが、あらためて伝わってくる最後の会見だった。

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