6月1日に閉幕した第3回 BFA 女子野球アジアカップ。コロナ禍を経てフル代表では5年ぶりの国際大会参加となった侍ジャパン女子代表だったが、結果は6戦全勝での3連覇。最初のミーティングで中島梨紗監督と選手たちが交わした『最強で最高のチームになる』という誓いは、日を追うごとにその理想に近づいていった。
これまでアジアカップは第1回(2017年)、第2回(2019年)とU-18の女子代表が参加して2連覇していたが、今回は国際大会のフォーマットが変わったこともありフル代表での参加となり、大会前から実力差のある対戦チームが多いことは分かっていた。
だからこそ大切にしたのが他国・地域の模範となるプレーや姿勢、ベンチワークだ。根底には女子野球界全体のテーマである『女子野球を当たり前の文化に』という思いがある。そしてそれは日本国内だけでなく、世界にも目は向けられている。
対戦相手は、日本野球を学ぼうと試合前のシートノックから身を乗り出して見ていた。試合中は高い技術力を見せることだけでなく、全力疾走やベンチからの声かけなども欠かさなかった。また、7イニング制の女子では4回終了後にグラウンド整備が行われるが、日本の選手たちが率先して手伝っていたところ「日本を真似して他のチームもやり始めたんですよ」と大会関係者は目を細めていた。
そして、女子野球ワールドカップ3大会連続MVPの里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)はグラウンド内外で何度もサインを求められ、試合終了後は対戦相手からともに集合写真を撮ることを求められるなど、一人ひとりに時間の許す限り対応していた。多くの尊敬を集める中で、中島監督が求めてきた世界ランキング1位にふさわしい振る舞いを各選手たちが自覚した姿が随所で見られた。
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
チームの一体感も日に日に増していった。試合会場に到着すると、選手・スタッフ全員でハイタッチを交わす。ボディコンタクトを全員で取って、気持ちを一つにしてから試合に向かった。試合直前には、中島監督の現役時代の代表在籍時から既にあった伝統の声出しで円陣を組み、田中美羽(読売ジャイアンツ)が音頭を取り、時には同部屋の中江映利加(阪神タイガースWomen)も巻き込みながらチームの雰囲気を最高潮に上げた。
代表初選出の中江は「先輩方が本当に優しくて、初選出だったのですがどんどん個性を出させてもらいました。やりやすかったですし、楽しかったです」と振り返ったように、ベテランも若手もスタッフも全員が一体となっていた。
今大会を振り返り、中島監督は「6試合通じて、先取点を取って主導権を握って、流れを渡さず同じように戦えました」と勝因を挙げ、「ベンチワークもすごく良かったですし声出しや準備もし続けてくれました」とすべての選手を称えた。




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
9月には第9回 WBSC 女子野球ワールドカップ グループステージが広島県三次市で行われ、大会7連覇を目指す戦いが始まる。
「女子野球をもっともっと盛り上げていけるように頑張りたいです」と広島県内のチームに所属する村松珠希(はつかいちサンブレイズ)が意気込むように、選手たちはこれからも「最強で最高のチーム」「女子野球を当たり前の文化に」という旗印のもと、さらなる高みを目指していく。
監督・コーチ・選手コメント
中島梨紗監督
「(9月に向けて)国内での国際大会は2014年の女子野球ワールドカップ以来です。女子野球自体をまだまだ知らない方が多いと思いますし、日本代表のチームがあるということ、世界にこんなにたくさんの女子選手・チームがあることを知ってもらうチャンスになりますので、ベストパフォーマンスができるよう準備を進めていきたいです」
木戸克彦ヘッドコーチ
「前回(2018年の女子野球ワールドカップ)行かせていただいてから5年空いたので、不安もあったのですが、ベテラン・中堅・若手を中島監督が1つにして、試合ごとに成長してくれたチームでした。中島監督も栗山英樹監督ばりの手腕を見せてくれました」
川端友紀(九州ハニーズ) 共同主将
「コロナ禍でこの侍ジャパンのユニホームを着て試合をすることがなかなかできなかったのですが、いつ大会があるか分からない中で準備してきた結果だと思います。また、飲み物の準備などたくさんのサポートをしてくれたスタッフの皆さんのおかげです」
出口彩香(埼玉西武ライオンズ・レディース) 共同主将
「選手一人ひとりの力に加え、チームワークも1日ごとに良くなっていきました。どの選手が出ても活躍できるという余裕があったので自分の結果も出ました。9月に三次で多くの方々に女子野球の魅力を知ってもらえるよう頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします」
田中露朝(ZENKO BEAMS) 大会MVP
「国内合宿からみんなでコミュニケーションを取れていて団結できたこと、香港の暑さにも対応できたことが優勝の要因だと思います。一人ひとりが自分のやるべきことを今以上に理解して、9月に向かおうと思っていますので応援よろしくお願いいたします」
三浦伊織(阪神タイガースWomen) 首位打者、ベストナイン(外野手)
「私以上にみんなが活躍して素晴らしい大会になりました。3番打者として4番の川端選手にいかに良い状態で回すかということを意識して打席に立ちました。歴代の先輩たちが築き上げてきた偉業を忘れず、この思いを若い世代にもしてもらえるように9月に向けてみんなで準備していきます」
小野寺佳奈(読売ジャイアンツ) 最優秀投手、最優秀防御率、ベストナイン(先発投手)
「素直に嬉しいですが、まさか3つもタイトルを獲れるとは思っていなくて、びっくりしています(笑)個人の結果よりチームが勝つために良い準備をしようと思ったことが結果に繋がりました。9月のワールドカップは、日本の女子野球の環境が素晴らしいことを海外の選手たちに見せられますし、日本のファンの方たちもたくさん来てくれると思うので、優勝できるように頑張りたいです」
楢岡美和(九州ハニーズ) 最多打点
「打点王のタイトルは自分1人で取れるものではないので前に出てくれた選手のおかげです。また後ろにも三浦さん、川端さんと頼もしい選手がいるので繋ぐ意識を持ちつつも自分で決めてやるという気持ちが結果に繋がりました。9月まで個々でレベルアップして、より素晴らしい野球ができればと思います」
小島也弥(九州ハニーズ) 最多得点
「今大会は1番を打たせてもらうことが多かったので、塁に出ることを意識していました。その結果が最多得点に繋がり、チームに貢献できたことを嬉しく思います。9月に向けてもっともっとレベルアップして良い試合を観ていただけるように頑張りたいです」
水流麻夏(阪神タイガースWomen) ベストナイン(救援投手)
「たくさんの点を打者の方が取ってくれたので投げやすかったのが一番の要因です。後ろもすごい野手陣ですし、全員でいただけた賞です。課題もまだ多いので自チームで克服してレベルアップしていきたいです」
英菜々子(埼玉西武ライオンズ・レディース) ベストナイン(捕手)
「受賞には正直、びっくりしました。国際大会はほぼ初めてで不安があった中で投手陣と野手陣のおかげで1試合ごとに成長ができました。さらに引っ張れるよう、もっともっとチームを引っ張れるよう課題を克服していきたいです」
岩見香枝(埼玉西武ライオンズ・レディース) ベストナイン(遊撃手)
「こうした賞をいただけると思っていなかったのが正直なところなので嬉しいです。(普段は静清高校女子硬式野球部の監督も務めているため)女子生徒からも祝福のメッセージやいろんなリアクションをもらいました。9月に向けてもっと詰めることがたくさんあるので、そこをしっかりと詰めていきたいです」
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第3回 BFA 女子野球アジアカップ
大会期間
2023年5月21日~6月1日
グループB
5月26日(金)12:00 日本 10 - 0 韓国
5月27日(土)13:00 日本 7 - 1 フィリピン
5月28日(日)16:00 インドネシア 0 - 27 日本
※開始時刻は日本時間(香港:時差-1時間)
スーパーラウンド
5月30日(火)19:00 チャイニーズ・タイペイ 1 - 12 日本
5月31日(水)16:00 日本 15 - 0 香港
※開始時刻は日本時間(香港:時差-1時間)
決勝
6月1日(木)15:00 日本 8 - 3 チャイニーズ・タイペイ
※開始時刻は日本時間(香港:時差-1時間)
開催地
香港
出場国
一次ラウンド
グループA:インド、マレーシア、タイ
グループB:香港、パキスタン、インドネシア、スリランカ
ファイナルラウンド
グループA:チャイニーズ・タイペイ、中国、香港
グループB:日本、韓国、フィリピン