9月13日から17日にかけて広島県の三次きんさいスタジアムで行われた「カーネクスト presents 第9回 WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」は、6チーム中上位3チームに入った日本、チャイニーズ・タイペイ、ベネズエラが来年にカナダで行われる「カーネクスト presents 第9回 WBSC女子野球ワールドカップ ファイナルステージ」への出場を決めた。
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
世界のレベルが上がる中で求められるもの
当初の目標であった「全勝でのグループステージ突破」を果たした侍ジャパン女子代表だが、5試合中2点差以内の試合が3試合と接戦が多かった。
中島梨紗監督は最終戦終了後の記者会見で「世界のレベルが上がってきたことを知れたことが大きいです」と振り返った。コロナ禍の影響もあって長らく国際大会ができず、ワールドカップは6連覇を達成した2018年の第8回大会以来5年ぶり。そうしたこともあって、中島監督と選手たちは他チームのレベルアップを肌でまざまざと感じた。
まずは打撃面。5大会連続出場の川端友紀(九州ハニーズ)は「パワーに加えてボール球の見極めのレベルが上がっていることを感じました」と明かし、中島監督は「国内ではアウトローに投げていれば大丈夫という認識がありますが、海外の打者はリーチもパワーもあるので一辺倒では通用しません。インコースを使いながらの投球が課題になると思います」と分析した。
また守備面では、どのチームも遊撃手を中心とした球際の強さが目立つようになり、投手に関しては手元で微妙に変化する球や緩いカーブへの対応に後手を踏むことがあった。川端は「守備でのナイスプレーもたくさんありましたし、打つだけではなく、チーププレーやサインプレーで確実に1点を取ることも大事になっていきます」と展望。また、中島監督は最後のミーティングで、スイング力の強化に加え「変化球を初球から打つ選手が出てこないと女子野球のレベルは上がっていかない」と、選手たちに課題を与えた。
来年に向けては代表20人の枠をかけた争いも始まり、新戦力の台頭も十二分に考えられるが、中島監督は「この経験をした選手たちはスタートラインが違うはず」と今大会に出場した20選手のさらなる飛躍に大きな期待を込めている。
来年のファイナルラウンドでは、相手投手のカーブに苦戦しビハインドを強いられながらも5対4のサヨナラ勝ちを収めたベネズエラ、高い守備力を前にリードを広げられず2対0で競り勝ったチャイニーズ・タイペイとの再戦や、グループAを突破したアメリカ、カナダ、メキシコとの対戦が控える。
それまでに、世界レベルに触れた選手たちがいかにその舞台を意識してプレーするか、日頃の生活を送るかが7連覇に向けて重要な鍵を握ることは間違いない。
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日本開催で発信した女子野球の魅力
そして、今大会は2014年の第6回大会(宮崎県開催)以来の日本開催とあって選手・スタッフたちは「女子野球の魅力発信」ということも大きなテーマにしていた。
地道な広報活動を続けた結果、第4戦のチャイニーズ・タイペイ戦には2409人、第5戦のキューバ戦には2758人ものファンが詰めかけ、選手たちの一挙手一投足に大きな歓声があがった。選手たちからは「感動しました」「喜びを感じました」「すごく力になりました」と感謝の言葉が並んだ。
また、チーム全員のひたむきで明るい姿勢と結束力も、訪れた人たちの心に響いたからこそ歓声となって表れたのだろう。試合前の円陣では、アジアカップに続いて田中美羽(読売ジャイアンツ)と中江映利加(阪神タイガースWomen)が先導して声をあげ、この大会では観客も手拍子で巻き込み、試合前にスタンドとの一体感を醸成した。
さらに中島監督が「若手・中堅・ベテランがそれぞれ力を発揮してくれています」と大会中に話していたように、各選手がそれぞれの役割を果たし、年齢や経験、立場に関係なく「仲が良く、切磋琢磨ができるチーム」(川端)ができた。
川端とともに共同主将を務めた出口彩香(埼玉西武ライオンズ・レディース)も「一戦一戦戦う中でチームワークが深まっていきました」と振り返り、「子どもたちもたくさん来てくれていたので“私たちも日本代表になりたい”と憧れてくれたと思いますし、すごく意義のある大会になりました」と充実した表情で手応えを語った。
来年に行われるファイナルステージでのワールドカップ7連覇と、「女子野球を当たり前の文化に」という女子野球全体のスローガンの成就に向けて、選手たちはこの大会で得た貴重な財産を糧に、さらなる邁進を続けていく。