侍ジャパン・トップチームの稲葉篤紀監督が11月26日、宮崎県日南市の南郷スタジアムで行われた「第17回みやざきフェニックス・リーグ」の埼玉西武ライオンズ対北海道日本ハムファイターズ戦で、侍ジャパンのユニフォームを着用し北海道日本ハムの指揮を執った。また、同じく建山義紀、井端弘和両コーチもベンチ入りした。
※今季のみやざきフェニックス・リーグは全試合無観客開催
稲葉監督が指揮を執るのは、優勝を飾った2019年11月17日の「第2回 WBSC プレミア12」の決勝戦以来約1年ぶり。試合は1対1の引き分けで勝利とはならかったが、新型コロナ禍で来年に延期となった東京五輪に向けて貴重な実戦の場となった。
今回の狙いについて稲葉監督は「五輪まで強化試合を含め実戦がありませんので、試合展開に応じて“五輪本番ならどうするか?”というベンチワークをしたいと思いました」と語る。その中で東京五輪のベンチ入り人数24名に近い人数での指揮は特に良い経験となったようだ。
例えば同点で迎えた8回表の攻撃で二死一、二塁の場面で8番・捕手の梅林優貴を迎えた際、「“代打出すか、出さないか”はベンチで議論になりました」と振り返る。ここで1点を獲りに行く作戦もあれば、この攻撃以降の失点を抑えることで次のチャンスに臨む作戦もある。特に捕手は誰にでもできるポジションではなく、東京五輪本番でも登録を2人にするか3人にするかと頭を悩ませるところだ。
加えて東京五輪ではタイブレークもある。「動けばいいというものではないと思います」と稲葉監督が話すように、必ずしも先手必勝が是となる舞台ではない。
そして大きなプレッシャーの中で「途中から試合に出る捕手の気持ちなどいろんなことを想像しました」と本番の状況をイメージした。結果としてはこの場面を梅林に託して凡退し勝ち越しとはならなかったものの、梅林は8回と9回を無失点に導くリードをして引き分けに持ち込んだ。
こうして久々の指揮を終えて稲葉監督は「若い選手たちとやることは我々にとっても良い刺激になりましたし、なかなか机の上の議論だけではない、いろんな想定ができる良い時間となりました」と大きな収穫を手にした。
11月27日も日本ハムの指揮を執り、中日ドラゴンズと対戦する。通常は井端コーチが一塁コーチを務めるが、この試合では「こういったコロナ禍の中で何が起こるか分かりませんから、万が一の際に慌てないようにやってもらいます」(稲葉監督)と三塁コーチを務める予定だ。
未だ混乱が続く情勢だが「野球を通じて元気を与えたい」と常々話す稲葉監督は、その実現に向けての着実に準備を進めていく。