侍ジャパントップチームが出場する強化試合「侍ジャパンシリーズ 2022」(東京ドームで11月5日に北海道日本ハムファイターズ、6日に読売ジャイアンツ、札幌ドームで11月9・10日にオーストラリアと対戦)を直前に控え、野球日本代表の栗山英樹監督にインタビュー。メンバー選考のポイントや選手起用、「侍ジャパンシリーズ2022」に向けた意気込みなどを聞いた。
――代表メンバーが決まり、気持ちの高ぶりはありますか?
「そうですね。いよいよというのは当然あります。ただ、仕事が始まるのはここからなので、選手たちの良さをどうやって出してあげるのかはここから半年間の勝負になる。ひとつひとつ丁寧にしていきたいです」
――今回のメンバー選考の一番大きなポイントはどんなところでしょうか?
「やはり投手を中心に守りをしっかりしながら日本らしい形を作るという意味では、チームの軸になるセンターラインの選手たちを選ぶというのは大事な要素でもありました。日本代表も若い選手が伸びていっているので、そのあたりはすごく丁寧に考えながら選考しました。シーズンが終わり選手たちの疲れも感じているのでそういった配慮はもちろんしましたが、若いから選んだということはなく、来年に向かって、その先に向かって必要な人に来てもらい、一番いい野球をやる。勝ち切っていくために必要な選手たちにやってもらう、そういった選考をしました」
――複数ポジションについてはこれからの試合で見ていきますか?
「例えば3点ビハインドで終盤に入ったり1点ビハインドで終盤に入ったり、形を変えなければいけない時に、ビハインドになればリスクを背負ってでも勝負をしなければいけないので守備位置の幅が必要になってきます。特にWBCの場合は球数制限があるので、投手を少し多く選出する可能性がある中でその幅は必要になってきますが、最低限のレベルは必要ですし、攻撃にも影響を与えてしまうので、シーズンと違うポジションを守っていても違和感が無いレベルなのか、そのあたりの確認はさせてもらいます」
――国際大会において捕手の重要性はどのようにお考えでしょうか?
「非常に重要なポジションなので、そこは本当に丁寧に考えていかなければいけないところ。中止になった3月の強化試合も同じようなメンバーを選んでいるのですが、捕手に関しては一緒にやってみないと分からないところがあるので、そこのところだけを考えるともう少し試合数が欲しかったなというのはあります」
――投手起用や複数ポジションも試してみたいポイントでしょうか?
「いつもと違うポジションやいつもと投げる場所が違うなど、そういった時でも自分の力を発揮しやすい投手と、やはりこういう形で試合に出場した方がいいというものを再確認させてもらおうと思っています。基本的にはどんな状況でも自分の持っているものを出してくださいというのを見たい試合であるのは間違いないです」
――村上宗隆選手への期待は?
「村上選手に関しては、僕がどうのこうの言うことではないです。あれだけの数字を残して、チームを優勝させて、みんなに感動を与えて。ただこれは通過点でしかなく、もっと良くなる選手なので。それは本当にファンの皆さんが楽しみにしていると思います」
――MLBの視察はどんな収穫がありましたか?
「アメリカで最後に勝負をする以上、アメリカ側でやっている選手たちの力というのは必要だと僕は思っています。10年間(ファイターズで)監督をやっていたのでなかなか実際に観に行けていなかったのですが、MLBへ行くとやはり自分が感じていたものと肌で感じるものは多少違っていました。思っていた以上にスピード感とボールの動きが激しくなっているので、このあたりをどう対処していくか。本当に準備しておかなければいけないなというのも理解できました」
――WBCではMLBの選手たちと対戦しますが、勝ち切るためのイメージは?
「あれだけのメンバーがアメリカは出てきていて、選手にとってこんな幸せなことはないので、嬉しくて仕方ないはず。ただこちらは嬉しさではなく勝たせなければいけない。あれだけのメンバーに10対0で勝つのはあまり想像がつかないので、少数点差でしっかり点を与えない野球をやるというのがベースになってくると思います。それを作りながら少ないチャンスを確実に生かしていく、そんな野球になっていくと思いますが、まずは点を与えない野球というのがベースになります」
――短期決戦ではデータの使い方も重要でしょうか?
「どういうデータを出してくれるのか、そこもこれからしっかりと形を作っていきます。ただデータはデータなので、最後はこちらがそれを踏まえて何を感じるかというのは捨ててはいけないと思っています。ただ、今までと違ったデータの出し方ができないかというのは、ここまでずっと探ってきたので、そこはしっかり作っていきたいと思います」
――「侍ジャパンシリーズ2022」はWBCに向けたサバイバルの意味合いもありますか?
「もちろん勝ち切るために選んだベストメンバーですが、「侍ジャパンシリーズ2022」が終わった時点で3月のWBCはまた真っ白にして選手を選考するので、今回出場する選手に関しては “僕は絶対選ばれますよね”という選ばざるを得ない状況に持っていってくれると信じているので、そういう活躍を期待しています」
――現時点で投手起用のイメージはありますか?
「ある程度長いイニングを投げられる投手、特に2番目に投げられる投手は球数制限があるのですごく大事です。逆に2番目に先発しているけど、クローザーができる投手も結構いるので、短い1イニングを投げられる投手や走者を置いても投げられる投手はいるのではないかなと。そこのところは幅を広げておかないと、どうしてもメンバー選考が難しくなってしまう。選手はそのままやっていいと思いますが、こちらは色々確認作業をしなければいけないなと思っています」
――代表監督の難しさややりがいはどんなところですか?
「とにかく難しさしかないですね。これもやってみないと分からないところもあるでしょうし。ただ、まずは今考えているのは、ファンの皆さんが本当にワクワクするような、本当に強いと思えるようなチーム構成ができるかどうかというのが非常に重要な要素なので、そこだけはぎりぎりまで精一杯やらなければいけない。それで勝つための準備をしっかりしていかなければいけないです。ただ選ばれる選手によってもちろん形が違ってくるので、そのあたりも難しさではあるのですが、シーズンをずっと戦っている選手たちを預かるように、ずっと長い時間をかけて準備をするというわけにはいかないので、そのあたりもしっかりできるように考えていきたいと思います。」
――選手たちに伝えていきたいこと、感じで欲しいことはありますか?
「日の丸を背負うことの意味や、日本野球の代表であることの意味というのはもちろん話をしますが、それは僕以上に感じてくれる選手たちが集まっていると思っているので、あえてそこに言及することはあまりないです。ただ一つだけイメージしてほしいのは、我々が日本代表や日本野球を背負うのではなくて“自分が日本代表なんだ”という覚悟だけは持ってもらうようにお願いしたいと思っています」
――「侍ジャパンシリーズ2022」に向けた意気込みを聞かせてください
「我々の一番のファンサービスは勝って喜んでもらうことなので、勝ち切るということが全てだと思っています。その中で、戦いが始まる前から “こんな野球が観られるのかな”“こんな選手たちが来るのかな”という、そういうワクワク感は盛り上がるためには必要なので、その思いを持っていただけるように精一杯こちらも全力を尽くしたいと思います」