11月10日、「侍ジャパンシリーズ2022」のオーストラリア戦の第2戦が札幌ドームで行われ、侍ジャパンはこの日も投打が噛み合い9対0と大勝。栗山英樹監督の初陣となった4試合すべてに勝利し、来年3月に開催される第5回ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)に向けて弾みをつけた。
この日は投手陣の好投が際立った。
まずはトップチーム初選出の佐々木朗希(ロッテ)が試合を作る。先頭打者に安打、続く打者に四球と不安定な立ち上がりとなったが155キロのストレートで見逃し三振を奪うと、相手4番打者を併殺打に打ち取ってピンチを脱した。その後も毎回走者を出しながらも4回4安打無失点に抑えた。
吉井理人投手コーチは佐々木の投球を「調子はいまひとつで、直球も変化球もおそらく5割くらいの仕上がりだったと思います。ボールの感覚がまだしっくりきておらず探りながら投げていました」と振り返った。それでも佐々木の適応力は高く「回を重ねるごとに良くなっている印象です。本人も最後に少し感じが掴めたと言っていました。本人の調子に加え、相手も佐々木を分析して早いカウントで勝負をしてきていたので、必然的に三振数も少なかった(2個)ですが、まだまだ良くなると思います」と、さらなる成長に期待を込めた。
5回からは高橋奎二(ヤクルト)が150キロ前後のストレートで押していき、2イニングを1安打無失点。三振も三者連続を含む4個を奪った。
7回は伊藤大海(日本ハム)、8回は湯浅京己(阪神)が無失点で繋ぐと、9回は大勢(巨人)が三者連続三振で締めて完封リレーを完成させた。
打線は小刻みに得点を重ねた。相手投手陣が13四球と制球に苦しむ中、チャンスを確実にモノにした。2回に1番・塩見泰隆(ヤクルト)の2点タイムリーで先制すると、3回は押し出し、4回は4番・近藤健介(日本ハム)のタイムリーで5回までに4対0と優位に進めた。近藤は「村上さんのバットを借りたので、村神様様です。札幌ドームで自分のタオルをたくさん掲げてもらっている中で打てて良かったです」と村上宗隆(ヤクルト)と本拠地のファンに感謝した。
試合後半も、6回には塩見の安打と盗塁から作ったチャンスで周東佑京(ソフトバンク)が犠牲フライ、7回には四球と岡本和真(巨人)の安打で作ったチャンスで中野拓夢(阪神)が犠牲フライを放ち、チャンスを確実にモノにした。
9回には中野が俊足を発揮。岡本の四球の後にセンター前安打で出塁すると、甲斐拓也(ソフトバンク)のライトフライで相手右翼手が三塁に送球する間に二塁へ。さらに続く塩見の打席で相手投手が暴投をすると一気に二塁から生還した。さらに周東がタイムリーを放って、この回3点をダメ押し。終始オーストラリアを圧倒して、このシリーズを4連勝で締めた。
試合を終えて栗山英樹監督は「投手力が侍ジャパンの絶対的な特長なので、ボールが合わない中でも我慢して修正してくれました」と高く評価。この試合は攻撃の時間が長く投手陣にとっては準備が難しかったはずだが「その中でも工夫が伝わったのがすごくよかったです」と姿勢を称えた。
野手についても「一流選手たちなので、こちらが何か言わなくても、各選手から意図が伝わってきました」と話し、一塁手も務めた牧秀悟(DeNA)や岡本、二塁手も務めた中野ら自チームとは違う守備位置を務めた選手たちについては「想像以上でしたし、(守れることを)確認できました」と満足していた。
だからこそ代表選手選考については「本当に難しいと覚悟しています。丁寧にしていきたいです」と気を引き締めた。
選考を煮詰めた先にどんなチームが完成するのか。これで年内の侍ジャパンのトップチームの実戦は終了したが、WBCの王座奪還に向けた重要な時間はこれからも続いていく。
監督・選手コメント
栗山英樹監督
「佐々木は珍しく緊張感が出ていたし抜け球系を苦労していましたが、球数を重ねる中で工夫する姿勢が見えましたね。(第2先発として起用した投手らの好投が続き)なにがなんでもという意欲が表れていましたし、素晴らしかったです」
佐々木朗希(ロッテ)
「WBC使用球はフィットする部分もしない部分もあり課題が出ましたが、ストレートは途中で修正できましたし、最後はフォークもよかったと思います。よい感覚を掴むことができました。この雰囲気の中で侍ジャパンのユニホームを来て海外チームと戦えたこと大きいです。これからも自分ができる最大限の準備をしていきたいです」
高橋奎二(ヤクルト)
「結果としてはストレート、スライダーで三振が取れてよかったですが、滑るボールへの対応はまだまだ改善の余地があると感じています。WBC本戦に向けて良いアピールができました」
伊藤大海(日本ハム)
「ボールの違いはあまり気にせず、自分の形と気持ちをぶつけることができました。前回登板に続き、試合終盤の登板でしたが、他の選手と意見交換をして、しっかりと準備をしたことで、良い形で投げられたと思います」
大勢(巨人)
「今年最後の試合なので自分なりに意識を持って試合に臨み、良い締めくくりができました。他球団の投手や打者と会話させていただき、野球に取り組む姿勢や考え方を感じることができました。この経験をしっかり今後に生かせるようにしたいです」
周東佑京(ソフトバンク)
「(3回に代走して初球で盗塁を決めたことについて)自分に求められている役割は理解しています。いつでも準備はできていますし、相手投手の情報も頭に入っているので、初球から走れてよかったです」
デービッド・ニルソン監督
「侍ジャパンに圧倒されました。(コロナ禍で)なかなかチームとして活動できていなかった影響が出た試合でした。佐々木は世界で最もよい投手の1人で、球が速いだけでなくフォークも交えて我々を抑えました。私が中日でプレーした22年前とは日本の選手の体つきやスピードが違いますね。WBCに向けては(ホワイトソックスの)リアム・ヘンドリックスらMLBの選手たちも招集してチームを作っていきたいです」
ティム・ケネリー
「佐々木は素晴らしい投手でした。私を含め何人かはヒットを打てたものの圧倒されてしまいました。速いだけでなく球種も豊富なので世界で活躍する投手になるでしょう。侍ジャパンと対戦して学んだことを来年のWBCに生かしていきたいです」