9月10日、「第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の決勝戦が台湾の天母野球場で行われ、侍ジャパンU-18代表はチャイニーズ・タイペイと対戦した。先制を許す苦しい展開だったが、4回に小技と機動力を絡めて逆転に成功。2対1で勝利し、悲願の初優勝を果たした。
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試合は初回から動いた。1回表、最速156キロを誇る相手先発の孫易磊から四球と犠打、緒方漣(横浜)の安打と盗塁で1死二、三塁のチャンスを作るが、4番の武田陸玖(山形中央)が空振り三振、5番の丸田湊斗(慶應義塾)がファーストゴロに抑えられて得点できず。
すると、その裏に先発の前田悠伍(大阪桐蔭)が安打と犠打、暴投でピンチを招くと3番の柯敬賢にセンター前に弾き返されて先制を許した。それでも続く4番、5番から連続三振を奪い、最少失点に留めた。
その後は孫と前田の投げ合いが続いたが、4回に代表結成時から大切にしてきた小技や機動力を駆使した攻撃が実る。
先頭の緒方が四球で出塁し、武田が犠打を決めて緒方を二塁に進めると、続く丸田は「自分の判断で」と警戒の薄い一塁側へのセーフティーバントを試み、一度はアウトの宣告も確信のあった丸田がビデオ判定を求めた。これにベンチも応じて審判団に要求。すると判定は覆りセーフに。一、三塁にチャンスが広がると髙中一樹(聖光学院)がスクイズを敢行。これが成功して同点となるだけでなく、相手三塁手が一塁へ悪送球しボールは外野を転々。三塁手が投げた時点で、空いていた三塁へ走り始めていた一塁走者の丸田は俊足を飛ばし、一気に本塁を陥れて逆転に成功した。
初回に先制こそ許した前田だったが、今大会3試合目の登板で「今日の調子が一番良かったです」という抜群の調整能力で2回以降は抑えていき、ストレートと変化球を丁寧に投げ分けて凡打の山を築いた。
逆転以降はスクイズ失敗などで追加点を奪えず、最終7回は味方の失策で先頭打者を出し、相手の応援のボルテージは最高潮に達していた。それでも「甲子園でもアウェイの空気を感じて投げたことはありましたし、焦ることなく冷静に投げられました」と動じず後続を抑え、最後の打者をセカンドゴロに抑えると両手を突き上げ歓喜の輪の中心に吸い込まれた。
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
大会全9試合で11失点、3失策という堅守でリズムを作り、打線も本塁打は1本のみながらチャンスを見逃さないソツのない攻撃で勝ち上がってきた侍ジャパンU-18代表。決勝戦の舞台でも自分たちの野球をやりきり、世界の頂点に立った。
監督・選手コメント
馬淵史郎監督
「選手とコーチのおかげで良い思いをさせてもらいました。今日は丸田のバントが大きかったですし、前田の好投に尽きます。安定感が違いますね。無駄な四球を出さない。去年もワールドカップを経験して戦い方を学べましたし、同じコーチ陣で戦うことができたことも大きかったです。アシスタントコーチもしっかりデータを取ってくれました。今回の世界一は今後の高校野球界にとっても大きなことだったと思います」
前田悠伍(大阪桐蔭)
「ピンチの場面もたくさんありましたが一球一球丁寧に投げ込みました。点は取られましたが焦ること無く、味方が逆転してくれると信じて投げました。いろんな球種をコーナーに投げ込むことを意識して、それが実現できたことが良かったです。優勝の瞬間は一番嬉しい時間でした」
丸田湊斗(慶應義塾)
「最高の気分です。日本らしい野球で勝てましたし、しぶとく勝ち切れたことで喜びは倍増です。(脳震盪の影響でオープニングラウンド第4戦以降、欠場となった主将の小林について)隼翔は出られなくて辛かったと思うのですが、そうした感情を一切出さずに主将としての仕事を全うしてくれていたので、世界一の主将にできて良かったです」
第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2023年8月31日~9月10日
オープニングラウンド
9月1日(金)19:30 日本 10 - 0 スペイン
9月2日(土)19:30 日本 7 - 0 パナマ
9月3日(日)17:35 アメリカ 3 - 4 日本
9月4日(月)21:00 ベネズエラ 0 - 10 日本
9月5日(火)19:30 日本 0 - 1 オランダ
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
スーパーラウンド
9月7日(木)15:30 日本 7 - 1 韓国
9月8日(金)11:30 日本 10 - 0 プエルトリコ
9月9日(土)19:00 チャイニーズ・タイペイ 5 - 2 日本
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
決勝
9月10日(日)19:00 チャイニーズ・タイペイ 1 - 2 日本
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)
開催地
台湾
出場する国と地域
グループA
メキシコ、チャイニーズ・タイペイ、韓国、オーストラリア、プエルトリコ、チェコ
グループB
日本、アメリカ、ベネズエラ、オランダ、パナマ、スペイン