9月14日まで行われた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」。2大会連続2回目の優勝を目指した侍ジャパンU-18代表だったが決勝戦でアメリカに0対2で敗れ準優勝。アメリカが王座奪還を果たし、3位にはチャイニーズ・タイペイが入った。
連覇こそならなかったが、オープニングラウンドからスーパーラウンドまで無傷の8連勝を果たすなど戦いぶりは見事だった。







「結果は後からついてくるから思いきってやってほしい」
合宿初日から何度もそう口にしていた小倉全由監督。その言葉通り、選手はハツラツとプレーした。また、毎年課題になる木製バットへの対応だが、今年は国内の試合で使用可能な金属バットの基準が変わって2年目。その影響か、スイングの軌道が良くなっている手応えを合宿序盤から明かしており、ドラフト上位候補がそろう大学代表を相手にした壮行試合でも9イニングで7安打を放った。
それでも簡単にはいかないのが国際大会だ。開幕戦のイタリア戦ではわずか5安打で打線が繋がらず。早瀬朔(神村学園)の好救援や相手失策でなんとか勝利を収めたが、小倉監督は「負け試合でもある。もっとしつこくやっていかないといけません」と苦言を呈した。
だが、吸収力が早いのがこの代表の強みでもあった。翌日の韓国戦は、最速157キロ右腕のパク・ジュンヒョンらの強力投手陣の力強い球に対して、コンパクトに振り抜いてチャンスをモノにし競り勝った。小倉監督も「しつこさが出てきて自分の打撃をしてくれました」と選手たちを称えた。
その後もこうした打撃が続くとともに、日本の高校野球らしい堅実な守備と相手の隙を突く走塁で勝利を重ね、オープニングラウンドのグループA首位でスーパーラウンドに駒を進めた。
スーパーラウンドに入ってからは脅威の粘りや各選手が役割をまっとうする姿がより顕著になっていく。
アメリカ戦では最終7回に追いつき、延長タイブレークの8回に坂本慎太郎(関東第一)が追い込まれてから6球も粘って四球を奪い、岡部飛雄馬(敦賀気比)の勝ち越し打につなげた。続くパナマ戦では延長タイブレークで4点を追いつき、最後は岡部のスクイズでサヨナラ勝ち。決勝進出を決めた。
大会終了後、小倉監督が「各校の中心選手が集まる中で“チームの中の1人”ということで、みんなしっかり役割を果たしてくれました。アメリカ戦やパナマ戦の勝利はその表れだと思います」と称えたように、全員で結束して勝利を掴む姿は多くのファンの心を打った。







迎えた14日の決勝戦は、当日券も完売する超満員の中、選手たちは大きな歓声や拍手、指笛の中でプレー。試合にこそ敗れたが「これだけの応援、嬉しかったですね。選手のみんなもその幸せを感じてくれていると思います」と小倉監督は感謝。閉会式ではアメリカの応援席だけでなく球場全体から優勝したアメリカを祝福する拍手や「USA」コールが起こるなど、大会は大成功に終わったと言っていいだろう。
そして、未来ある選手たちも貴重な財産を得た。主将を務めた阿部葉太(横浜)は「特にアメリカの力は想像以上でした」と振り返り、15日の解団式では「世界のレベルを感じることができました。大学代表やトップチームに入ってアメリカにリベンジしたいです」と力強く語った。
また、小倉監督も解団式で力を込めて選手たちに伝えたことは、この負けを必ず糧とすること。もう1つが「自覚ある立派な人間になってほしい」ということだ。 「人として裏表の無い、どこを見られてもかっこいい人間になってほしい。今回の、雨の中の応援や満員の中での応援に感謝しよう。見られているんだという自覚を持ってもらったら、みんなは本当に大きく成長できると思います」
ひたむきな姿勢が目立った今回の選手たち。数字で見ても防御率、守備率、打率はすべて2位(防御率と打率はアメリカ、守備率は韓国に次ぐ※スーパーラウンド進出チームのみで比較)とバランスの取れた戦いを見せた。今年は高校野球界全体を見渡しても長距離打者が少ない代ではあったが、日本らしい堅実で隙のない野球を世界の舞台でも存分に発揮。頂点にはあと一歩届かなかったものの、胸を張っていい準優勝だった。
選手コメント
奥村凌大(横浜)
※打率.320、7打点でベストナイン(二塁手)を獲得
「日本では感じることがない世界のレベルの高さを感じて、対戦する中で慣れていって、結果を出すことができて良かったです。(好守も目立ち)持ち味の守備はこだわってきたので、まずは第一優先に考えてきました。大学に進学してからもまた侍ジャパンのユニホームを着られるように、チームを勝たせられる選手になれるよう頑張っていきたいです」
中野大虎(大阪桐蔭)
※最多勝利投手(3勝)
「夏の大阪大会で高校野球は終わりだと思ったのですが、侍ジャパンに選んでいただき、最後は負けて悔しいですが、自分が投げた試合は勝ちきれて嬉しかったです。(個人賞は)結果としてついてきて良かったです。とても仲の良い素晴らしいチームでできました」
今岡拓夢(神村学園)
※最多本塁打(1本)
「1本しか打っていないのであまり実感はありません(笑)すごくレベルの高い相手とやらせてもらい良い経験になり、攻守で課題も見つかったので次のステップに生かしていきたいです」
岡部飛雄馬(敦賀気比)
※最多盗塁(7個)
「自由に走らせてもらったので、小倉監督に感謝したいです。日の丸を背負ったということは一生ついてくるので恥じないように、これ以上の努力をして、プロ野球選手になるという夢に向かって全力で取り組んでいきたいです。投手の癖は国内ともそう変わらず首の動きなどを見て走りました。来年からは社会人野球に進みますが、自信を持ってこれからもやっていきたいです」
ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ
大会期間
2025年9月5日~9月14日
オープニングラウンド(グループA)
9月5日(金)18:30 日本 4 - 1 イタリア
9月6日(土)18:30 日本 4 - 2 韓国
9月7日(日)14:00 キューバ 0 - 3 日本
9月8日(月)18:30 日本 10 - 0 南アフリカ
9月9日(火)18:30 プエルトリコ 0 - 3 日本
スーパーラウンド
9月11日(木)18:30 アメリカ 2 - 6 日本
9月12日(金)18:30 日本 6 - 5 パナマ
9月13日(土)18:30 日本 9 - 1 チャイニーズ・タイペイ
決勝
9月14日(日)16:00 日本 0 - 2 アメリカ
開催会場
沖縄セルラースタジアム那覇、糸満市西崎球場
出場する国と地域
グループA
日本、韓国、プエルトリコ、キューバ、イタリア、南アフリカ
グループB
チャイニーズ・タイペイ、アメリカ、パナマ、オーストラリア、ドイツ、中国
侍ジャパンU-18壮行試合 高校日本代表 対 大学日本代表
侍ジャパンU-18壮行試合 高校日本代表 対 沖縄県高校選抜
試合日程
2025年8月31日(日)18:00 高校日本代表 1 - 8 大学日本代表
2025年9月2日(火)18:30 沖縄県高校選抜 3 - 4 高校日本代表
開催会場
沖縄セルラースタジアム那覇
出場チーム
高校日本代表、大学日本代表、沖縄県高校選抜