2014年12月の関西を皮切りに北海道・新潟・沖縄と巡ってきた侍ジャパン「野球指導者スキルアップ講習会」。1月23日(土)の第5回開催は軟式野球を中心とした小・中学生チームの指導者を対象に、山形県東村山郡中山町にある「荘内銀行・日新製薬スタジアムやまがた屋内練習場」で行われた。
午前中に行われた座学では最初に、昨年11月開催の「世界野球WBSCプレミア12」で日本代表トップチームチームドクターを務めた可知芳則氏が「小・中学生のからだの特徴とケガ予防」というテーマで講演。
可知氏は、野球は重大事故にかかるリスクがあり、過去に死亡事故があったことを説明しつつ、それらを防止するために環境を整えることや、万が一、疾患が発生した場合は、できるだけ早めに処置をする重要性を語り、熱中症のリスク、野球肘、野球肩を防ぐための対処、そして重症化しないための対処法にも触れた。また講演中、特に可知氏が力説したのは、「AEDの設置」、「AED設置場所の把握」である。
「なかなか起こらないことかもしれませんが、いざというときに設置場所、そして使い方が知るだけでもその後の経過が違います。最近はAEDを置いて、そしてAEDを使ったことで、救命ができたという報告が多くされていますので、AEDはどこにあるかまで把握してほしいと思います」。
続いて、侍ジャパン公式栄養サポートパートナーである株式会社明治の管理栄養士であり、2015年侍ジャパンU-12、U-15、U-18を担当した青山晴子氏が「野球選手の栄養と食事」というテーマで登壇。
青山氏は、一般人が「一般車」ならば、野球選手は「スポーツカー」と違いを車のエンジンに例えながら、エネルギー源となる炭水化物をとるだけではなく、他には脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンと5大栄養素をしっかりと摂取する「栄養フルコース型」を毎日食事で摂取することの重要性を説いている。
昼休憩を挟んで午後からは実技講習。まず走塁・キャッチボールの基本は仁志敏久氏(侍ジャパントップチーム内野守備・走塁コーチ/U-12代表監督)がレクチャー。
特に走塁面では駆け抜け、オーバーランのポイントを解説しつつ、オーバーランするときのポイントとして、「まだ小学生の段階では体の使い方を意識するよりも、まずベースの側面を踏ませることを意識してください。ベースの上を踏むとスパイクの金具に引っかかって転倒する恐れがあります。ベースが埋め込まれているものならば、側面を踏んで衝撃力を抑える狙いがあります」とU-12年代に合わせた指導法も伝授している。
その後は投手・捕手・内野手・外野手の4組に分かれ、投手は鹿取義隆氏(侍ジャパンテクニカルディレクター・トップチーム投手コーチ/2014年IBAF15Uワールドカップ代表監督)、捕手は里崎智也氏(2006年WBC日本代表/北京五輪日本代表)、内野手は仁志氏、外野手は昨年限りで現役引退した和田一浩氏(アテネ五輪日本代表/2006年WBC日本代表)が担当。
鹿取氏はボールの握り方から、足の上げ方、踏み出しする際の注意点、テイクバックの取り方、リリースまでの流れ、投げ方の基本を丁寧にコーチング。里崎氏は「ミットを意識するのではなく、ミットの中にある手の形を意識してほしい。人差し指が12時の方向に向くことで、右、左にも対応ができる」と捕球の基本を説明した。
また、仁志氏は「『グラブを立てる』という表現がこれまで使われていますが、この状態だと手首が硬直して対応ができません。できるだけ自然な形で腕が使える形にしてほしいと思います」と内野捕球の準備法を自ら実演。和田氏は外野捕球の考え方について「小中学生が戸惑うのは距離感ですね。対応策としては、あごを挙げて高く見過ぎないこと。高く見過ぎてしまうと、距離感がつかめません。またグラブの取る位置も体の近くで捕球することが大切です」と分かりやすく解説した。
最後の打撃基礎編では和田氏が再登場。「投手がテイクバックをとったときの動作、打者がトップに入った動作は一緒で、肘と肩と同じライン上になることが大切です」と理論を説明後、少年野球選手のティー打撃の様子を見ながら、動作の解説。最後は和田氏自身がティー打撃をしながら、現役時代の技術的こだわりを明かし、約6時間に渡る指導者講習会は充実の内容で終わっている。
なお、次回、第6回となる侍ジャパン「野球指導者スキルアップ講習会」は、2016年2月6日(土)に徳島県阿南市にある「阿南市屋内多目的施設(あななんアリーナ)」にて開催される。