「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(カナダ・サンダーベイ)に出場した侍ジャパンU-18代表は9月11日早朝の便でサンダーベイ空港を発ち、トロント空港を経由して、12日夕方に羽田空港に到着した。
小枝守監督と清宮幸太郎主将(早実)が羽田空港内で取材に応じ、戦いを振り返った。
「解団式では八田(英二)会長(日本高野連会長、高校日本代表チーム団長)のほうからは『夢を与える素晴らしい機会。今回はこういう結果だったが短期間でのチーム作りで皆の気持ちが一つになった』との話がありました。彼らは16万の仲間たちの代表として、責任と自覚、自負を持って戦った。各人が実績を持って(大会に)臨んだ。実績イコール評価になるので、人としてもしっかり歩んでいかないといけないと、私からは話をさせてもらいました」(小枝監督)
「高校1年のときも侍ジャパンに入れさせていただいて、2年前と今回ではチームとの関わり方が違い、チームの見方も変わった。人間的な成長にもつながった。これから野球を続けるからには、トップチームにも入りたい。(今後の進路は)プロとかも決めていないので、大学なのか?どういう形でユニフォームを着るか分かりませんが、2回とも逃した世界一を取り返していきたい。(2020年の東京五輪)東京でやるからには目指したい。今のままでは力不足なので、練習を重ねて力をつけていきたい」(清宮主将)
日本はオープニングラウンド(グループB)を4勝1敗の2位で通過。グループAの上位3チームと対戦するスーパーラウンドは4位で、決勝進出を逃したものの、カナダとの3位決定戦を制し、銅メダルを獲得した。アメリカは大会4連覇、そして韓国が銀メダル。日本は上位2チームとの対戦で実力の差を痛感した。悲願の世界一を目指した日本と世界との「差」について小枝監督はこう分析する。
「負け惜しみはしたくないが、体格差は否めない。特にアメリカは日本流の小技、緻密な野球をしてきた。特に走塁に力を入れていた。『大きい野球』に加え『小さい野球もできるぞ!』という姿が垣間見えた。(オープニングランドのアメリカ戦では)27アウトのうち23奪三振でも勝てない。この競技の難しいところでもあり、面白いところでもある。国内の甲子園でも犠打が減っていますが、世界的に見てもその傾向が出ています。ただ、日本の野球としては、送るべきところで送る。そのスタイルは変えてほしくないと思います」
具体的な敗因はどこにあったのか。
「金属から木製バットへ移行する中で期間が短すぎる。トップクラスのチームは対応が早い。韓国は高校時代を木製で過ごしている。今年は(攻撃の)軸をしっかり作った。ところが数字が上がったかと言えば、そうでもない。打撃は10分の3、3分の1で上出来と言われる中で、難しいものと感じた」
安田尚憲(履正社、65本のうち木製3本)、清宮(109本のうち木製バットで2本)、中村奨成(広陵、44本)による「高校通算218発トリオ」が期待された。これはあくまで金属バットでの結果。清宮は今大会で2本を積み上げ、高校歴代最多とされる111号に更新したが、総合的にみれば、木製バットでは思い描いたとおりの打撃をさせてもらえなかった。 小枝監督は技術論にも踏み込む。
「金属バットで長打やタイムリーが出ても、特有の『交通事故』に気づかないものなんです。インサイドからしなりを持っていかないと、外国人投手の特長である『動くボール』には対応できない。基本に立ち返っていかないと難しい。外国人打者はスイングが強い。下半身がしっかりしているから、スイングが崩れない。日本の選手もマネすべきだと思う」
毎年、夏の甲子園大会終了直後にメンバーを編成して、国際試合へ向けた準備を急ピッチで進める中で「対応力」は毎年の課題だ。
「学校の方針により、木製バットを使わない学校もある。あくまで甲子園大会を基準。その辺の感覚では、難しいところではあります。(部員数が)16万人以上の裾野ですから、(木製バット)の原資の問題もあり、(大会で導入するのは)難しい。できる限りの中で各校さんでも練習での対応、正しい使い方を、工夫して練習の中でも取り入れてほしいです。進路の部分では大学、社会人、プロへ進むにしても金属とは縁がなくなるわけですからね」
一方、投手陣についてはこう総括した。
「一生懸命投げてくれたと思います。真っすぐに滅法強い各国を相手には、どうしても変化球の精度が必要になる。今大会は多投せざるを得なかった。技術がついている投手は満足できたとは思うが、結果的に四球が多くなった。3位決定戦で三浦銀二(福岡大大濠)が(お手本のような)制球力抜群の投球を見せてくれた。これからの投手の課題になる」
日程面では今夏の甲子園で初優勝を遂げた花咲徳栄・清水達也、同準優勝の広陵・中村は決勝(8月23日)2日後に合流。2日間の調整を経て28日に出発するという超ハードスケジュール。決勝進出校から選ばれた選手は毎年、この状況下に置かれるケースが多い。
「何でもないように見えるかもしれませんが、心的疲労はジワッとくるもの。そのあたりは考慮してあげたい」。
さらに、現地入り後は日本と13時間ある時差対策が問題となった。
「難しいですね。私の隣の部屋では2日間、夜にざわついていた。(日本とは)感覚がずれていたようで、睡眠不足もあった」
小枝監督自身も10日間で9試合という過密日程の中で起用法、選手の過ごし方等に最大限の気を使っていた。決勝進出を逃した3位決定戦の前夜「ようやく、4時間眠れました……」と、相当な重圧と戦っていたのだ。
高校日本代表チームの選手選考を担当する日本高野連の「技術・振興委員会」の副委員長でもある小枝監督は優勝した昨年のアジア選手権(台湾)からの反省を踏まえ、今大会で出た問題点を提言する意向だ。今年の「第一次選考」は3月のセンバツ大会後の発表から、全国から幅広く選手を発掘するために、春季大会後の6月の発表に変更。「すぐにできる、できないは別にして『こういうことを感じた。どう取り組んでいくべきか?』という話をさせていただきたい」。着手できる部分から、一つひとつ課題をクリアしていく。
第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2017年9月1日~9月11日
オープニングラウンド
9月1日(金)22:30 メキシコ 1 - 10 日本
9月3日(日)5:00 日本 0 - 4 アメリカ
9月4日(月)6:00 日本 7 - 2 キューバ
9月5日(火)3:00 オランダ 1 - 3 日本
9月5日(火)22:30 日本 12 - 0 南アフリカ
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
スーパーラウンド
9月7日(木)22:30 日本 4 - 3 オーストラリア
9月9日(土)6:00 日本 4 - 6 カナダ
9月10日(日)2:00 韓国 6 - 4 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
3位決定戦
9月11日(月)1:00 カナダ 1 - 8 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
開催地
カナダ サンダー・ベイ
参加国
グループA
カナダ、韓国、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリア、イタリア、ニカラグア
グループB
日本、アメリカ、キューバ、メキシコ、オランダ、南アフリカ