侍ジャパン社会人代表は、予選ラウンド第2戦も投打にパキスタンを圧倒。13対1の7回コールド勝ちでグループBの1位が確定し、スーパーラウンドへの進出を一番乗りで決めた。
先発マウンドに送り出されたのは、今夏の都市対抗で史上5人目となるノーヒットノーランを達成した阿部良亮(日本通運)。低目へのコントロールが生命線の右腕は、日本通運でもバッテリーを組む木南了のリードでテンポよく投げ、序盤は味方の守りがやや乱れたものの3回までを無失点で切り抜ける。
一方、好調の打線は初回から機能する。1回表一死から敵失をきっかけに二、三塁にすると、四番・笹川晃平(東京ガス)の中犠飛で先制。さらに、菅野剛士(日立製作所)の左中間を破る三塁打、大城卓三(NTT西日本)の右前安打で3点を挙げる。2回裏には2四球の無死一、二塁から、リードオフを任された神里和毅(日本生命)の二塁打で2点を追加。続く3回裏にも3本の長短打で2点を奪うと、4回裏は二死一塁から2連打で8点目をもぎ取り、さらに木南が豪快な3ラン本塁打をレフトスタンドに打ち込んだ。このように、13点中8点が二死からという粘り強さが光った。
対するパキスタンも、2003年から続けてアジア選手権に出場しており、新勢力としてメキメキと力をつけている。初出場だった昨年のワールド・ベースボール・クラシック予選から指揮を執るアメリカ人のジョン・ゴールディング監督は、アリゾナ州大でメジャー・リーグ通算最多の762本塁打をマークしたバリー・ボンズを育てるなど、アマチュア球界で40年以上の指導歴を誇る。
「チーム力を高めるには攻撃を重視しがちだが、まずディフェンスを固めることで安定した試合運びができるようになる」というように、投手を中心にディフェンスを強化している成果が少しずつ形になってきているという印象だ。5回裏の先頭打者が、打球が太陽と重なる幸運な二塁打で出塁すると、大きな中飛で一死三塁とし、セカンドゴロの間に1点を挙げる。日本から奪った“歴史的1点”をベンチの選手たちも大声で喜んでいたが、こうした経験が次のステップへのモチベーションになるのだろう。
また、この場面を日本側から見れば、12対0と大量リードした一死三塁だから、内野陣は定位置に守り、セカンドゴロで1点を与えてもアウトカウントを増やしたのはセオリーである。ただ、侍ジャパン社会人代表に最年少の19歳で選出され、4回から二番手で初登板した鈴木健矢(JX-ENEOS)が投げていただけに、不運な安打から迎えたピンチに局面を度外視し、内野陣は前進して1点もやらない緊張感ある守りを体験してもよかったかと思う。
いずれにしても、2試合で野手は16名全員がグラウンドに立ち、6日にはスーパーラウンド第1戦を迎える。対戦相手は、チャイニーズ・タイペイにタイブレークの延長10回で2対3と敗れた韓国が濃厚だ。ゲームのレベルが一気に跳ね上がるのに対応するため、4日の練習では中国の出場辞退で登板がなくなった投手たちがシート打撃で投げるという。その内容を踏まえ、どんなスターティング・メンバーで次戦に臨むのか。そして、もう1敗もできないという気迫を出すであろう韓国に対して、どういう戦いを見せてくれるのか楽しみにしたい。