7月28日、東京オリンピックの野球競技が開幕。野球日本代表は、福島県営あづま球場でオープニングラウンド初戦をドミニカ共和国と戦い、苦しみながらも最終回に逆転し4対3のサヨナラ勝ちを収めた。
2008年の北京大会以来13年ぶりとなったオリンピックの初戦はドミニカ共和国に苦戦を強いられた。
先発を任された山本由伸(オリックス)は初回、20歳の有望株である2番のロドリゲスに安打を許し、MLBで2度の本塁打王経験があるバティスタに死球を与えたが、続く4番の元巨人・フランシスコを併殺に打ち取り無失点に凌いだ。
山本はその後、「立ち上がりは緊張しましたが、途中から落ち着いて投げられました」と振り返ったように2回以降は危なげない投球を見せて、6回には三者連続三振を奪うなど6回2安打無失点9奪三振。開幕投手の重責を見事に果たした。
しかし、打線は巨人で活躍するメルセデスを前に、初回の吉田正尚(オリックス)以降は安打が出ず得点を奪えない。すると7回表、この回からマウンドに上がった青柳晃洋(阪神)が2本の安打でピンチを招くと8番のバレリオに左中間を破る二塁打を打たれて、2点の先制を許した。
それでもその後のピンチは平良海馬(西武)が抑え、直後の7回裏には浅村栄斗(楽天)柳田悠岐(ソフトバンク)の連打でチャンスを作りメルセデスをマウンドから下ろすと、代わったカスティジョから村上宗隆(ヤクルト)がファーストゴロを打ってその間に1点を返した。
8回は山﨑康晃(DeNA)が無失点に抑えると、9回からは栗林良吏(広島)が登板。だが、二塁打と四球でピンチを招くと、9番・ヌニェスに3点目となるタイムリーを打たれ、リードを2点に広げられた。
終盤に追加点を奪われた日本だが、これまでの国際大会で何度も逆転劇を演じてきた粘りは、オリンピックでも健在だった。
9回裏、柳田が内野安打で出塁し、代打・近藤健介(日本ハム)と村上の連打で1点差に迫ると、9番・甲斐拓也(ソフトバンク)がセーフティースクイズを敢行し、代走・源田壮亮(西武)が生還し同点。さらに山田哲人(ヤクルト)が安打で繋ぎ満塁とすると、最後は坂本勇人(巨人)が「みんなが繋いでくれたので、なんとか三塁走者を還そうと思いました」とセンターオーバーの安打を放ち、4対3のサヨナラ勝ちを決めた。
稲葉篤紀監督は試合後、「ベンチ入りメンバーが通常の大会(28人)より少ない24人で戦うのは初めてでしたので、終盤の選手起用の難しさを感じました」とオリンピックならではの難しさを語った。それでも2点を追う9回は代打と代走、スクイズと出した策に選手たちが次々と応え、高いチーム力を示すことができた。
この後、日本代表は神奈川県横浜市に移動。31日12時から横浜スタジアムでオープニングラウンド第2戦のメキシコ戦に臨む。
監督・選手コメント
稲葉篤紀監督
「初戦という非常に難しい中で先発の(山本)由伸がしっかり抑えてくれました。先に点を取られて苦しい展開になりましたが、後ろに繋ごうという気持ちや最後まで諦めないという気持ちがみんなで1つになって、サヨナラ勝ちという良い形になりました。福島の皆さんにも何か感じてもらえたのではないでしょうか。ボランティアの方々を含め皆さんが我々を応援してくれて、ここまで支えてくれたことに感謝します」
山本由伸(オリックス)
「ドミニカ共和国の打者はパワーがすごいので、ホームランだけには気を付けて甲斐さんを信じて投げました。初戦ということもありバタつく場面はあったのですが、なんとか先制点は与えないようにと丁寧な投球ができました。それが勝利に繋がって良かったです。オリンピックの先発投手は、プレミア12での中継ぎの経験とはまた違った役割として、良い経験ができました」
坂本勇人(巨人)
「初戦を勝つことができてホッとしています。序盤は重い雰囲気で試合が進んでいましたが、ベンチではみんな声を出してくれていましたし、最後も最高の形でみんなが繋いでくれました。投手がずっと頑張ってくれていたので、野手のみんなが何とか返してあげたいという気持ちが必ずあったと思います。本当にみんなでもぎ取った勝利でした」