12月5日、第30回 ハーレムベースボールウィーク(2022年7月にオランダで開幕予定)に出場する野球日本代表「侍ジャパン」大学代表候補選手の強化合宿3日目が愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで行われた。最終日となったこの日は午前中に6イニングの紅白戦が行われた。
前日に続きこの日の紅白戦でも目立ったのは、矢澤宏太(日本体育大)と蛭間拓哉(早稲田大)の両3年生だ。
前日は外野手として出場していた矢澤だが、この日は先発投手としてマウンドに上がった。すると立ち上がりから快調に飛ばした。この日最速147キロのストレートと縦横2種類のスライダー、チェンジアップで初回から三者連続三振を奪う。続く2回は打たせて取る投球で三者凡退に抑え、1人の走者も許さない投球を見せた。これには大久保哲也監督も「(野手としてだけでなく)やはり投手としても良いですね。ストレートが強いですし、キレのあるスライダーを投げていました」と目を細めた。
投手陣、野手陣問わず複数の選手から、矢澤の考えや姿勢から刺激を受けたという声が聞かれており、投打でこの代表を背負っていく可能性すらありそうだ。
同じく先発した坂口翔颯(國學院大)も驚きをもって、矢澤とのキャッチボールを振り返った。
「矢澤さんのボールは伸びがすごいし、コースもブレませんでした。すごいの一言でした」
そんな坂口もまた「良い打者ばかりとの対戦だったので楽しく投げられました」と、投手で唯一の1年生らしからぬ堂々とした投球で、打者6人をパーフェクトに抑えた。
打者では蛭間拓哉(早稲田大)の存在がこの日も際立った。初日の50メートル走(光電管計測)では全体4位の5秒93という好タイムでスラッガーらしからぬ俊足をアピールすると、2日目は紅白戦で澤井廉(中京大)と並ぶ最多タイの3安打を放った。
最終日のこの日は逆方向のレフト前へ打球を運び、盗塁も記録。シートノックでは強肩も見せており、まさに走攻守で持ち味を発揮した。
また、澤井もこの日は無安打だったが痛烈な当たりのセンターライナーを放つなど力強い打撃を見せ、冷静に四球を選ぶ場面もあった。様々な選手と話す中で、特に蛭間との会話で「打席での呼吸の仕方や待ち方を聞いて、とても参考になりました」と刺激を受けたようだ。 大久保監督は2人をパワーだけでなく「バットコントロールも良い」と高く評価しており、2人のさらなる成長は大学代表としても大きな力になるかもしれない。
その他の打者もバットが振れており、この2日間の紅白戦で全野手が安打を放った。大久保監督は「野手に関してはかなり力があるなと感じました」と振り返った。
一方で投手陣には「(国際大会で効果的な)縦の変化球を操れる投手が少なかったかなと思います」と課題を挙げた。
天候にも恵まれ、全日程で予定とおり消化できたことに加え「誰も怪我することなくできたことが一番ですね」と話した大久保監督。
来年の大学代表はこのメンバー以外からも選ばれるが、参加者たちの貴重な経験を生かしたさらなる成長が期待される。
選手コメント
矢澤宏太(日本体育大)
「今日は三振を狙った中で三振を奪え、内容ある投球ができて通用したことは自信になります。二刀流が持ち味なのでアピールできました。坂口投手とのキャッチボールも伸びと角度を感じてすごく楽しかったです。代表には絶対に入りたいです」
坂口翔颯(國學院大)
「自分の良さを出した中で走者を出さずに抑えられたことは自信になりました。矢澤さんとキャッチボールして、自分もこういう球を投げられるようになりたいと思いました。高校時代からストレートで圧倒できる投手を目指しているので、球の強さを求めていきたいです」
金村尚真(富士大)
「レベルの高い選手たちとプレーして実力がまだまだと痛感しました。矢澤投手はすごく知識を持っているので、フォームや投球の考え方を教えてもらいました。(前日の紅白戦は打者6人をパーフェクトに抑える)ストレートで押していく投球ができて良かったです。(大久保監督からストレートの伸びとキレを評価され)セールスポイントを評価してもらえたことを嬉しく思います」
佐々木泰(青山学院大)
「(1安打のみに終わり)レベルの高い投手からはなかなか甘い球は来ないので、そういう球を一球で仕留める力が必要だと思いました。蛭間さんは体や骨格のことも勉強していたので、僕も探究心高く取り組んでいこうと思います」
澤井廉(中京大)
「すごい選手ばかりとプレーできた経験をチームに持ち帰れればと思います。長所の長打力ある打撃を、力入らずに見せられればと合宿に来ました。ホームランを打ちたかったので、技術もまだまだです。代表にまた呼んでもらえるように力をつけていきたいです」