8月1日、「第31回 BFA アジア選手権」(9月22日から28日まで中国・平潭)に出場する侍ジャパン社会人代表の選考合宿4日目が、昨日に引き続き愛知県の岡崎レッドダイヤモンドスタジアムで行われた。この日は10時から三菱自動車岡崎との練習試合を実施した。







選考合宿最終日となるこの日は、代表入りをかけた選手たちが一球一打に集中し、実力をぶつけ合う緊張感に満ちていた。川口朋保監督も「24人に絞り込むのは苦しいです」と語ったように、レベルの高い争いが繰り広げられた。
先発のマウンドに上がったのは佐藤廉(ヤマハ)。四球と二塁打で1死二、三塁のピンチを招くと、内野ゴロの間に1点を先制された。
しかしその裏、打線はすかさず反撃に出る。長野勇斗(Honda鈴鹿)と網谷圭将(ヤマハ)が安打でつなぎ、2死ながら一、三塁と好機を演出。続く佐藤勇基(トヨタ自動車)がライトへ鮮やかに運び、すぐさま同点に追いついた。その後も安打は出るものの、あと一本が出ず、試合は膠着状態に。だが、投手陣が粘りの投球で流れを引き渡さなかった。
2番手の松田航瑠(日本製鉄室蘭シャークス)は、持ち味の変則投球で打者を翻弄し2回を1安打無失点。3番手・秋山翔(三菱自動車岡崎)もテンポの良い投球で2回を無安打無失点に抑え、流れを保った。4番手・鈴木大貴(TDK)は走者を背負いながらも要所を締め、無失点で切り抜けた。
なんとか勝ち越したい打線は7回、中川拓紀(Honda鈴鹿)の二塁打で2死二、三塁のチャンスを作ると、西村進之介(ヤマハ)が前日に続くタイムリーを放って2点を勝ち越し。さらに、それまで無安打だった古川智也(三菱自動車岡崎)が、「打った瞬間、いったと思いました」と語る完璧な当たりで2ラン本塁打を放ち、リードを4点に広げた。
最終回のマウンドを任されたのは、岩本龍之介(JFE西日本)。先頭打者に死球を与えたものの、そこからギアを上げて三者連続三振。力強い投球で試合を締めくくった。







この日も前日に続きふた桁安打を放ったが、得点に結びつかない場面が目立った。川口監督は「うまくいく時ばかりではないので、こういう時もあります」と振り返りつつ、「こういう試合は、これからチームを作り試合をしていく中で必ず出てきます。今日経験できて良かったです」と、すでに前を見据えていた。
さらに、最後のミーティングでは「社会人というカテゴリーは、日本特有の文化です。我々にはこの文化を残していく責任があります。選手の皆さんも、社会人野球を次の世代へつないでいくという意識を持って、選手生活を送ってほしい」と語り、社会人野球の価値を高めることへの責任を訴えた。この言葉を、合宿中も幾度となく口にしていた川口監督。その想いを体現するように、参加選手たちは全力で野球に向き合い、ひたむきに白球を追い続けた。ただ勝つためだけではなく、社会人野球の素晴らしさを伝え、次の世代へとつなげていくために。「選ばれし者」ではなく、「つないでいく者」として。この合宿で得た覚悟と進化は、きっとそれぞれのチーム、そして社会人野球全体へと広がっていくことだろう。
監督・選手コメント
川口朋保監督
「3試合目で疲れていたと思うのですが、力を発揮したい、アピールしたいという気持ちが全員から伝わってきて、とても悩みます。社会人野球のレベルの高さを肌で感じましたし、うまく選考して、その力を発揮させないといけないなと逆にプレッシャーになりました。(選考合宿に来た選手たちに向けては)侍ジャパンの選手になるか、候補選手で終わるかは選手にとっては、すごく大きいことだと思います。でも、この選考合宿の場所にいることを本当に誇りに思って欲しいです。次の目標設定をどういうふうに設定するかでおそらくその人の人生は変わってくると思うので、選ばれなかったとしてもリセットして目標設定して欲しいです」
松田航瑠(日本製鉄室蘭シャークス)
「ストライク先行でいけたところと投球テンポは良かったのですが、フォアボールを出してしまったことが反省点です。(4日間の合宿については)嘉陽宗一郎さん(トヨタ自動車)や増居翔太さん(トヨタ自動車)にお会いするのが初めてだったので、キャッチボールやどんなアップをしているのか見て勉強できました。みんな球速も速いピッチャーが多いのですが、そこも求めつつ、変則という自分にしかない部分を伸ばしていきたいと思います」
秋山翔(三菱自動車岡崎)
「持ち味のテンポ良く、ゾーンで勝負する投球ができたので良かったです。(選考合宿については)いろいろな選手とコミュニケーションをとって、いろいろな考えを聞けたので楽しかったです。ゾーンで勝負できることは僕のアピールポイントだと思うので、これからもそうした攻めていくピッチングをしていきたいです」
中川拓紀(Honda鈴鹿)
「ストレートに対してはファウルになっているので、そんなに状態的には良くない感じだったのですが、今日はヒットが2本出たので良かったです。(選考合宿を終えて)今まで一緒に代表でプレーしてきたメンバーだけでなく、それ以外に新しく関わるようなメンバーとも野球の技術面でいろいろ情報交換できたのが良かったです。やっぱりバッティングがまだまだ力強さが足りないので、フィジカルや技術を鍛えていきたいです」
古川智也(三菱自動車岡崎)
「相手が自分のチームということはあまり考えないようにして、自分にできることを100%やろうと思いながら入りました。昨日までこの合宿で1本も打てていなかったので、なんとか1本出したい気持ちがホームランという最高の形になったので嬉しかったです。(4日間の合宿については)本当にレベルの高い選手がたくさんいて、僕とは違うタイプの人もいたので、いろいろ話を聞けて自分にとって大きな収穫になった期間でした。また、自分自身足りないことにも気づけましたし、やらないといけないことはたくさんあるので、一個ずつ課題を潰していきたいです」