侍ジャパントップチームの栗山英樹監督の初陣となる強化試合「侍ジャパンシリーズ 2022」(東京ドームで11月5日に北海道日本ハムファイターズ、6日に読売ジャイアンツ、札幌ドームで11月9・10日にオーストラリアと対戦する)。
10月4日に発表された出場選手は28人中15人がトップチーム初選出というフレッシュな顔ぶれとなったが、今回はそのうちの1人である戸郷翔征(巨人)に独占インタビューを実施。急成長の要因やターニングポイント、侍ジャパンへの思いなどを聞いた。
大きかったファンの後押し
――飛躍のシーズンとなりましたが、今季を振り返ってみていかがでしょうか?
「今季は終わるのが早かったなと思います。プロに入ってからずっとCS(クライマックスシリーズ)を戦っていたのですが初めてBクラスにチームが低迷してしまいましたし、悔しいシーズンとなりました」
――長いシーズンを乗り切れたという面ではいかがでしょうか?
「1年間怪我せずに戦えたというのは良かったかなと思います」
――今年から収容人員も100%に戻りましたが、ファンの後押しも大きかったでしょうか?
「本当にたくさんの拍手や声援をいただきましたし、プロ1年目(2019年)以来の満員になった東京ドームだったので、試合をしている喜びとファンの方の熱い後押しを再び感じることができました」
――今こうしてユニホームを着てみての率直な気持ちはいかがでしょうか?
「初めてジャイアンツのユニホームを着た時もそうでしたが、ずっとテレビで観てきたユニホームなので喜びを噛み締めています」
意識を変えた一戦
――侍ジャパンの試合で印象に残っている試合はございますか?
「やっぱり一番は去年の東京オリンピックの金メダルですね。特に最後の金メダルが決まったシーンは何度も観て、この輪に加わりたいと思ってシーズンを過ごしていました」
――侍ジャパンを意識したのはいつ頃ですか?
「もちろん小さい頃から日本代表に憧れていましたが、高校3年生の時に宮崎県選抜の一員として侍ジャパンU-18代表と対戦したあたりから特に意識するようになりました。選ばれなかった悔しさがあり、プロに入ったら必ず選ばれてやろうという気持ちになりました」
――その試合で戸郷投手は好投(5回1/3を投げて9奪三振、最速149キロを計測)をしてより注目度が高まりましたが、あの試合はどんな気持ちで臨んだのでしょうか?
「甲子園にも行けず悔しい思いをしていたので、宮崎県選抜の選手たちと一致団結して“この1試合に懸けるぞ”という感じでした。そうしたこともあって、高校野球生活を締めくくるにふさわしい投球ができました」
――「強い相手こそ燃える」というのは今も昔もありますか?
「代表戦もそうですが強い相手こそ、勝つか負けるかどっちかなので、そういう覚悟を持ってやっています」
――その試合から4年で、今度は侍ジャパンのユニホームを着る側の立場になったことになりました。当時はそうした想像はしていましたか?
「“いつかは”という気持ちでは取り組んでいましたが、まったく想像できませんでした。今回このようなチャンスをいただいたので必ずモノにしたいです」
急成長の要因は
――プロ入りからの4年間でここまで来られた要因はどのように考えますか?
「いろんな経験をしましたが、今年桑田さん(巨人・桑田真澄1軍投手チーフコーチ)と取り組んだ“ピンチで粘る投球”をできたことで初めての二桁勝利を挙げることができました」
――「ピンチで粘る投球」はどのようにして実現したのですか?
「ピンチでは息が上がって、肩に力が入って“球速を出そう”と思ったり、フォークをより良い落ちで投げようとしてしまったりしがちです。でも、そういう思考をやめて心からリラックスしてキャッチャーミットだけを目がけるようにして、粘られても粘り返す気持ちで今シーズンはできました」
――国際大会では日頃の積み重ねを出したいという思いでしょうか?
「国際試合は一発勝負なのでCSと同じような戦いになります。チームを背負うことから日本を背負うことになるので、さらに気持ちを強く持つためにしっかりと調整していきたいです」
――所属している巨人(11月6日)を相手に投げる可能性もあります。
「初めてのことなので、どんな気持ちになるかは分かりません。楽しみつつ結果を求めてやっていきたいです」
――侍ジャパンで話をしてみたい選手や得たいことはありますか?
「オールスターなどで会話をしている選手もたくさんいますが、パ・リーグの選手は話す機会が無いので、いろんなコミュニケーションを取って、体のケアの仕方やリフレッシュの仕方などいろいろ学びたいですね。僕も知っている知識は共有していきたいです」
脳裏に強く刻まれているWBCの記憶
――オーストラリア代表のイメージはございますか?
「あまりイメージは湧きませんが初めて海外のチームと対戦するので楽しみですね。僕のピッチングがどのように見えるのかなど、いろんな発見があるのかなと思います」
――外国人選手と対戦する際に気をつけていることはありますか?
「甘くなると一発打たれてしまう選手が多いので、そこを上手く交わしながら、ストレートで押していけるところは押していきながらやっていきたいです」
――侍ジャパン初選出ということで、ご家族の反応はいかがでしたか?
「家族には“おめでとう、自分の力を出し切りなさい”と言ってもらいました。だいぶ喜んでくれました。日本代表に選ばれたことは大変誇りに思いますし、宮崎は野球が盛んなので帰郷した時にはいろんな方に報告に行きたいです」
――侍ジャパンではどのような投球を見せていきたいでしょうか?
「持ち味である球威のあるストレートで押せるところは押して、結果を求められるチームなので、それをしっかり理解しながら投げたいです」
――栗山英樹監督の印象はいかがでしょうか?
「今回初めて会話をさせていただいてメチャクチャ優しいなというのが第一印象です。“シーズンが終わった1ヶ月後で大変なこともあるだろうけど、体に気を遣って調整してくれ”と言われて嬉しかったです」
――来年3月にはWBCも開催されますが、WBCの思い出はございますか?
「杉内俊哉さんがいた2009年の第2回大会ですね。原辰徳監督が指揮を執り一致団結した姿で連覇したことが強く思い出として残っているので、そういう歴史の中に僕も入れたらなと思っています」
――最後に目標とそのために鍵となることを教えてください
「野球人生の中のターニングポイントだと思うので、結果を残しつつ、いろんな人と会話をするなどして先も見据えていきたいです」