9月15日、「カーネクスト presents 第9回 WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」の第3戦が広島県の三次きんさいスタジアムで行われ、侍ジャパン女子代表はベネズエラに苦戦を強いられるも、なんとか追いつき最後はサヨナラ勝ち。3連勝でファイナルステージ(2024年にカナダで開催)進出に王手をかけた。
ワールドカップは前日まで32連勝中。初戦のプエルトリコ戦のように厳しい試合をいくつもくぐり抜けてきて積み重ねた数字であり、選手たちは重圧とも戦っている。
2回裏、直前の守備で送球による失策をしていた出口彩香(埼玉西武ライオンズ・レディース)がすぐに失敗を取り返すタイムリーで幸先良く先制した。しかし、3回表に先発の田中露朝(ZENKO BEAMS)は1死から崩れる。
「32連勝中というのは私の耳にも入ってきますし、緊張してしまうタイプなのですが、あの回は消極的になってしまいました」と振り返ったように、四死球で走者を出すとストライクを取りに行った球を痛打され、一挙に4点を失ってしまう。
それでも、その裏に川端友紀(九州ハニーズ)と楢岡美和(九州ハニーズ)の連打で1点を返し2対4とした。
そして4回と5回は田中露朝が立ち直る。中島梨紗監督が「信頼を置いている投手なので悪い形で降ろしたくなかった」と続投を決めると、「続投させてもらえたので、攻めていった結果抑えることができました」と意気に応える気迫の投球で無失点に抑えた。
すると、5回に先頭の田中美羽(読売ジャイアンツ)がセンター前安打で出塁し、三浦伊織(阪神タイガースWomen)が四球を選び続くと、川端の一塁強襲安打と楢岡のセーフティースクイズで同点に追いついた。
6回からは6大会連続の出場で3大会連続MVPを獲得中と突出した実績を誇る里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)が登板。経験豊富な里は「積極的な印象の打線だったので、気持ちで負けず、コントロールだけを気をつけました」と落ち着いた投球を見せ、出口の好守もあり、2イニングを1人の走者も出さずに抑えた。
するとその裏、先頭の三浦が内野安打で出塁し、三浦の盗塁や楢岡の申告敬遠、星川あかり(淡路BRAVE OCEANS)の安打で満塁のチャンスを作り、打席には途中出場の英菜々子(埼玉西武ライオンズ・レディース)。
この場面で英は、2球を見逃して追い込まれてしまったが、「カーブが多かったので狙っていました」と捕手らしい読みでカーブをセンター前に運び、殊勲のサヨナラ打。5対4で薄氷の勝利を掴み、選手たちは英のもとへ一目散。一方、田中露朝は「返してくれたみんなへの嬉しさと自分の情けなさで」と号泣。その後は「みんなに感謝です。次はリベンジしたいです」と前を向いた。
苦しい展開となったが、全員で勝利をまた1つ積み重ねた侍ジャパン女子代表。この結果により16日14時開始予定のチャイニーズ・タイペイ戦で勝てば、ファイナルステージ進出が決まることとなった。
監督・選手コメント
中島梨紗監督
「ホッとしています。今日の課題は相手投手のカーブを打てなかったことです。積極的に振っていかないといけません。里を信頼しているので、今大会は全試合準備して欲しいと伝えています。1日しか観に来られない人もいますし、女子野球を初めて観る人もいると思うので、これからも1試合1試合、女子野球を好きになってもらえるような試合をしていきます」
里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)
「“今大会は後半で起用する”と言われていたので厳しい場面は想定していました。登板まで気持ちを緩めすぎても入りすぎてもいけませんが、今日は噛み合ってホッとしています。打ち取るごとに大きな拍手をいただいていますし、全国から多くの方に来ていただいているので、精いっぱいのプレーを通して元気を与えることができればと思います」
英菜々子(埼玉西武ライオンズ・レディース)
「タイブレークは嫌だと思ったので、今までやってきたことを整理して打席に入りました。ホッとした気持ちが一番です。里さんには捕手の私の方が引っ張ってもらった気持ちです。こんな大勢の方の前で野球をするのは初めて。嬉しいですし、楽しみたいという気持ちです」