11月19日、東京ドームで「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」の決勝戦が行われた。侍ジャパンは韓国と対戦し、延長タイブレークの末に4対3と逆転サヨナラ勝ちを収め、2017年の第1回大会に続く大会連覇を果たした。
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4回まで両チーム通じて三者凡退が一度も無い激しい試合展開の中で、先制したのは韓国だ。3回表、四球と一塁手・牧秀悟(DeNA)のバント処理時の失策でチャンスを作ると、4番のノ・シファンが侍ジャパン先発・今井達也(西武)の甘く入ったスライダーを見逃さず。打球はショート頭上を超え左中間に転がり二者が生還した。
2点のビハインドを背負った侍ジャパンだが、5回からマウンドに上がった根本悠楓(日本ハム)が流れを変える。この試合初めてとなる三者凡退で抑えると、その裏に牧が「自分のミスからの失点でしたので、1 点ずつですけど点が取れて良かったです」と振り返るソロ本塁打。150キロ台のストレートとカーブやスライダーなどの変化球を織り交ぜるクァク・ビンから、ようやく1点を返した。
さらに根本が6回も三者凡退に抑えると、その裏に韓国2番手の左腕チェ・スンヨンからチャンスを作る。万波中正(日本ハム)の一塁線を痛烈に破る二塁打と、門脇誠(巨人)の犠打で1死三塁とすると、佐藤輝明(阪神)が2ストライクと追い込まれるも、変化球に泳がされながらも上手くセンターへフライを上げ、万波がタッチアップで生還し同点に追いついた。
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7回は根本、8回は桐敷拓馬(阪神)、9回は田口麗斗(ヤクルト)が無失点で抑えるが、韓国救援陣も踏ん張り、試合は無死一、二塁から継続打順で再開するタイブレーク方式の延長戦に持ち込まれた。
10回表、吉村貢司郎(ヤクルト)は犠打を試みたキム・ドヨンをファウルと見逃しで2ストライクと追い込むと、139キロのフォークでショートゴロを打たせ併殺打に。これで2死三塁とするが、続くユン・ドンヒには追い込んでからの139キロのフォークをセンター前に運ばれ勝ち越し点を許した。続くノ・シファンにもライト前安打を打たれ、さらなる追加点のピンチを招くが、ここはキム・フィジプを150キロのストレートで見逃し三振に抑え、1失点のみにとどめた。
その裏、代打・古賀悠斗(西武)が1球で犠打を決めると、牧が申告四球で歩かされた後、坂倉将吾(広島)がセンターへ深い犠飛を放ち同点。さらに万波が申告四球で歩かされた後、この日3打数無安打だった門脇が三遊間を抜くタイムリーを放ってサヨナラ勝ち。劇的な逆転勝利で優勝を決めて選手・スタッフは喜びを爆発させた。
その後、井端監督、門脇、牧が胴上げで宙を舞い、41,883人の大観衆から割れんばかりの拍手が送られた。
接戦が多かった中で、投打それぞれに日替わりヒーローが生まれ、結果的には全勝優勝を果たした。「選手の発掘・育成と勝利の両立」という難題を見事にクリアし、WBC優勝から始まった侍ジャパントップチームの1年を最高の形で締めくくった。
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監督・選手コメント
井端弘和監督
「根本が3イニングを抑えてくれて流れを持って来ることができました。(得点について)バントを一発で決めて得点に繋げることができました。特に古賀選手はタイブレークの緊張感の中で決めてくれて感謝しています。打撃練習の時からタイブレークになったらバントを頼むことは伝えていました。牧選手はミスをしても変わらないのが彼の良さですね。(サヨナラの場面前に声かけ)今日の門脇選手は気負っているなと思っていたので、声をかけました。それをすぐできる門脇選手が、さすがの一言です。(今後に向けて)国際試合を経験し成長した選手たちが1人でも多く、また侍ジャパンのユニホームを着てくれたらと思います。欲を言えば半分以上入って来て欲しいです」
門脇誠(巨人)※大会MVP
「(サヨナラ打は)前の打席で強引になっていたので井端監督から“いつも通り打席に入れ”と言われて初心に帰ることができました。なかなか打てていなかった中、勝利につながる一打を打てて良かったです。初めての日の丸を背負っての戦いで緊張しましたが、その中で自分の持ち味を発揮することができました。この期間もいろんな人に話を聞いて自分なりに解釈して、それを実行することができて勉強になりました」
根本悠楓(日本ハム)
「流れが悪かったので、流れを変えるピッチングをするという思いでマウンドに上がりました。(初のトップチーム選出)シーズン中とは全然違う雰囲気と緊張感だったので重みを感じました。ストレートは全体的に刺すことができましたし、コントロールや変化球も、全体的に良かったです」
牧秀悟(DeNA)
「若い選手がいきいきとしていてめちゃくちゃいい大会になりました。(選手たちの後押しで主将役に)言葉にするのは苦手なので日々の行動で示そうと思っていたのですが、みんなしっかりとしていたので、特にすることはありませんでした。(ファンに向けて)1年間、本当に熱い声援をありがとうございました。来年も熱い熱い戦いを繰り広げるので応援よろしくお願いします」