10月13日、香港で12日まで開催されていた「第2回 WBSC Baseball5 ワールドカップ2024」で準優勝した侍ジャパンBaseball5代表が帰国。決勝では前回大会と同様キューバに敗れ、悔しさをにじませながら若松健太監督(ジャンク5)や選手たちは今後の課題や確かな収穫を語った。
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男女混合5人制5イニング、3セット制の2セット先取で行われる今大会。21m×21mのフィールドが香港の高層ビル群の中に作られ、会場には多くの観客が訪れた。
侍ジャパンはオープニングラウンド5戦全勝、1位通過でスーパーラウンドに進んだ。その初戦は宿敵・キューバ。大会前に若松監督が「先制パンチを食らわせたい」と意気込んでいたように、見事に戦略がハマり第1セットを先取した。絶対的王者・キューバからセットを取ったのは大会史上初の快挙で、「歴史的な1セットになった」と若松監督は振り返る。その後は一段ギアを上げたキューバに敗れるも、要注意としていたベネズエラにフルセット勝ちを収めるなどして決勝へ駒を進め、キューバとの再戦に挑んだ。
迎えた決勝の第1セット。先攻の日本は女子選手3人・男子選手2人の布陣で臨んだ上で、目標としていた先制に成功する。しかしその裏、慣れない屋外でのナイターという状況で守備がもつれて7失点を喫する。さらにキューバの守備には穴がなく、侍ジャパンの追加点は遠く、初回の失点が響き1対16で第1セットを落とした。
第2セット、後がない日本だが、「キューバが今大会ずっと2セットで勝っていたので、戦略として男女比率を相手と変えて2セット目を確実に取ろうという考えでした」と六角彩子(5STARs)が明かすように、このセットを男子選手が多い布陣で臨んだ。初回の攻撃は得点できなかったが、その裏は辻東倫(S.T.J)の好守もあり無失点に抑えると、直後の2回表に試合を動かす。
先頭の辻が出塁すると、続く數田彩乃(5STARs)と三上駿(ジャンク5)が相手の固い守備を崩すライナー性の当たりを放ち無死満塁とチャンスを作る。ここで主将の島拓也(ジャンク5)が相手守備のわずかな間を通し日本が先制に成功する。さらに六角が相手の意表を突いて前へ転がし1点を追加。2対0と上々の滑り出しを見せた。
しかし「先制した後の守りで崩れる部分が多かった」と主将の島が語るように、2回裏、3回裏に相手の群を抜いた打球速度と柔軟なプレースタイルを前に失点を重ね、3回終了時点で2対7と点差を離されてしまう。
それでも4回表に2点をもぎ取り、3点差まで縮めると、5回表。逆転の可能性を全員が信じる中、2死一、三塁から數田が三遊間を抜けるタイムリーを放ち、1点を追加。2点差まで迫ったが最後はファーストライナーで幕を閉じた。
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
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若松監督や各選手は今後の課題として「スイングスピードを上げる練習に取り組むこと」「次世代の育成」「根本の意識改革」と、既に先を見据える。打倒キューバを掲げつつ「他国のレベルが着実に上がってきているため、もっと圧倒的に勝てるようにならないといけない」と口を揃えた。
課題の一方で収穫も多く、主将の島は「観てくれた皆が『やりたい!』と思えるようなプレーができたんじゃないかなと思います」と手応えを語る。SNSでも楽しんで競技に打ち込む姿を発信し続けていたこともあって、侍ジャパンが大会のソーシャルMVPを受賞した。
Baseball5は、自分の身一つでできるため道具がいらず、男女の垣根も超えてできる稀有なスポーツだ。競技の普及や競技人口の増加は選手自身も常に意識している。幅広い世代への認知度向上を目指すとともに、今後も世界一を目標に邁進し続けていく。
選手コメント
辻東倫(S.T.J)※大会ベスト5に選出
「選出は、素直に嬉しいです。今大会、キューバから1セットは取りましたけど、100回に1回取れるのが来たかなって感じで、それくらいの差を感じました。決勝ラウンドでは僕らもギアを上げていったつもりなんですけど、それをはるかに上回られた感覚です。これからは、練習というより、Baseball5に対する向き合い方や姿勢が変わらないと勝てないと思うので、代表等で今後集まる機会があったら、根本から変えていきたいです。Baseball5がさらに普及してくれれば嬉しいですし、普及できるように僕も活躍していきたいです」