7月29日から福島県いわき市で開催されていた「第3回 WBSC U-15ベースボールワールドカップ2016 inいわき」が8月7日に閉幕。決勝戦でキューバに敗れたものの、前回大会(2014年メキシコ開催)の7位を大きく上回る準優勝に躍進した侍ジャパンU-15代表の成長を振り返る。
日々強くなった結束力
「1度も会ったことのなかった人たちが出会ってチームとなり、みんなが持てる力をすべて出し切った。野球は人と人を繋ぐものだと実感しました。この最高の仲間と今度はU-18の侍ジャパンとして戦いたいです」
閉会式後、黒須大誠外野手(いわきボーイズ)は涙を浮かべながらも力強く言い切った。それは、このU-15侍ジャパン活動を通じて、選手たちが心身ともに大きな成長したことを象徴した言葉だった。
全国5カ所でのセレクションを経て、代表選手たちが初めて顔を合わせたのが7月2、3日に行われた強化合宿。その時はまだチームとは言えないような、どこか遠慮し合った空気が流れていた。だが7月24日から始まった事前合宿、そして大会期間中、選手たちの結束は日を追うごとに強くなった。負ければ決勝進出がなくなるスーパーラウンド最終戦のパナマ戦では、息詰まる試合をグラウンド・ベンチが一体となり勝利を掴み取り、決勝進出を決めた。
決勝戦では、前回優勝国のキューバ打線が火を噴き、試合前半に大量8点のリードを奪われたが、選手たちは誰1人諦めずに立ち向かい、終盤に4点を奪い返し、意地を見せた。
主将を務めた野口海音主将(松原ボーイズ)も涙を浮かべながら、「みんなでまとまってここまで来ることができた。目指してきた“守り勝つ”ということを多くの試合でできました。技術もそうですが、人として大きく成長できました」と振り返った。
技術面も「国際大会仕様」に対応
中学生年代では特に顕著な体格差が欧米勢とある中、代表選手たちは勇敢に戦い、持ち味を発揮した。
鹿取義隆監督の掲げた「守り勝つ野球」を遂行すべく、守備陣は二遊間を組む田口夢人内野手(栃木下野リトルシニア)と近藤大樹内野手(嘉麻ボーイズ)を中心に再三好守を見せた。投手陣は及川雅貴投手(匝瑳リトルシニア)や岡田幹人投手(京葉ボーイズ)を中心に低めにキレの良い球を投げ込んで試合を作り、最優秀投手に及川、最優秀守備選手に田口がそれぞれ選出された。
打撃では海外投手の速球対策として、「追い込まれたらノーステップで逆方向に打つこと」をチームで徹底し、追い込まれてからの安打も目立った。また、国内で使用するバットよりも反発係数の低いバットで稲生賢二外野手(東海ボーイズ)が今大会では唯一となるスタンドインでの本塁打を放つなど、見事に順応し力強い打球を飛ばす選手も多く存在し、技術面の進歩も目覚ましいものがあった。
2つの涙を生かし、球界発展の担い手に
試合後に悔し涙を流した選手たちは、閉会式や東京五輪に向けたセレモニーで笑顔になり、最後のミーティングで今度は「この仲間と戦うことができない寂しさでいっぱいです」(及川)と涙を流した。
鹿取監督が「感情をなかなか表に出せないことがU-15世代の特徴」と話していた選手たちが、わずかな時間の中で様々な表情を見せたことは、いかに本気で世界一を目指し、いかに出会って1ヶ月あまりの仲間たちと強い絆が結ばれていたのかを示すものだった。 そして、彼らが過ごした2つの涙を今後の人生に生かし、心技体を磨いていく姿勢を見せることが日本球界、そして世界球界への普及・強化へ繋がっていくことになる。そんな「球界発展の担い手」としての自覚が彼らをより選手として、1人の人間として大きくさせていくことを願いたい。
第3回WBSC U-15ベースボールワールドカップ2016 in いわき
大会期間
オープニングラウンド
7月29日(金) オーストラリア 0 - 13 日本
7月30日(土) 日本 4 - 0 キューバ
7月31日(日) 日本 15 - 4 韓国
8月 1日(月) チェコ 0 - 15 日本
8月 2日(火) 日本 10 - 6 コロンビア
スーパーラウンド
8月4日(木) 日本 8 - 0 ベネズエラ
8月5日(金) 日本 2 - 5 アメリカ
8月6日(土) 日本 2 - 1 パナマ
決勝
8月7日(日)14:30 日本 4 - 9 キューバ
会場
いわきグリーンスタジアム
南部スタジアム
平野球場
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