第2回 WBSC U-23ワールドカップ(コロンビア・バランキージャ)に出場した野球日本代表「侍ジャパン」U-23代表は10月28日、決勝でメキシコと対戦。延長10回タイブレークの末に1対2で惜敗し、2年前の前回大会(メキシコ)に続く連覇を逃している。大会MVPは安田が受賞した。
侍ジャパンU-23代表・先発メンバー
(中)島田海吏(阪神)
(遊)大河(DeNA)
(左)岸里亮佑(日本ハム)
(三)内田靖人(楽天)
(一)安田尚憲(ロッテ)
(指)原澤健人(SUBARU)
(捕)堀内謙伍(楽天)
(二)西巻賢二(楽天)
(右)周東佑京(ソフトバンク)
▼投手 近藤弘樹(楽天)
0対0のまま9回を終え、10回からはタイブレーク。10回表にメキシコが2点を挙げると、その裏、日本は犠打の後、二、三塁から内野ゴロの間に1点を返すも、反撃はそこまで。1点差を追いつくことはできなかった。マウンド付近ではメキシコのメンバーによる歓喜の輪が広がった。日本は先発・近藤が8回無失点に抑えるなど、投手陣が踏ん張ったが、打線が1安打と無念の準優勝。オープニングラウンド、スーパーラウンドを通じて、8戦全勝で決勝進出を決めたが、金メダルをかけた最後の一戦で国際大会の厳しさを味わった。
とはいえ「世界一」を決める頂上決戦にふさわしい、内容の濃い攻防だった。稲葉監督が掲げるのは「守り勝つ野球」。試合序盤、指揮官の言葉を体現したのが、韓国とのスーパーラウンド初戦で3つの捕殺を記録した周東だった。2回表、近藤は二死走者なしから六、七番打者に連打を許す。一、二塁として迎えるは、オープニングラウンドでソロ本塁打を浴びていた八番の左打者。一、二塁間を破られたが、右翼手・周東の強肩により、二塁走者の本塁生還を許さなかった。
5回まで双方無得点。オランダとのオープニングラウンド(22日)以来、今大会2度目の先発となった近藤は、粘りの投球を見せている。前回登板は7回3安打無失点、12奪三振の好投を見せてきたが、中5日で迎えた決勝のマウンドもストレートの伸び、変化球のキレとも申し分なく、パワーあるメキシコ打線を5回まで4安打と封じた。一方、打線はメキシコの先発右腕のチェンジアップ、ツーシーム系の変化球にタイミングを外され、5回までに振り逃げと敵失による出塁のみと、ノーヒットに抑え込まれていた。
6回表、近藤は二死から安打を許すも後続を抑えて無得点。その裏、日本は二死走者なしから大河が左前へチーム初安打を放った。続く岸里が遊ゴロに倒れるも、3巡目にしてようやく攻略への糸口をつかむ。0対0のまま、試合は終盤に入る。
7回表、先頭打者が中越えの二塁打。この試合、両チームを通じて初の長打が出た。無死二塁から後続2人を左飛、三ゴロとして、八番には申告敬遠。二死一、二塁と一打が出れば失点の可能性がある場面で、日本はマウンドに集まり、建山コーチが指示を出して意思統一。近藤は集中力を研ぎ澄まして、九番打者を遊ゴロでピンチを切り抜けている。
メキシコは8回表も先頭打者が中前打で出塁する。二番打者は2度、バントを試みるもファウル。ヒッティングに切り替えたものの、空振り三振で、次打者は左飛。左中間の当たりで、一塁走者はタッチアップを狙ったが、二塁タッチアウト。近藤は8回を投げ97球で降板し、救援陣に託している。このプレーで日本にゲームの流れが傾いたかと思われたが、その裏の攻撃は三者凡退に終わっている。
9回表から2番手のマウンドに上がったのは左腕・成田翔(ロッテ)。いきなり四球を与え、3イニング連続で先頭打者の出塁を許してしまう。だが、成田は慌てず後続3人を封じた。その裏、メキシコは被安打1の先発投手に代わり、2番手投手への継投策に出る。日本の攻撃は一番・島田からの好打順だったが、無得点で0対0のまま延長へと突入する。
10回からは無死一、二塁の継続打順によるタイブレーク。メキシコは犠打で二、三塁。ここで日本は前進守備を敷くが、次打者のたたきつけた打球は、遊撃手・大河の頭上を越える中前打となり、2点を先制される。なおも、左前打で一死一、三塁。続く二番を捕邪飛に抑えたところで3番手・水野匡貴(ヤマハ)が救援。1失点も許されないケースで、中飛に斬った。
2点を追う10回裏、日本は四番で主将・内田からの攻撃だ。稲葉監督としてはメキシコと同様に犠打を使うか、強攻策でいくかの二者択一となったが、前者を選択。内田は投前にきっちりバントを決めて二、三塁とし、安田の二ゴロで1点をかえす。二死三塁から原澤が四球を選んで、メキシコは左腕投手に交代。ここで、堀内は四球で二死満塁とする。メキシコも必死の継投で右腕の4番手がリリーフ。1本が出ればサヨナラというケースで、西巻が打席に立ったが、右飛に倒れた。結局、日本はメキシコ投手陣に1安打に抑え込まれ、あと1歩及ばず、大会連覇を逃した。
日本と14時間の時差があるコロンビアでの開催。しかも、大会10日間で9試合という超過密日程の中でも、U-23代表はたくましかった。オープニングラウンド第3戦(対メキシコ)で中山(東京ガス)が故障離脱。投手11人に対して野手13人(うち捕手3人)。二塁、三塁、遊撃をこなせるユーティリティープレーヤーを欠き、二遊間を守れる選手は二塁・西巻と遊撃・大河のみで、実質的な内野の交代要員が不在となってしまった。こうした限られたメンバーの中でも、心身ともにタフに戦い抜いた。野手の頑張りはもちろんだが、9試合で15失点に抑えた投手陣の奮闘を、見逃すことはできない。先発に配置された5投手がそれぞれの仕事に専念し、毎試合、ブルペンで準備した救援陣も持ち味を発揮。全9試合で先発マスクをかぶった堀内が、投手各々の良さを引き出すリードで、低めのボールに対しても何度も体で止め、バッテリー間で全幅の信頼関係を築いた。9試合で失策ゼロ。大会を通じて、稲葉監督がチーム方針として掲げていた「投手中心に、まずは守りから攻撃のリズムをしっかり作る」を貫いた。
昨年7月に就任した稲葉監督は今大会前に「若い選手たちと一緒に成長していきたい」と語っていたが、初となる海外での指揮は、日本で味わえない財産。2年後には東京五輪を控えているが、コーチ3人制のベンチワークなどは必ず、2020年に生きてくるはずだ。次世代を担う24人の選手たちも、地球の裏側で多くの〝手土産〟を日本へと持ち帰る。
稲葉篤紀監督コメント
「投手の近藤選手が良い粘りで頑張っていたが、メキシコの投手も良く、なかなか打つほうで、良いリズムをつかむことができなかった。タイブレークを経験していない中でやったが、ピッチャーも難しかった。この経験を次に生かしてほしい。選手は目一杯やってくれた。我々は1敗しかしていない。胸を張っていい。負けたのは私の全責任。全力を尽くしてくれた選手たちにはありがとう、と言いたい。今回は同世代ということで、(プロは)一軍でプレーしたり、二軍で頑張っている選手。日に日に結束力が増して、頼もしく思え、非常に良いチームだった。(首脳陣は)4人でやったが、一つ勝つ難しさを学び、私自身も良い経験ができたと思う」
第2回 WBSC U-23ワールドカップ
大会期間
2018年10月19日~10月28日
オープニングラウンド
10月20日(土)5:00 日本 13 - 0 南アフリカ
10月21日(日)0:00 チャイニーズ・タイペイ 1 - 3 日本
10月22日(月)0:00 日本 7 - 2 メキシコ
10月23日(火)0:00 日本 5 - 0 オランダ
10月24日(水)10:00 コロンビア 2 - 7 日本
※開始時刻は日本時間(コロンビア:時差-14時間)
スーパーラウンド
10月26日(金)0:00 日本 3 - 2 韓国
10月27日(土)5:00 日本 6 - 3 ベネズエラ
10月28日(日)0:00 日本 4 - 0 ドミニカ共和国
※開始時刻は日本時間(コロンビア:時差-14時間)
決勝
10月29日(月)9:00 日本 1 - 2 メキシコ
※開始時刻は日本時間(コロンビア:時差-14時間)
開催地
コロンビア(バランキージャ)
出場する国と地域
グループA
日本、メキシコ、チャイニーズ・タイペイ、オランダ、コロンビア、南アフリカ
グループB
韓国、オーストラリア、プエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国、チェコ