侍ジャパントップチーム稲葉篤紀監督の新春特別インタビュー最終回となった今回は、いよいよ今年7月・8月に迫った東京五輪への思いや構想などを聞いた。
――プレミア12 では大会を通じてずっと不調だった選手もおらず、東京五輪での選手選考に関して、嬉しい悩みが増えたように思えます。
「(ずっと不調だった選手がいない)それが一流選手ですよ。修正能力があるし、成績以上の貢献度があった選手もたくさんいましたから。プロ野球の一流選手というのはそういうところでしょうね。結果だけでなく、結果以外のところでもチームに貢献できる。そういうのはチームにとっても大きなことですよね」
――東京五輪に向けて選手たちに期待するのは、どのようなことでしょうか?
「今年の調子もありますし、当然シーズンに入れば怪我なども出てくるでしょうし、そういうところも含めて考えなければいけません。選手はシーズン(ペナントレース)をどう戦っていくのか?というところから入っていくものです。ただ、そこで少しでもいいので、侍ジャパンを意識してもらえればと思います。私も2008年の北京五輪の時にそうだったのですが、日本代表に入るというよりも、まずはシーズンをどう戦っていくのかということに重きを置いていました。そこから5月、6月になってきて、初めてオリンピックやジャパンというものを意識し始めたので、選手はそれでいいと思います」
――昨年行いました対戦国の視察やプレミア12では、どのようなことを感じられましたか?
「やはり視察してよかったと思います。映像だけと、自分の目で見るというのは全然違うと思っています。各国を周り、五輪予選を見て、プレミア12を戦う中で、ある程度こういうチームだというのは分かりました。自分の目で確認するというのは大事だと改めて思いました」
――例えば東京五輪ヨーロッパ・アフリカ予選で優勝を果たしたイスラエルはどういう印象でしょうか?
「イスラエルは、どちらかというとアメリカの野球と言いますか、パワー野球という印象です」
――東京五輪は選手やスタッフの登録人数だけでなく大会方式も変則ルールの大会になります。
「オリンピックはすごく難しいと思います。というのも、予選2試合しか、最初に日程が決まらず、順位によってその後の日程が変わってきます。特に投手です。先発投手をどのように配置していくのかを含めて考えていかなくてはいけません」
――東京五輪で目指すものや社会に与えたいものはどのようなことになるでしょうか?
「野球の魅力や、スポーツの良さですね。オリンピックはスポーツの祭典で、それぞれ各競技の魅力を伝えていくものだと思っていて、野球はもう一度輝きを取り戻したいと思っています。(目標とする)金メダルを取ることによって大事になるのはその先です。少しでも野球に興味を持ってくれる子どもたちを増やす、また親世代にも試合を見ていただき、“やっぱり野球はいいね”となれば、子どもが“野球をやりたい”と言った時にしっかりと協力してくれると思うので金メダルを獲ることはすごく意味のあることです」
――稲葉監督ご自身も優勝した2009年の第2回WBCの後の反響は大きかったのでしょうか?
「やはり大きかったです。観ている方はとても多かったですから。また、昨年も“プレミア12を見ていました”、“感動しました”という声もたくさんいただきました。やはり影響力があると思いました」
2020年、就任してから最大の目標としてきた東京五輪での金メダル獲得に向けた大いなる挑戦のいよいよ始まる。
【第1回】「理想のチーム」で掴んだ世界一奪還
【第2回】世界一を獲得したからこそ伝えられること
【第3回】東京五輪で野球の魅力発信を