稲葉篤紀監督への新春特別インタビュー第1回では、プレミア12優勝を果たした侍ジャパントップチームの結束力の高さ、その要因が語られた。
第2回となる今回は、その優勝により「世界一となったからこそ発信できること」や、各世代の目標となる「トップチームの果たすべき役割」などを聞いた。
――プレミア12での世界一を経験して東京五輪に挑むというのは気持ちの面で大きいのではないしょうか。
「そう思いますね。この10年間(2009年の第2回WBC以降)侍ジャパンは世界一になれていませんでした。もちろん負けたことでしか残らない経験も受け継がなくてはいけませんが、勝てば様々な形でメディアに取り上げていただけますし、勝った要因がどんどん世に出ていきます」
――結果が出てこそ発信できるものは多いのでは?
「はい。優勝したことで選手が様々なことを語れたり、自信をつけたり、また侍ジャパンへの思いが強くなったりすると思います。私は選手として日本代表の一員だった際、(WBCで)2009年の第2回大会は世界一、2013年の第3回大会は負けました(準決勝敗退)。そのどちらも経験したからこそ、今回のプレミア12で勝てたことは大きかったと感じます」
――若い世代の選手たちにとって、侍ジャパンへの憧れが増していると感じます。その中で、トップチームが果たす役割は大きいと思われます。
「侍ジャパンには様々なカテゴリー・世代がありますが、最終目標は“このトップチームで戦いたい”と子どもたちに思ってもらえるようなチーム作りをしていかないといけません。前任の小久保裕紀監督の時代から、そうした部分をしっかり作っていきましょうと話していましたので、それを私も継承していきながら、新しいものを取り入れてやってきました。その上で世界一になれたというのは“こんなに喜びがあるんだ”とか“あんな歓声の中でやってみたいな”とか、そういうものを子どもたちの中で感じてもらえたら嬉しいですね」
――2019年も侍ジャパンのアンダー世代を訪れて激励もされてきましたが、その際に特に伝えたかったことはどんなことでしょうか?
「やはり日本代表という立場なので、勝利は大事です。そのために自分が何をしなければいけないのか、国際大会に出て自分に何が足りなかったのか、他のメンバーはどうだったのか。そうしたことを感じて自分の成長にも繋げていくという機会にして欲しいという話をさせていただきました。特に若い世代のジャパンではまだ成長段階でもあります。このユニフォームを着た経験が、その先に繋がっていくのが一番大事ですから」
――今回のプレミア12 で、登板した5試合すべてで無失点救援をした甲斐野央選手は大学代表から、オーストラリア戦など大事な場面で盗塁を決めてチームの勝利に大きく貢献した周東佑京選手はU-23代表から、それぞれ1年という短いスパンでトップチームに昇格しました。このように、国際大会の経験を生かしていることは素晴らしいことだと思います。
「もちろん彼らの実力ですが、若いうちからの国際大会の経験も大きいと思いますね。甲斐野に関しましては、ルーキーとしてプロの世界で1年間初めてプレーして、トップチームのユニフォームを着てあれだけの力が発揮できた。それは技術もそうですけど、精神力も非常に素晴らしいものを持っているなと感じました。当然アンダー世代の憧れという部分でも、プロに入って1年目でもトップチームに入って活躍ができるというところを、見せられたことは大きかったと思います」
――周東選手は2018年のU-23代表時代はまだ育成選手。そこから世界の大舞台でも通用する“足のスペシャリスト”になりました。
「昨年に支配下登録をされ、足の速さを武器に一軍でプレーし、侍ジャパントップチームにも選ばれた。もちろん走攻守三拍子など、あらゆるものを兼ね備えていれば一番良いですが、選手たち自身が何を特徴にしているのかを自覚して、大きく秀でたものを活かすというやり方もあるということを、アンダー世代の選手たちにも植え付けられたと思います。そこに気づくと、“自分はこれを活かせるな”というものがどんどんできますからね」
第3回へつづく
【第1回】「理想のチーム」で掴んだ世界一奪還
【第2回】世界一を獲得したからこそ伝えられること
【第3回】東京五輪で野球の魅力発信を