3月6日、侍ジャパン女子代表の現役選手とOGが「女子野球タウン」の1つとなっている広島県廿日市(はつかいち)市で野球教室を開催。たくさんの野球少女たちと白球を追いかけた。
一般社団法人全日本女子野球連盟は、女子野球をシティプロモーションとして活用し地域活性化を目指す自治体を「女子野球タウン」として認定。連盟と共に女子野球を通じて自治体を盛り上げる「女子野球タウン認定事業」を2020年から始め、12月にその認定を受けた廿日市市で第一弾事業となったのが今回の野球教室だ。
参加したのは、代表OGで現在は指導者の片岡安祐美(茨城ゴールデンゴールズ監督)と小西美加 (京都文教大学総監督)、現役代表選手の三浦伊織 と坂東瑞紀 (ともに阪神タイガース Women)の4名。
午前中は地元の広島県立佐伯(さいき)高校とMSH医療専門学校の女子硬式野球部の部員たちとの合同練習を行い、午後は公募で集まった約100人の野球少女たちに向けて野球教室を開いた。
どの選手も口を揃えたのが「こんなにもたくさんの野球少女がいること、来てくれたことが嬉しい」という感激に満ちた言葉だった。特に広島県尾道市出身の坂東は「私が小学生の頃は地域に私しか野球をやる女の子がいなかったので、女の子でも野球をやるという環境が当たり前になってきているのが凄く嬉しい」と感慨深く語った。
そんな純粋に「野球が好き」という思いで集まった部員と子供たちに応えるべく、女子代表の選手とOGたちも野球を心から楽しみ、これからも楽しんでもらえるようにと明るく熱心に指導にあたった。
片岡は「上手くなることも大事だけど、怪我をしない体の強さも大事」と何度も口にし、正しい体の使い方も丁寧に伝えていた。イベント終了後にその意図を聞くと「どうしても筋力が男性と違うので、女性が力任せに野球をやると怪我をしてしまう。これまでの女子選手の肩や肘の怪我を多く見てきました」という体験がベースにあるという。そして「1日でも長く野球を好きでいてもらうためにも怪我をしない体が一番だと思ったので、そのようにお伝えしました」と真意を語った。
また、内野手としての豊富な経験も生かした指導も行い、午前中の合同練習で指導を受けた二塁手の加藤瑚涼さん(MSH医療専門学校主将)は「併殺の際のトスの仕方を教わるなど吸収することが多かったです」と話した。
今春から京都文教大の総監督に就任する小西は、午後の野球教室でビギナークラスを指導。ボールの投げ方を笑顔で丁寧に伝え、少女たちも思い切ってボールを投じていた。そんな姿に「子供たちは何をやっても楽しそうで、野球の楽しさはこういうことなんだよなと感じました。もうみんなと一緒にまた野球がしたくなっています」と笑った。
現役代表選手の三浦と坂東もそれぞれ打撃と投球を積極的に指導した。三浦は「私が普段意識していることを伝えて引き出しが増えるようにと指導しました。そうすることで私の引き出しも増えたと思います」と振り返り、純粋な子供たちのその反応に「憧れられる立場なので、そうした意識を持って今後も行動していきたいです」と力をもらったようだった。
地元出身の坂東はイベントの最後に「この仲間たちで広島の女子野球を盛り上げていきましょう。いつか皆さんと対戦できることを楽しみにしています」とエールを送った。
参加した齊藤きらりさん(佐伯高校主将)が「様々なことを教えてもらい、とても濃い時間でした。声の大切さも教えてもらい楽しく練習ができました」と白い歯を見せたように、グラウンド上では野球を楽しむ姿と声があふれた。
そしてそれは女子代表の監督、選手たちが常々口にする「女子野球を世の中の当たり前に」という理念が、この地でも確実に育ち、大きくなっていることを感じさせる光景だった。