今年3月に開幕する2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下、WBC)での王座奪還を目指す侍ジャパントップチーム。その指揮を執る栗山英樹監督は間近に迫った大舞台を前に今、何を思うのか。
連載1回目となる今回は、就任1年目となった2022年を振り返り、刺激を受けたことや印象に残ったことなどを語った。
足早に過ぎた就任1年目
――いよいよWBCが間近に迫ってきました。今の率直な思いはいかがですか?
「それよりもまずは“早くメンバー決めなければ”という思いですね。ここまで来て、こんなにまだ悩むことがいっぱいあるのかという思いです」
――2022年は『備』という一字を掲げましたが、昨年1年間はいかがでしたか?
「できる限りのことをやってきているつもりですが、まだまだやりきれていないこともありますし、あっという間の1年でした」
――アマチュア球界含めて様々なところへ視察に伺っていましたが、その収穫はいかがですか?
「実際に現場を見させてもらって、これからの野球のために何が足りていないのかなど課題も感じることができました。微力ながら恩返しをしていかなくてはいけませんし、まずは3月のWBCで結果を出さないといけないなと思っています」
――つい先日は、サッカーW杯で日本代表が活躍をして国民を熱狂させました。そこからも刺激を受けましたか?
「サッカーW杯で、日本代表の皆さんが作ってくれた素晴らしい流れを生かしていかないといけません。一方で、ただ“日本頑張れ”ではなく、今までとはまったく違う見方で見ていました。自分に置き換えていろんな感じ方をしたり、苦しくなった時にどんな表情で監督が選手に声をかけるのかを観察したりしました。劣勢になった時、リードした時、何が大事でどういう決断をしていくのか、何が勝負のあやになるのかなど、いろんなことを考えて観たので参考になることが多かったですね」
様々な場面から感じた選手のひたむきな思い
――昨年11月には、栗山監督にとって代表初指揮となる侍ジャパンシリーズ2022が4試合開催されましたが、収穫などいかがでしたか?
「やはり能力が高い選手が集まると、選手たちが勝つためにやらなければいけないことをすごく理解してくれていました。一方で試合をやると、どうしても足りないものも見えてきて、まだまだやらないといけないことがあるなと思いました」
――同シリーズの前に「すべての課題を消しにいく」と仰っていましたが、まだ課題は残っていますか?
「そうですね。相手を知るのも大事ですが自分たちの特徴を知るのも大事。追い込まれた時にどうなるかとか、調子良い時にこうなるとか、ランナーを動かした時のバッターの対応力とか細かいことを確認していました」
――招集した選手たちはイメージ通りでしたか?
「そうですね。今の選手たちはすごく純粋でまっすぐに野球をやっている感覚が強いですが、特に日の丸に対しての思いを強く持ってくれていました」
――侍ジャパンシリーズ2022では主将を置きませんでしたが、見えてきた部分はありますか?
「そのことも選手たちと11月に話しました。主将が必要かどうか聞いてみたところ、選手たちはそこまで必要としないところがありました。選手がやりやすいことが一番なので、特別に無理やり置かなくてもいいのかなとも思います」
――各自がやるべきことをしっかりやっているところが見えたということも大きいのでしょうか?
「それもありますし、経験の多い選手に聞くと、主将の肩書きが無くても言うべきことは言いますからいいですよと言ってくれましたから」
――牧秀悟選手(DeNA)を一塁手として起用するなど所属球団とは違う役割を任せた選手や場面がございましたが、そこについても手応えは得られましたか?
「幅を広げたいということに加えて、一塁手・二塁手はどういう形が一番強いのか、点を取れるのか、勝ち切れるのか。そうしたことを能力の高い選手がたくさんいる中で、未だに模索をしています。ただ間違いなく言えるのは、牧選手も岡本和真選手(巨人)も一塁手ができるという確認はできました」
――源田壮亮選手(西武)がピッチャーゴロでも一塁まで全力疾走をする場面があったなど、各選手のひたむきな姿勢や侍ジャパンへの思いの強さが目立ったシリーズだったように思います。
「本当にそういうことが全員、当たり前にできるのが侍ジャパンだと思っています。その中で経験の多い源田選手たちがプレーで見せてくれるのはすごく大きい。本当にありがたいことですね」
第2回へつづく
【第1回】代表初指揮で感じた選手たちのひたむきな思い
【第2回】悩める選手選考とMLB組・新鋭への期待
【第3回】「世界一になりたいじゃない。世界一になります」