今年3月に開幕する2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下、WBC)での王座奪還を目指す侍ジャパントップチーム。その指揮を執る栗山英樹監督は間近に迫った大舞台を前に今、何を思うのか。
連載最終回となる今回は、WBC優勝への並々ならぬ思いやその理由、意義などを力強く語った。
強敵だからこそ燃える思い
――2月の合宿で重視することは、どのようなことですか?
「まずは3月9日のWBC開幕戦(に向けて)ですね。普段のシーズンより1ヶ月弱早いので、どういう状況でも全力でやって壊れないという状況にしていかなくてはいけません。僕から何か教えることもないですから、いい準備をして戦いに備える時間にしてくれればと思います。こちらも丁寧にチェックをしながら、コミュニケーションを取りながらやっていきたいです」
――他国のロースターも徐々に発表されてきていますが、率直にどのように思われますか?
「今の時点で登録30人を発表したチームもあるので、(もう決めることができていて)いいなあという印象ですね(笑)素晴らしい野球選手たちが各国出てくるので、だからこそ“勝たないといけない”と思うばかりですね。アメリカだけでなくドミニカ共和国などもすごいメンバーですが、ああいうメンバーだからこそ面白いし何か生まれるし、すべてを賭けられると思います」
――昨年のインタビューで仰っていたデータの収集や専門家の登用は今どのように進めていますか?
「今いろいろやっています。アナリストの分析の仕方が世界的にすごく進んでいるので、そこを上手く取り入れながらやっていけたらと思っています」
野球の持つ力をもっともっと伝えたい
――あらためてですが、WBCでの目標を教えてください。
「世界一になるためにだけに戦います。世界一になりたいではなく、世界一になります」
――WBC優勝への手応えは今の時点でいかがですか?
「手応えは別として、優勝するしかない。優勝することしか考えていません。チームがまだでき上がっていないので、まずはそこからですね」
――選考は本当にギリギリまで悩まれると思いますが、ここだけはブレないようにと思っているのは、どのような部分ですか?
「何も無いですね。勝てるチームを作れるかどうかということだけです」
――あらためてこのWBCでもたらしたいものは、どのようなことになりますか?
「もたらしたいというよりも、これからの野球界にとって大切な時期ですし、若い世代にとってすごく意味のある大会だと思っています。もちろん勝たなくても伝わることはありますが、勝ちきればもっともっと伝えたいことが伝わると思っているので、どうしても勝ちたいんです。野球の過渡期が来ているのは間違いないので、野球の持っている凄さや楽しさ、意義や影響力をしっかり伝えられるようにやっていきたいです」
――2023年の漢字一字は『尽』という言葉にされましたが、そこに込めた思いを教えてください。
「去年、“備”という漢字にして、しっかり準備して1年間を過ごすんだと思ってきました。それを今年はどんな展開でもやりきれるのか出し尽くせるのかということがすごく重要なので、それを忘れないようにやっていきたいという思いを込めました」
――最後にファンの皆様へメッセージをお願いします。
「こちらはまだメンバーを考えていますが、それは決まらないのではなく、期日があるから決めないといけないという決め方にしたくないからです。ベストなメンバーに落とし込めるまで粘りたい。選手たちには早めに伝えられなくて迷惑をかけますが、最後まで粘りきって、一番勝ちやすいメンバーにしていきます。ぜひファンの皆さんも監督の気持ちで、自分だったらこういうチームを作るということを考えながら、楽しみに待っていただきたいです」
【第1回】代表初指揮で感じた選手たちのひたむきな思い
【第2回】悩める選手選考とMLB組・新鋭への期待
【第3回】「世界一になりたいじゃない。世界一になります」