文・写真=室井昌也
11月16日から東京ドームで行われるENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017に向け、韓国代表はソウルの高尺(コチョク)スカイドームで今月5日から代表練習を実施。その間、3度の練習試合を行った。
練習期間中、韓国チームで印象的だったのは、今回初めて代表を率いる宣銅烈(ソン・ドンヨル)監督の表情がとても明るかったことだ。選手個々については各パートのコーチに任せ、チーム全体を見つめる宣監督は「これまでの代表チームと違って、選手同士の歳が近いせいか雰囲気がいい。そして“やってやろう”という気持ちが出ている選手が多い」と笑みを浮かべた。
打線の中心的役割を果たす、俊足の3人
その宣監督が今回の代表チームの特徴に挙げるのが機動力だ。かつての韓国は李承ヨプ(イ・スンヨプ)、李大浩(イ・デホ)、金泰均(キム・テギュン)に代表されるような大柄でパワーを誇る選手が多かったが、近年は大きく変化を見せている。練習試合を視察した日本球界OBも「野手に線の細い選手が多い」という印象を持った。
今回の韓国打線は確実性の高い打撃と走塁能力に長けた選手が並ぶ。上位には新人のシーズン安打、得点記録を塗り替えた李政厚(イ・ジョンフ=ネクセン)と、3年連続打率3割を残し、2014年には50盗塁をマークした実績がある朴珉宇(パク・ミンウ=NC)。いずれも左打者だ。
また中軸には代表チームのキャプテンでこちらも打率3割を3年続ける具滋昱(ク・ジャウク=サムスン)と、左打者が多いチーム内で4番を打つ右の金ハソン(キム・ハソン=ネクセン)が座る。金ハソンは2年連続20本塁打以上を記録し、今季初めて打率3割、100打点に到達した。
左から金ハソン、具滋昱、朴珉宇、李政厚
スター性抜群のレジェンドの息子に警戒
今回の韓国代表メンバーの中で最も注目を集めるのが高卒ルーキーの李政厚だ。前出のOBは李政厚について「ボールをとらえる正確性が高く、バットスイングも速い。何より打席に入った時の雰囲気がある」と絶賛した。日本側からすれば李政厚をいかに塁に出さず、ランナーを置いた場面での打席でどう対処するかがカギとなるだろう。
李政厚が注目を集めるもう一つの理由が父の存在だ。李政厚の父はかつて中日でもプレーした韓国球界のレジェンド・李鍾範(イ・ジョンボム=元中日)。その父・鍾範は今回の代表チームで一塁ベースコーチを務める。この親子が塁上でハイタッチを交わす光景は、韓国にとって得点チャンスの到来を意味する。
ヒットで出塁の李政厚(写真左)とコーチの父・鍾範(右)
投手陣は不安と期待が交錯
一方の投手陣はコンディションが万全ではない選手が多く、これまでの実績と現時点での信頼度がイコールではない。
そんな中、先発または第2先発候補のうち、右のパワーピッチャー・張現植(チャン・ヒョンシク=NC)は練習期間中、徐々に球威が回復し、サイドスローの林起映(イム・ギヨン=KIA)は「当初違和感があった試合球にも慣れてきた」と話す。今回の試合球について「韓国のボールより滑る。縫い目が低い」と感じた投手が多かった。
左から張現植、咸徳柱、林起映、具昌模
今回の代表練習で評価を挙げたのが左の具昌模(ク・チャンモ=NC)だ。150キロに迫る直球と大きなカーブが武器で、練習試合では不安視された制球が安定していた。左腕では当初、ポストシーズンで好投を見せた咸徳柱(ハム・ドクチュ=斗山)への信頼が大きかったが、現時点では具昌模への期待感が高まっている。
初戦は特別な日本戦。平常心で挑めるか
韓国は11月16日の初戦で侍ジャパンと対戦する。宣監督は「今回の大会は若い選手が経験を積む場とは言え、韓日戦(日韓戦)となるとファンの視線が違う」と和やかな表情から一転、気を引き締めた。
宣監督は短期決戦に向け、「打者は速球への対応、特に150キロ以上出てコントロールがいい日本の投手にどう対応するかが重要だ。投手はボールを先行させることなく普段通りの投球が出来るかが大事」と話した。
今回の代表練習で結束を高めた若き韓国代表。しかしその中でトップチーム経験者は金ハソンしかいない。彼らは東京ドームでの大舞台でいかに平常心を保ち、ベストに近い状態で戦えるかがポイントとなりそうだ。
ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017
大会期間
2017年11月16日~11月19日
予選
11月16日(木)19:00 日本 8 - 7 韓国
11月17日(金)19:00 韓国 1 - 0 チャイニーズ・タイペイ
11月18日(土)18:30 チャイニーズ・タイペイ 2 - 8 日本
決勝
11月19日(日)18:00 日本 7 - 0 韓国
開催球場
東京ドーム
出場チーム
チャイニーズ・タイペイ代表、韓国代表、日本代表
侍ジャパン選手紹介
2017年11月6日 先発投手編
2017年11月7日 中継ぎ・抑え投手編
2017年11月8日 捕手編
2017年11月9日 内野手編
2017年11月10日 外野手編
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