稲葉篤紀新監督率いる新生・侍ジャパンは「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」で初陣に挑む。侍ジャパンは今春の2017WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に準決勝でアメリカに敗れた後、小久保裕紀監督が退任。同大会で打撃コーチを務めた稲葉氏を新監督に迎え、新たに2020年の東京オリンピックでの「金メダル獲得」を最大のターゲットとし、て再始動した。今大会の参加資格はU-24(1993年1月1日以降生まれ)または入団3年目以内(オーバーエイジ枠3人)と制限があるため、メンバーには代表経験のほとんどないフレッシュな顔ぶれが並ぶが、3年後には日本球界の中心となるべき若きタレント揃いで、今大会でのパフォーマンスに期待が掛かる。
実績ある2人の左腕に注目
日本のストロングポイントとは何か。侍ジャパンが2013年に常設化される、それ以前から、日本は「投手力」を前面に押し出し、世界を相手に勝利を収めてきた。第1回大会の2006WBC(王貞治監督)、第2回大会の2009WBC(原辰徳監督)の連覇は「スモールベースボール」の勝利とも言われるが、小技を駆使した緻密な野球(攻撃)は、その1点を守り切る投手を中心としたディフェンス力がなければ成し得なかった。事実、世界一に輝いた両大会で日本のエースだった松坂大輔(現・福岡ソフトバンク)が大会MVPに選出されている。
その伝統は受け継がれ、新生侍ジャパンを率いる稲葉篤紀監督も「日本の強みは投手力」を公言する。特に未知の相手と戦う国際大会では、先発投手のゲームメイク能力が重要視されるが、今回招集された5人の先発投手(※所属球団での2017年シーズンの戦績による)には、試合を作り、守備からリズムを作ることが期待される。
注目は今シーズン2ケタ勝利を挙げた左腕2人だ。
まずはプロ入り2年目で初の2ケタ勝利(11勝7敗。1年目の昨季は8勝)をマークし、横浜DeNAの2年連続Aクラス入りと、日本シリーズ進出に貢献した今永昇太。球速は140キロ台前半ながら、腕の振りが良いためボールにキレがあり、左腕から繰り出されるストレートの体感速度は「球速表示以上」ともっぱら。100キロ台のスローカーブも操り、その緩急差で打者を惑わす。また、スライダー、チェンジアップも決め球としての精度を誇り、はストレートと同じ軌道から急激に変化するため、奪三振率も高い。駒大4年時にユニバーシアードを戦う侍ジャパン大学代表に選出されたが、左肩を痛めて辞退しており、念願の初の侍ジャパン入りに意欲を見せている。
今季のセ・リーグの左腕で最も多くの勝ち星を手にしたのが、読売の田口麗斗だ。高卒3年目の昨季に先発ローテーションの座をつかみ、チームの勝ち頭に(10勝)。今季も開幕から順調に勝ち星を積み重ねて2年連続で2ケタ勝利(13勝4敗)。3完投2完封もさることながら、9つの貯金をもたらすなど、負けない左腕(勝率.765はリーグ3位で左腕ではトップ)に成長した。球速こそ130キロ台前半で、ブルペンでは目立たないが、いざ試合となればタテ割れの大きなカーブとのコンビネーションで凡打の山を築く。特に国際大会ではこのカーブが大きな武器となるのではないか。今大会の招集メンバーでは数少ない小久保ジャパン経験者の1人で、“定着”を虎視眈々と狙う。
広島東洋の薮田和樹は招集メンバーで最も多くの勝ち星を挙げている右腕(15勝)。シーズン前半は中継ぎで、開幕からブルペンの中心として23試合に登板した。チーム事情で5月末に先発に転向すると、ここから最後までローテーションを守り抜き、チームのリーグ連覇に大きく貢献した。150キロをコンスタントに計測する強いストレートの持ち主で、カットボール、ツーシームの球威のある変化球で打者をねじ伏せるパワーピッチャー。昨季限りで引退した黒田博樹(元広島、ヤンキースほか)を師と仰ぎ、技術面でも影響を受けたという投球に注目してほしい。
もう1人の右腕である埼玉西武の多和田真三郎は、2年目の今季は不振で序盤に二軍落ち。ここで投球フォームの修正に取り組み、真っすぐの制球が安定したことで後半戦の活躍につながった。シーズン5勝にとどまりはしたが、8月12日のロッテ戦、19日の日本ハム戦で2試合連続完封勝利を飾るなど、大器の片りんを見せた。スライダーのキレも天下一品で、所属の埼玉西武でもそうであるように、今大会の侍ジャパンでもエースナンバー「18」を与えられたところに首脳陣の期待がうかがえる。
北海道日本ハムの19歳の左腕・堀瑞輝は、高卒ルーキーながら一軍登板も果たし、チームでは次代の左腕エース候補にも名前が挙がる。最速150キロのストレートは魅力十分で、変化球もプロの世界に入って飛躍的にレベルアップ。先発、中継ぎ、抑えどこでも任せられるユーティリティーさも魅力だ。今大会は中継ぎでの登板が見込まれるが、国際大会を経験することで、今後の飛躍の糧となることを期待しての“希望枠”か。
今大会は最大3試合のため、今永、田口、薮田と今季結果を残した3人がスターターを務めることが予想され、多和田、堀は第2先発の位置付けか。パワーのある韓国、チャイニーズ・タイペイ打線を相手に、彼らがどのように試合をつくるのか、注目したい。
ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017
大会期間
2017年11月16日~11月19日
予選
11月16日(木)19:00 日本 8 - 7 韓国
11月17日(金)19:00 韓国 1 - 0 チャイニーズ・タイペイ
11月18日(土)18:30 チャイニーズ・タイペイ 2 - 8 日本
決勝
11月19日(日)18:00 日本 7 - 0 韓国
開催球場
東京ドーム
出場チーム
チャイニーズ・タイペイ代表、韓国代表、日本代表
侍ジャパン選手紹介
2017年11月6日 先発投手編
2017年11月7日 中継ぎ・抑え投手編
2017年11月8日 捕手編
2017年11月9日 内野手編
2017年11月10日 外野手編