10月20日、「第3回 BFA 女子野球アジアカップ」(開催地・期間未定)への出場に向けた、侍ジャパン女子代表候補合宿の3日目が行われた。招集された代表候補26選手(体調不良により1名不参加)が広島県三次市に集合し、前日同様、午前中は攻守の練習を実施。午後からは、女子硬式野球の企業チーム「はつかいちサンブレイズ」(以下、サンブレイズ)を中心とした混合チームとの練習試合を行った。
午前の練習では、三塁へのけん制を起点とした挟殺プレーなど、複数パターンの投内連係を入念に確認。「けん制、フィールディングでミスが出てしまうと投手だと、一発勝負(での起用)は怖いなと。野球の8割は投手で決まると思っているので」と語る中島梨紗監督の方針が垣間見える練習風景だった。
前日同様、昼食休憩後は試合が行われた。対戦相手も昨日と同じく、広島県内の女子野球タウンである廿日市市を拠点に活動するサンブレイズを中心とした混合チーム。昨日はサンブレイズの磯崎由加里が先発したが、この日のバッテリーは全員代表候補選手、バックを守る野手はサンブレイズの選手という形での混合チームとなった。
前日同様、主導権を握ったのは、代表候補チームだった。混合チーム先発の坂原愛海(東近江バイオレッツ)から、三浦伊織(阪神タイガースWomen)がチーム初安打を記録すると、続く楢岡美和(九州ハニーズ)が右中間三塁打を放ち、先制に成功した。
代表候補チームの先発は古谷恵菜(淡路BRAVEOCEANS)。援護点をもらった直後の立ち上がりに、内野安打で先頭打者の出塁を許し、失策絡みで今合宿の実戦初失点を喫した。だが、リズムは崩さず、緩い変化球を効果的に交えながら、2イニングを1失点にまとめた。
代表候補打線の勢いは、初回以降も止まらず。2回には3安打2四球を集めて2得点。3回にも、この回から登板した小野寺佳奈(エイジェック)に、岩見香枝(埼玉西武ライオンズ・レディース)の左越え三塁打など、3安打を浴びせて3点を追加した。さらに4回には盗塁を絡めた連打で、7回には1死から三塁打で出塁した泉由希菜(淡路BRAVEOCEANS)を、小島也弥(九州ハニーズ)がしぶとく内野安打で帰し、着実に加点。8得点を挙げた。
守りでは、古谷の後を受けた堀田ありさ(東海NEXUS)、坂東瑞紀(阪神タイガースWomen)、柏崎咲和(大阪体育大)、小原美南(東海NEXUS)が、それぞれ2イニングを無失点に抑えた。2番手の堀田は2イニングとも三者凡退に抑える文句なしの快投だった。
昨日の左中間二塁打に続き、この日は適時打をマークした小島、9回に左翼線二塁打を放った村松珠希(はつかいちサンブレイズ)は、塁上で右手を「JAPAN」の「J」の形にするパフォーマンスを披露。この背景について、村松は「初日に『ヒットを打ったらJのポーズをしよう』と決まって、どんどんアレンジしていった感じです(笑)。監督から雰囲気作りについて言われていたので、できてよかったと思う」と明かす。
小島は、ポーズを繰り出す前に一ひねりを加えた“アレンジ版”を披露。これは、「侍ジャパンは侍の刀を抜くポーズしていたのですが、私たちは“くノ一”なので、手裏剣をやろうと思いました(笑)」とのことだ。
最後は短時間ながら円陣を組んで、中島監督が選手に語りかけ、一本締めで集合日を含めた全3日間の合宿を打ち上げた。自身初の強化合宿を終えた指揮官は、「選考合宿の経験は2回あったのですが、強化合宿は初めて。今回はチームとして『こうやっていくよ』という方針を伝えながらやってきて、それをやろうとする選手の姿勢が見えてよかったです」と充実の表情を浮かべた。
今回の合宿が選手の絞り込みの材料ともなるが、「正直みんないいので、どうしよう…という感じ」と、うれしい悲鳴をあげる。
収穫があったのは選手も同様だ。実戦で混合チーム側の5番手として登板した里綾実(埼玉西武ライオンズ・レディース)は、2イニングを無失点に抑えたが、「昨日よりも体が開いている感覚があった」と、降板後に再調整。所属先でのチームメイトで、実戦でもバッテリーを組んだ英菜々子(埼玉西武ライオンズ・レディース)からアドバイスをもらい、すぐさまキャッチボールで実践した。
打で存在感を示した小島が「これまでは(年齢が)上の人たちについていってばかりだったのですが、年齢的にも中堅になるので、今回は年下の選手を引っ張るという自分の役割をやっていきたいと思います」と語るなど、各選手が技術面、精神面両方で多くの気づきを得る合宿となった。
監督・選手コメント
中島梨紗監督
「昨日出た課題、やろうと言ってきたことがすぐできるのは、さすがだなと思いました。ミスをしても、次は同じミスをしないところが見られたので、私としてもよかったですし、短い時間でしたけど、収穫の多い2日間になったと思います。私たちの野球には投手力、守備力、走力、小技が必要。絶対に勝たないといけない試合に勝つため、その野球の準備がスタートできたのはよかったと思います。選手の最終選考は難しい。みんなよかったので、誰か一人の名前を挙げるのも難しいくらいです。その中で、投手に求めるのは対応力。前回の選考合宿でも伝えたのですが、しっかりインコースを突いてほしい。野手はユーティリティー性を持っている選手は有利になってくると思います」
村松珠希(はつかいちサンブレイズ)
「福留(宏紀)コーチにタイミングを早めに取った方がいいというアドバイスをもらって、長打につなげることができました。(合宿開催地の広島のチームから唯一の選出)中国地方は、まだまだ女子野球が発展途上の地区なので、今回の合宿を見たり、女子日本代表の存在を知ったりすることで、地元の選手たちのモチベーションが高まってくれたらうれしい。特徴のあるいい投手たちと組ませてもらって、捕手としてもいい経験をさせていただきました」