新たに野球日本代表「侍ジャパン」トップチームの指揮官となった井端弘和監督。3回にわたるインタビューの連載第2回は、U-12代表監督(2022年、23年)での経験がもたらしたものや、今後の野球界への思いなどを聞いた。
侍ジャパンであることの責任
――U-12代表の監督で2年間指揮を執られた経験やU-12W杯で得た見識なども活かされそうですか?
「昨年のU-12W杯では、この世代をどう扱っていいかも分からなかったこともあって思うような結果が出ませんでした(7位)。しかし、今年は自分なりに答えを見つけることができました。優勝はできず4位ではありましたが、試合内容(U-12W杯で侍ジャパンとしてアメリカを初めて下すなどスーパーラウンドで3戦全勝)は誰が見ても世界一のチームにすることができました。準備期間がもう1週間2週間あれば世界一は獲れていたと思っています」
――子どもたちの持つ可能性や成長というのは、あらためてすごいと感じました。
「子どもには無限の可能性しかありませんよね。ホームランをあまり打ったことのない選手が何試合も連続でホームランを打ったり、コントロールの悪かった投手が自信をつけたらストライクをどんどん取れるようになったり、あの大会だけでも大きく成長した選手がたくさんいました。この経験ができたことはとても貴重でした」
――そのための指導はどういったことになるのでしょうか?
「就任1年目の時は“あれはダメ。これはダメ”と窮屈な思いをさせてしまいましたので、今年は決まり事を私生活でもプレーでも1つだけにして、選手たちがのびのびと生活やプレーができるようにしました。一方で言動については“侍ジャパンであることの責任は世代やカテゴリー問わずある”ということをセレクションの時点で伝えました。それを招集までに親御さんとともに考えてから来てくれたので、実践することができたのだと思います」
――子どもたちとトップチームの選手では当然異なることが多いとは思いますが、指導の根幹や理念はトップチームも変わらないものはありますか?
「そうですね。トップチームでも場面場面で僕を含めたスタッフが最適な言葉をかけることができたらいいのかなと思います。やはりプレーしている選手は世代問わず不安が大きいもの。不安を取り除けるようにやっていけたらと思います」
侍ジャパンの役割
――侍ジャパンでの活動以外でも様々なカテゴリーの野球に携わられている井端監督ですが、野球界の現状についてどのように思われていますか?
「侍ジャパンが世界一になったことで、その熱狂や盛り上がりを見て、あらためて日本国民の野球熱は素晴らしいものがあると感じました。だからこそ勝ってファンの皆さんを喜ばせたいです。また、野球をやるからには各世代、各カテゴリーの侍ジャパンを目指して欲しいですね。そして、アンダー世代からゆくゆくはトップチームを目指して野球を続けて欲しいです」
――だからこそトップチームの果たす役割は大きいです。
「そう思いますね。やはり“侍ジャパンに選ばれたい”“侍ジャパンで野球がしたい”と野球を始めてもらえたり、目指してくれたりしたら嬉しいです。指導だけでなく、僕は野球が好きなので、いろんな世代・カテゴリーの野球を時間の許す限り観に行きたいなと思います」
――どのような野球界になることが理想でしょうか?
「発展し続けることでしょうね。そのためには、あくまでもやるのは選手たちですから、特に子どもたちが野球をやりやすい環境になれば将来の発展にも繋がると思います」
第3回へつづく
【第1回】 稲葉篤紀元監督への感謝、U-15代表監督兼務を希望した理由
【第2回】 U-12代表監督として学んだこと、今後の野球界
【第3回】 初陣となるアジアプロ野球チャンピオンシップで目指すもの