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「赤星憲広×トップチーム」侍ジャパン強化試合 視察レポート

2016年11月21日

 11月の強化試合(10日、11日・メキシコ代表、12日、13日・オランダ代表)を3勝1敗で終えた小久保ジャパン。その4試合の戦いぶりから見えた収穫と課題を、侍ジャパンの赤星憲広アンバサダーに聞いた。

――今回は来年3月のWBCを前にした年内最後の強化試合でした。メキシコ代表と1勝1敗、オランダ代表とは2試合連続タイブレークの末に2連勝しました。まず、この4試合で日本の良かった点は?
「打線に関して、1戦目は苦しみましたけど、2戦目からは選手たちがしっかりと相手投手に臨機応変に対応して得点を奪った。何より集中打が出たというのは、チームとして、打線の繋がりという意味でも非常に良かったと思います。その中で、2戦目などは足を絡めた攻撃も見せた。選手個々を見ると調子の上がらなかった選手もいましたけど、全体を見ると初めて対戦して、ある程度ボールを動かしてくるメキシコとオランダの投手にうまく対応できたと思います」

――4試合で計35得点を奪う一方で、課題も出たと思いますが?
「そうですね。課題は明らかに投手陣。それを含めたディフェンス面ですね。あれだけ点数を取られたのは完全な想定外でしたね。メキシコにしてもオランダにしても、今回はベストメンバーではなく、1.5軍ないしは2軍といったメンバー構成でしたけど、その相手にここまで苦しむとは思ってなかった。日本の強みは、投手を中心にしっかりと守って少ないチャンスをものにすることができる。それが国際大会における日本のスタイルだと思いますし、そう考えると自分たちの野球ではなく、かなり大味な試合になってしまったと言えるでしょう」

――投手陣が4試合で計29失点でしたが、その原因は?
「シーズンの疲れもあったでしょうけど、それよりもWBC球に対してのアジャストができていない投手が多かった。特に新しく入ったメンバー、経験の浅い投手たちはほとんど自分の思ったボールを投げられていなかった。最後の試合に投げた石田(健大)投手と田口(麗斗)投手の2人は、代表デビューのプレッシャーもあったでしょうけど、それ以前にボールが変わったことで投げにくそうでしたし、その分、余計な力が入ってコースが甘くなったり、ストライクとボールの差がハッキリとしてしまった。千賀(晃大)投手もお化けフォークという大きな武器がありながらも最初はほとんど使わず、最後は投げましたけど明らかな抜け球でのボールが多かった。ボールへの対応というのは心配な部分ですね」

――心配はありますが、WBCを前にした強化試合で課題が分かったことは大きいと思います。
「そうですね。練習で投げるのと実際に試合でマウンドの上から投げるのとでは感覚も違ってきますし、指に余計な力が入れば普段よりも早く握力が落ちてきてしまう。本番までにはまだ時間はあるので、しっかりと休みを取りつつ、ボールに対しても慣れて行けば大丈夫だとは思いますが、ボールの違いが自分の投球にここまで影響が出るとは思っていなかった投手も多かったと思います。その辺が今後の課題でしょう」

――今回の強化試合に関しては「競争」がテーマだと仰っていましたが、その中で目に付いた選手は?
「やっぱり鈴木誠也選手ですね。初召集でしたけど、持ち味をしっかりと出して、アピールもできたと思います。最後の満塁弾だけじゃなくて他の打席でもしっかりとヒットを打っていましたし、左打ちの外野手が多い中、右の外野手として鈴木選手がいれば、チームとしての戦い方の幅も広がる。守備面でも、所属チームでは基本的にライトを守っていますけど、今回はセンターも守ったりしながら、しっかりと仕事をしましたからね。あと、実績はありますけど、秋山(翔吾)選手もアピールに成功した選手だと思います。今季は本人的には満足できない数字で、外野のライバルも多い中で、今回の強化試合では第2戦で3安打4打点の活躍でお立ち台に上ったりして、9番でも1番でも2番でも、打線の中で存在感がありました。レギュラー争いでもリードしたと思います」

――定位置争いという意味では、正捕手を誰にするのかも大きな注目点でしたが?
「捕手では大野(奨太)選手ですね。リードという面では苦労した部分もあったでしょうけど、打つ方では第3戦でサヨナラヒットを放つなど、いぶし銀の働きを見せた。絶対的な正捕手がいない中、しっかりとアピールできましたね」

――打順に関しては、4試合の中でさまざまなパターンを試しましたが?
「現時点で決めてしまう必要はないと思います。今回の11月のコンディションと、年が明けた3月のコンディションはまた変わってきますし、大会に入ってからの調子の良し悪しもある。短期決戦になるので、状態の良い選手を見極めて起用していくことも重要でしょうし、いろんな状況を想定して、チームとして多くのパターンを持っておくというのは大事です。誰か一人が調子悪くても他の選手でカバーできるのが今の侍ジャパンの強みでもあると思います」

――その中で「4番・中田翔」、「5番・筒香嘉智」の並びは変えませんでした。
「4試合の中で4番、5番を一度も動かさなかったというのは、小久保監督の意思表明だったと思います。中田選手、筒香選手の2人を軸にして、じゃあ1番は?3番は?6番は?という考え方だと思います。その中で小久保監督も言っていたように、“筒香の後”の6番打者が大きなポイントになる。4番、5番は代えない中、第1戦では内川(聖一)選手、第2戦では坂本(勇人)選手、第3戦では大谷(翔平)選手、第4戦では鈴木(誠也)選手と、6番打者に毎試合違う選手が座った。実際、彼らのところにチャンスが多く回ってきましたし、誰が“筒香の後”を務めるのか、その選手がどういう働きを見せることができるのか。そこがWBC本番でも大きなポイントになるでしょう」

――注目は大谷選手の起用法ですが、今回の強化試合ではDH、代打として出場する中、非常に印象的な活躍を見せました。
「そうですね。投げている時でも、投げていない時でも、常に打線に入れておきたいな、と、改めて思わせてくれましたね。3番でも6番でも、大谷選手が入ると打線に厚みが出ますし、いろんなオプションが考えられるのは良かったと思います。あまり過度に期待し過ぎると可哀想ですけど、侍ジャパンの中でも“二刀流”としての実力を証明しましたし、今回は走塁面でもアピールしましたからね。小久保監督も、投げる方に専念させてあげたい気持ちはあるでしょうけど、勝つためには打つ方でも“よろしくお願いします”というところでしょう。頑張ってもらう。それしかないですね」

――今後はWBC本番へ向けたメンバー選考に移りますが、その上でのポイントは?
「基本的には今回のメンバーが中心になる。あとは投手陣で数人の入れ替わりがあって、メジャーリーガーを何人招集するのかでしょう。もうWBCまで公式戦はないので、今季の成績と今回の強化試合で判断するしかないですが、誰がメンバーに選ばれても侍ジャパンとして相応しい選手ですし、日本の代表として誇りを持って戦ってくれると思います。いよいよ来年の3月です。僕自身も楽しみにして、来年を待ちたいと思います」

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