文・写真=廣谷 弥咲(ケニア野球代表監督)
今回はケニアの野球はどういったものなのか紹介させて頂きます。
まずケニアでは野球がマイナースポーツなので野球道具がありません。スポーツ店へ行っても野球のボールすら売ってない状況です。では野球の道具はどうやって集めているのか。全て寄付で集まっています。なのでまだ道具も新品はありません。それをみんなでシェアしながら使ってる状況です。プレーヤーの中には靴を履いていない選手もいます。まだまだ野球の道具が足りない状態です。
そしてケニアの野球にはもう一つ問題があります。それはグラウンドです。ナショナルチーム専用のグラウンドはありますが、内野も外野もでこぼこで非常に危険な環境で練習や試合を行っています。しかし途上国ではそれが当たり前なのでケニアの選手達は、苦に感じていません。なぜなら日本みたいに環境が整っているところで野球をした事がないので今のグラウンド環境が当たり前と思っています。選手達は野球ができたらそれだけで幸せなのです。そういった環境の中で選手達は日々練習に取り組んでいます。
次は私が代表チームの練習に初めて参加した時の話を紹介させて頂きます。練習が9時スタートでしたのでグラウンドに8時到着で向かったのですが、まだ誰一人も来ていませんでした。私が現役の時は練習の1時間前に到着して、準備であったり体を動かしたりしていたのでそれが当たり前だと思っていました。途上国では日本の当たり前が全く通用しません。しかし集合時間は9時なので気長に待っていたのですが、9時になっても来ませんでした。
集合時間が過ぎた頃から続々と選手達が集合してきました。1番遅刻した選手で2時間も遅れる選手がいました。先が思いやられます。
とりあえずケニアはどういった野球をするのかを見ていました。プレーは雑ですがさすがケニア。身体能力が高いと感じます。指導者もいないなか、みんな我流でプレーしています。ケニア野球に日本野球を取り入れれば今後のケニア野球はかなり化けるのではないかと感じるくらいでした。
そして1日の練習が終わりその後、選手を含め野球機構の方々とミーティングを行いました。私が伝えたのは1つだけでした。
選手達に時間は大切にしてほしいとお伝えしました。時間は世界共通で1日24時間です。その中で人と差をつけるなら同じ事するのでは無く、1秒でも多くの時間を使って学んでほしいと。そして野球人として、大人として。それだけをお伝えさせて頂きました。
次の日も練習が9時からあったので前日同様8時にグラウンドへ向かいました。1日で人は変わる事って難しいと思っていたのであまり期待せずに練習に向かいました。しかし私が見た光景は違いました。私より早くグラウンドへ到着して練習をしていました。日本では当たり前の光景ですがケニアでは他のスポーツのプロでも遅刻が当たり前の国です。
単純に言われた事だけをするのか、それとも選手達に私の思いが伝わったのか。。。それはわかりませんが、集合時間より早く来ていた事は確かです。その後、練習を見させてもらい感じた事があります。
野球というスポーツは団体協議です。いかに相手のためにプレーをするか。キャチボールでも相手が取りやすいボールを投げてあげる。そのような思いやる気持ちが野球は大事になって来ます。しかし、ケニアでは全くの真逆でした。みんな自分勝手で個人競技を見ているようでした。まずそこから変えていかないといけないと思いました。
キャッチボール1つにしてもグローブをとって素手でボールと補給する。自分勝手にボールを投げていれば相手が補給できない事があります。 しかし相手の事を思ってボール投げると自然にボールもゆっくりなスピードになり相手の捕りやすいボールに変化していくと思います。これが団体競技に必要な思いやりのあるプレーだと私は思います。
まだまだケニア野球はたくさんの問題を解決していかないといけないですが、今後ケニアの野球がオリンピックやWBCに出場できるよう頑張っていきます。今後ともケニア野球の応援宜しくお願い致します。
- 2018年5月1日 「日本から支援の輪」
- 2018年3月14日 「マゴソスクール」
- 2017年9月29日 「NAIROBI BASEBALL CLASSIC 2017」
- 2017年7月26日 「ケニア国内大会が初開催」
- 2017年7月5日 「ケニア国内トーナメント」
- 2017年6月19日 「ケニアの野球とは」
- 2017年6月5日 「ケニアの監督になるまで」
- 2017年5月30日 「ケニアという国」
著者プロフィール
- 廣谷 弥咲
- 高校、大学と野球部に所属をし卒業後プロを目指しクラブチームへ。さらなる高みを目指して渡米し、ウィンターリーグにも参加。その年愛媛マンダリンパイレーツへ入団。その後、独立リーグで腕を磨くものの、肩の怪我で現役を引退。父の仕事の関係でケニア大使館の方と知り合う機会があり、ケニア代表監督の打診を受ける。就任に迷うも、現地を見学に訪れた際に現地の選手たちとも話をし感銘を受け監督を受諾。ケニアだけにとどまらず、アフリカに野球を広げ、アフリカからプロ選手の誕生、さらにWBC、オリンピック出場を目指す!!
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