3月19日に開幕する第93回選抜高等学校野球大会(以下、センバツ)。2年ぶりに開催される春の高校野球最高峰の戦いには、かつて侍ジャパンU-15代表として日の丸を背負って戦った選手たちも多く出場する。
後編の今回は2019年の国際大会(第10回 BFA U15アジア選手権、U-15アジアチャレンジマッチ2019)で優勝を果たした新高校2年生世代の選手たちを紹介する。
軟式球から硬式球に握り変えて間もないにもかかわらず、チームの主力選手として活躍が目立っているのが第10回 BFA U15アジア選手権(中国・広東省深圳市)に出場した選手たちだ。
同選手権はアジア地域における野球の普及と発展のため、硬式球に近い性質でありながらも安全性が高く、表面が革でなくゴム素材のため雨の多い国でも長持ちするKENKO WORLD BALL(通称Kボール)を使用。そのため、U-15代表の選手たちは一般財団法人日本中学生野球連盟が主管し、中学校の野球部やクラブチームで軟式野球をしている選手たち約18万名から18名の精鋭を揃えた。
特に活躍が目立ったのは、大会5日目第3試合で常総学院(茨城)と対戦する敦賀気比(福井)の上加世田頼希と渡辺優斗のバッテリーだ。2人は中学時代、所属チーム(門真ビックドリームス)とU-15代表の両方でバッテリーを組んだ。
上加世田はエース格を任され、大会の山場となるチャイニーズ・タイペイ戦と韓国戦で先発。チャイニーズ・タイペイ戦では4回1安打無失点で抑えて、きっちり試合を作った。韓国戦では長打や四死球で出塁を許し、大会規定による球数制限がある中で苦しい投球にはなったが、なんとか3回途中までを無失点で凌いだ。
この大会で正捕手を務め好守が光ったのは渡辺だ。5試合中4試合マスクを被り、要所で盗塁を刺し、リードで投手の特長を引き出し、大会無失点での優勝に大きく貢献し最高殊勲選手とベストナインに選出された。
昨秋、渡辺はまだ2番手捕手だったが、上加世田は1学年上のエース・竹松明良に次ぐ登板機会が与えられ、北信越大会準決勝・決勝で好投し北信越大会優勝に貢献した。
渡辺と同じくベストナインに選出されたのが遊撃手の山下恭吾だ。大会3日目の第2試合で福岡大大濠の主力選手として堂々と甲子園の舞台に立つ。アジア選手権時から高い守備力が目立っていたが、高校入学後に打撃も急成長。昨秋は3番打者として打率.349を記録し、九州大会決勝では本塁打も放った。
その際、福岡大大濠を破り九州大会を制したのは初出場となる大崎(長崎)。このチームにはU-12代表にも選出歴のある田栗慶太郎がいる。7番打者ながら打率.364を放って九州大会優勝に貢献。一塁手としての守備力も高い。
アジア選手権でともに戦い、九州大会では直接対決を果たしたが、その再戦が甲子園で実現する。
全出場校で中京大中京(愛知)とともに最後の登場となる大会6日目第1試合では、専大松戸の大森駿太朗がいる。アジア選手権では正二塁手として堅実な守備を見せていたが、高校野球でもそれは健在。秋季大会10試合で無失策、打撃でも打率.361を記録し関東大会4強入りに貢献した。
アジア選手権では中継ぎとして要所で活躍し、現在は明豊に所属する左腕・坂本海斗はベンチ外となりそうだ。しかし、小柄ながらキレのあるストレートと変化球のコンビネーションは魅力で、ピンチでもまったく動じることがなく三振を奪えるマウンド度胸があるため今後の活躍に期待だ。
U-15アジアチャレンジマッチ(愛媛県)に出場したメンバーでは東海大菅生・福原聖矢、智辯学園・酒井優夢、大阪桐蔭・海老根優大の3人が出場予定。同大会はWBSC(世界野球ソフトボール連盟)が主催するU-15W杯が2年に1度の開催のため、それが無い隔年に行われる。2019年大会は松山市代表、フィリピン、チャイニーズ・タイペイが参加した。
東海大菅生の福原は前編でも紹介したように、中学2年時にW杯に出場しベストナインを獲得していたほどで、アジアチャレンジマッチでも高い技術力は中学硬式の精鋭の中でも大いに目立っていた。そして高校でも1年夏から出場し、このセンバツではW杯でもバッテリーを組んだ左腕・本田峻也とともに上位進出を狙う。
アジアチャレンジマッチで3試合8打数6安打を記録し最優秀選手に選出された智辯学園の酒井は、優勝した昨秋の近畿大会で背番号4を背負った。1回戦のみの出場ではあったが、秋季大会通算で12打数6安打と打率.500を記録している。
大阪桐蔭の海老根は厚い選手層の中でレギュラー獲得に至ってはいないが、秋季大会通算で3打数3安打を記録。アジアチャレンジマッチで唯一となる本塁打を記録する長打力があり、2009年の競輪賞金王である父・恵太さん譲りの身体能力で走力もあるため、虎視淡々とレギュラー獲得を狙う1人だ。
中学時代に国際大会を経験した選手たちが、高校野球でも2年生にして甲子園の土を踏む。この誰にも負けない経験値は、今後の彼らの大きな強みになるだろう。このセンバツでも1人でも多くの選手が活躍することを願う。