9月19日、「第31回 BFA アジア選手権」(中国・平潭で9月22日から28日)に出場する侍ジャパン社会人代表の直前合宿3日目が東京都の東京ガス大森グラウンドで行われた。
午前中の全体練習を終え、12時からは鷺宮製作所との大会前最後の練習試合に臨んだ。試合は社会人代表が5投手による完封リレー(タイブレークを除く)を見せれば、野手陣も2試合連続の2桁得点の強力援護。11対0で圧勝した。







先発を任された八野田龍司(SUBARU)は初回1死から連打を浴びたものの、4番、5番を連続三振に仕留め先制を許さず。続く2回は持ち味の打たせて取る投球で相手打線を封じ、2回を無失点。「捕手の福井章吾(トヨタ自動車)と初めて組んで、インコースの真っすぐを多く使ったり、変化球の使いどころがいつもと違ったりしたのでワクワクしながら投げられました」と手応えを口にした。
3回からは右のサイドスローの松田航瑠(日本製鉄室蘭シャークス)がマウンドへ。3回は2死から内角直球で見逃し三振を奪い三者凡退。4回も連打は許したものの、この日の自身のテーマでもあったストライク先行で臆せず攻め、無失点で切り抜けた。
打線は3回まで1安打と停滞ムード。それでも松田がピンチをしのいだ直後の4回裏、先頭の1番・熊田任洋(トヨタ自動車)がセンター前に弾き返し流れをつくると、2死からの2つの四死球で満塁のチャンスを迎える。ここで6番・和田佳大(トヨタ自動車)が早めのカウントから積極的に仕掛け、決勝点となる三遊間を破るタイムリー安打を放ち先制に成功した。
「勢いが出ると止められない打線が、この社会人代表の強みであるので」との川口朋保監督の言葉通り、6回に代わった相手左腕を捉える。先頭の熊田がライトフェンスを越えるソロ本塁打を放ち追加点を奪うと、7回には7番・西村進之介(ヤマハ)、8番・吉川海斗(日立製作所)、途中出場の9番・松山翔太(西部ガス)の3連打で3点目を挙げる。その後も2番・網谷圭将(ヤマハ)が追い込まれながらも、前日に続き2試合連発となるレフトへの3ラン本塁打を放って6対0と突き放した。
火のついた打線は8回にも、和田のしぶとい安打から、西村の強烈なライト線へのツーベースに、相手の守備のミスもあり7点目。ここまで不調だった西村は試合前のフリー打撃終了後に加藤徹コーチとマシンを相手にタイミングのズレを修正。「色々アドバイスをもらえているので、それを自分なりにシンプルに解釈して試しています」と状態も上向きだ。
さらに途中から左翼の守備についた本来は内野手の添田真海(日本通運)のタイムリーや、ここまで4打席連続で凡退の佐藤勇基(トヨタ自動車)に右中間を破る2点タイムリーが生まれるなど打者1巡の猛攻で5点を追加し11対0。2日連続の2桁得点とこの日も好調の打線が止まらなかった。
投手陣も5回から登板の秋山翔(三菱自動車岡崎)が走者を背負いながらも、味方の好守にも助けられ2回を無失点に抑え、7回からは前回のアジア選手権胴上げ投手の嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)がマウンドへ。軸である真っすぐを中心に相手打線を制圧し、2回を2奪三振、パーフェクトに封じた。
最終9回は左腕の岩本龍之介(JFE西日本)が2本の安打を浴びながらも、威力抜群の直球も冴えて無失点に抑える粘りをみせ、完封リレーを達成した。







さらにこの日も試合後に無死一、二塁で始まるタイブレークの練習が行われた。後攻の社会人代表は、岩本が続投し先頭打者に安打を許してしまい、無死満塁とされる。その後2点を失ったものの、スクイズを自らのグラブトスで阻止する好フィールディングも飛び出し攻撃へつなぐ。その裏の攻撃は、先頭の矢野幸耶(三菱重工East)が死球で無死満塁となり、ワイルドピッチの間に1点差に。さらに熊田のこの日4安打目となるライト前タイムリーで同点に追いつくと、1死から佐藤がセンターへ飛距離十分の犠牲フライを放ちサヨナラで大会前最後の実戦を締めくくった。
1番の熊田はこの日4安打(タイブレークを含む)、1本塁打と強力打線をけん引。大会前の実戦2試合はどちらも2桁得点と打線全体としても活発だ。川口監督も「スタメンを決めるのは非常に難しい」としながらも、「可能な限りいろんな選手に国際試合を経験してもらうことが来年以降の社会人代表の財産になる」と対戦相手を見ながら柔軟に対応する方針も示した。
2連覇を目指す社会人代表は、20日に出国し、21日の公式練習を挟んで22日のフィリピンとの開幕戦(日本時間10時30分開始予定)に臨む。
監督・選手コメント
川口朋保監督
「前半は相手投手も良くて点が取れなかったのですが、このような苦しい試合は大会でもあると思うので、先制できたことが良かったです。(攻撃の時間がとても長い)厳しいボールをしっかり見極めながら、追い込まれてからの粘りというのは各チームでやっていると思います。特にトヨタ自動車の選手は自分の役割を理解していて、他の選手もそれに触発されるように自分の役割を全員が全うできていると思います。(先発の八野田龍司投手について)彼自身がこのマウンドにしっかりと対応できるかどうかがポイントだったんですけど、今日は非常に良かったです。他の投手も持ち味を十分に発揮しましたし、嘉陽宗一郎についてはここ1番のところで使おうと思っているので照準を合わせてほしいと伝えました」
熊田任洋(トヨタ自動車)
「(6回には追加点となるホームラン)基本的に真っすぐを狙って打ちにいっているんですけど、追い込まれていたのでゾーンを広めにしっかりと浮いた球を捉えて、それが結果として現れてよかったです。(打った球は)内角高めの真っすぐでした。低めの見逃し三振OKという指示が出ているので、ベルトの高さを振っていこうと思って打ちました。(守備では一塁も守った)今まで守ったことがなかったのですが、昨日から準備はしていました。(高校、大学に続いての代表)社会人代表は自分で考えて行動していくというところが大きな違いかなと思います」
和田佳大(トヨタ自動車)
「(決勝点となるタイムリーについて)6番は上位打線がつくったチャンスで回ってくるので、打てたことがすごく良かったです。真っすぐがすごくいい投手だったので、ベンチの中でも狙おうという話をしていました。その中で浮いた変化球が来たのでいいところに飛んでくれた感じです。1打席目はダブルプレーだったので、真っすぐを待ちながらイメージを逆方向に持っていったらいい感じに打つことができました。(安定した守備について)普段から投手が弾いた打球も咄嗟にグラブトスで対応する練習もしているので、求められていることがしっかりできたかなと思います」
嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)
「都市対抗以来の実戦だったのですが、バランスも含めてやりたい投球ができたかなと思います。今は出力を出すよりは、フォームのバランスを意識して本大会に向けて調整している感じです。2つの見逃し三振はどちらもストレートです。僕の軸はストレートになるので、納得のいくものを投げられるようにこれから出力を上げていきたいです。(川口監督からは投手の中心としての役割も与えられている)元々いいピッチャーが集まっているので、その中で自分も色々コミュニケーション取りながら、いいところは盗んで、僕の経験をどんどん伝えているので、この短い期間ですけどお互いがレベルアップをしながらまた金メダルを取って、社会人野球の発展につなげたいなと思います」
佐藤勇基(トヨタ自動車)
「(高校3年のU-18W杯以来9年ぶりに侍ジャパンに選出)レベルの高い中でやれている環境は良いなと感じていますが、代表だからといって特別やることを変えることはないかなと思っています。打席の中では追い込まれてから簡単に終わるのではなくて、ちょっとでも球数を投げさせた方が相手も嫌だろうなというのは意識しています。(8回には初安打となる2点タイムリー)打った瞬間の感触はすごく良くて、この2試合で1番いい感覚でした。低めの見逃し三振OKと言っていただいていて、低めはコースを切ることができるのでありがたいです。最初から出るのか後から出るのかは置いておいて、出た場面で自分の与えられた役割をやってアジアで一番を目指して頑張りたいです」