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"世界の野球"受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~「各世代の活動」

2018年7月27日

文・写真=八木 一弥

 日本の皆様、ご無沙汰しております。
 自分が日焼けをしていることにも気づかないくらい、スリランカの仲間と毎日野球に向かわせていただいております、スリランカ野球隊員の八木です。
 とはいえ、スリランカは現在、少し暑さが落ち着いています。日本は今年も燃えるような夏がやってきていますね。コホマダ(いかがお過ごしでしょうか)?

 今回は、現在スリランカで盛り上がりを見せている女子野球と、間近に迫った国際大会へ向けたスリランカ国内の様子をお伝えできればと思います。

 さて、前回の記事の中で少しお話させていただきましたが、4月8日にスリランカ初のSri Lanka Women‘s Baseball Championshipが開催されました。

 結果はSri Lanka Armyが6-5で勝利しました。とても緊張感があり、最終回にはNavyチームが逆転のチャンスを作るも最後の1本が出ずという、観ている私たちまでドキドキするような素晴らしい試合でした。
 私の赴任から約2年が経とうとしていますが、最初にこの2チームと練習を一緒にさせていただいたときと比べて、格段に上手くなっており、さらに野球を大好きになっているなと感じました。

 今回の大会には、全日本野球協会の山田博子さんも視察に来てくださり、日本の女子野球チームの方々からいただきましたユニホームやグローブなどを、優秀選手や各チームに手渡してくださいました。


 たくさんの方々にサポートをしていただき、こうしてスリランカで新しいことが始まっていったり、選手たちの夢や目標となるような機会を作ってくださったりと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 現在スリランカには、ArmyとNavyに社会人野球チーム、そして、まだ1校だけですが3月に始まった学生チームの3つ女子野球チームがあります。少しずつ女子野球にも国内で注目が高まっており、これからがとても楽しみです。

 少し話は変わりますが、この8月9月にスリランカのU12,U18,フル代表のナショナルチームがアジア選手権やアジアンゲームスの予選ラウンドにそれぞれ出場させていただけることとなりました。8月13日~19日に台湾で開催されますU12アジア選手権、8月24日~9月1日にインドネシアで開催されますアジアンゲームへの出場権を獲得するための予選ラウンドに8月21日~23日、そして、9月3日~10日に宮崎で開催されますU18アジア選手権の3つの大会に出場します。まさかこのような素晴らしいチャンスをいただけるとは誰も予想もしておらず、選手たちにとっても素晴らしい経験になるといいなと思いながら、大会に向けて活動しています。

 6月にはU12,U18のナショナルチームのセレクションが行われました。

 これらの写真は、U12のセレクションの様子です。セレクションは、ベースランニング、キャッチボール、ノック、素振り、バッティングなどの基本的な動きを見ることがメインで行われました。私も選手たちと一緒にグランドの中で動きながらセレクションに関わらせていただきましたが、国の代表を選ぶこのセレクションに臨む選手たちの緊張感や、ワクワクしながらプレーしている雰囲気を感じました。

 特にこの国では昨年度からU12の選手が野球を始められるようになり、それからちょうど1年後にこのようなチャンスが巡ってきたため、選手たちにとって最高のタイミングだったのではないかと感じています。
 全国から集まった53名の中からは、名門校と言われる学校のみならず、新しく野球を始めた学校からも数人ナショナルチームにセレクトされており、非常に嬉しく思いました。

 翌週にはU18のセレクションも行われました。

 U18のセレクションは、基本的な内容を中心に、実践面も含めて全国から63名が参加しました。

 各セレクションを勝ち抜き、選ばれたU12の15名とU18の18名は、大会に向けて本格的に活動を開始しました。

 またインドネシアで開催されるアジアンゲームスの予選ラウンドにスリランカが出場できることが先日決まり、フル代表チームも、ジュニア代表とともに始動しました。

 球場とコーチの関係でフル代表チームとU18の代表チームは現在、一緒に活動をしています。今までこのようにフル代表とU18が一緒に活動できる機会はなかったので、どちらのチームにも収穫が多く、憧れのフル代表選手と次世代を担うU18のチームが深くかかわりながら活動している姿を見て非常に嬉しく思います。

 U12のチームは、まだまだ野球を始めたばかり。ルールをきちんと理解できていない部分もあるので、楽しみながらチームメイトの名前を覚えたり性格を知ったりといったところと並行しながら、体づくりや、野球を知ることを中心に活動をしています。

 各チームがそれぞれの大会で、素晴らしい経験をして帰ってきてくれれば、これ以上の喜びはないなと思います。
 ぜひ、スリランカチームはどうかな?と気にかけていただけると嬉しいです。

 私は今回幸運なことに、U12、U18、フル代表すべてのチームに関わらせていただいていますが、その中で特にU12やU18のチームに選手を送り出している指導者仲間から、「うちの子たちをよろしくね、しっかり練習させてください」と電話をいただいたり、直接お話していただいたりします。国の代表チームをスリランカ人コーチと一緒にサポートさせていただいていますが、その選手一人一人に託された思いや愛の大きさを強く感じながら活動しています。関わりたくても関われないコーチがたくさんいる中で、私が関わらせていただいてもいいのだろうかと感じることも多々ありますが、たくさんの人の想いを少しでも形にできるよう、選手たちにとって最高の大会になるよう、全力でサポートさせていただこうと思います。

 ここまでスリランカナショナルチームの様子についてお伝えさせていただきましたが、実はもう1つニュースがあります。9月からU18のアジア選手権に出場するスリランカチームが7月31日~8月9日まで甲子園100回記念事業として神奈川県に招待していただけることとなりました。この事業はアジア審判長である小山克仁さんをはじめ、神奈川県高校野球連盟等のたくさんの方々のご支援の下、実現した事業です。アジア選手権前にこのような経験をさせていただけるというのは、本当にありがたく、また、選手達にとって一生の財産になればいいなと思います。

 最初の投稿の際に日本とのフレンドリーシップ野球場が2012年に建設されましたと記載いたしましたが、実はその時も神奈川県の高校選抜チームがスリランカに来て、試合を行いました。その時活動されていた渡辺元隊員が大学とU18の代表チームを率いて、神奈川県で行われた2010年の世界大学野球選手権、2011年のアジア大会に出場、神奈川県出身ということもあり、当時も神奈川の高校と練習試合を行うなどの交流もあったそうです。そのご縁もあり、神奈川代表チームがスリランカで試合を行うことになりました。

 今回もまたご縁があり、こうして神奈川県と野球を通して交流させていただけるということになりました。神奈川県高校野球選抜チームや、神奈川県内の高校との試合や合同練習などもさせていただけるということで、同世代とともに野球を通して交流を深める中で、たくさんの気づきや学びがあるといいなと思っております。

 最後に、少しスリランカ国内の野球についてもお伝えできればと思います。

 前回の更新からのこの3ヶ月でクラブのトーナメントのほかにU18の全国大会も開催されました。今大会から本格的にルールが変わり、新しく投手の球数制限が導入されました。

 各チーム90球の球数制限の中で、各試合2,3人の投手が登板しながら戦っている姿を見て、今まで投げすぎて肩やひじを痛める選手が多かったり、エースひとりで試合を投げ切らないといけないことが多く、どうしてもほかの選手が育ってこないなどというケースが多々あった中で、今大会はそういった部分に関しても、いい方向に向かうきっかけになればいいなと思いました。単純に球数を制限すればいいという問題ではないですが、長く野球を続けられるように選手たちを守っていきたい、この国の野球をレベルアップさせたいという、たくさんの人たちの思いが形になったことは喜ばしいことだと思います。

 新しく結成されたチームが、今大会に初エントリーしていたり、結成後未勝利だったチームが今大会で初勝利を挙げたりといういいニュースもありました。

 今回の球数制限や国際基準に合わせた塁間の距離、最年少の大会におけるローカルルールなど、10年後に活躍できるような選手の育成プランや目標が少しずつ反映されてきていることはとても素敵なことだと感じています。

 たくさんの方々のサポートのおかげで、女子野球が発展してきたり、国際大会に出るチャンスや国際交流をするチャンスをいただいたりもできています。こういった機会を通して、たくさんの課題はありますが、少しずつ前向きに歩んでいけるといいなと思います。

 もしもこの期間に神奈川や宮崎にいらっしゃる方がおられましたら、ぜひ足を運んでいただき、選手たちに「コホマダ?(いかがお過ごしでしょうか?)」と声をかけていただけるととても嬉しく思います。

 それでは、今回はここで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

著者プロフィール

八木 一弥
1993年12月1日生
愛媛県立丹原高校を卒業後、大分大学へ進学。
2016年10月よりスリランカ硬式・軟式野球連盟に青年海外協力隊の野球隊員として配属。「世界中に野球小僧を」モットーに、スリランカの人々に野球の楽しさを伝えいくことを目指している。主な活動は学校・クラブチームへ野球の普及活動、技術指導やナショナルチームの指導。好きな言葉は「野球小僧」。

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