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"世界の野球"受け継がれるSri Lanka野球の物語~光り輝くスリランカ野球の夢~「発展していくスリランカ野球」

2018年3月19日

文・写真=八木 一弥

日本の皆さんコホマダ(お元気ですか)??
スリランカ野球隊員の八木です。

 日本では卒園・卒業の時期ですね。寒い冬があけて、新しい門出の時期、暖かい春が今年もやってくるのかなと、スリランカから日本のことを考えています。

 スリランカの4月は前回少しお話させていただいたように、新年を迎える時期です。そういう意味では、かなり暑くなるスリランカの4月も、新しいはじまりの季節かもしれません。

“はじまり”と言いますと、スリランカでは新学期が1月から始まります。子どもたちの学年が1つ上がり、それに伴い、新しく6年生になった子どもたちが、U12のチームとしてスリランカ各地で野球を始めています。学校によって環境は全然違いますが、それぞれの学校で形は違えど、楽しく野球をやっている様子を見ることができます。

 スリランカでは現在、U12・U14・U16・U18・U20という分け方で学生野球の大会が行われています。私が赴任してきた当時はU13が一番若い世代だったので、教育省との話し合いの結果、U12のチームが活動できるようになったことは本当に嬉しいことです。
また、野球だけではなく、サッカーと野球を掛け持ちしてやっている子や、バレー、陸上、クリケットはもちろんエッレという野球によく似たスポーツを経験してから野球に来ている子もいます。少しずつですが、小さい頃からいろいろなスポーツに触れるチャンスが増えていることが、すごくいいなと思います。

 今回は少しエッレというスポーツを紹介させていただきます。

 竹のバットでゴム製のボール(動画はテニスボールですが)を打って、野球のように走って得点するエッレはこの国で人気のあるスポーツの一つです。

 面白いのはボールを投げるのは打っているチームの選手で、打ちやすいところに投げて打たせるところでしょうか。この国で子どもたちの野球を見ていると、このエッレのルールが野球をやる子どもたちの考え方のベースになっている部分も多々あるなと感じます。
 例えば、エッレは走るときに2本の棒の間を走るのですが、この2本の棒を両足が越えてしまうともうそこに止まることはできません。野球のようにオーバーランをしてしまうと、どんなにアウトになるタイミングでも次の塁に行かなければならないのです。そのため、野球の時は前にいたベースに戻ってもいいの!?と聞かれることが多いです。他にも攻撃中にアウトになったバッターはそのイニングではもう打つことができなかったり、打順はなく、打つのは誰でも良いため「お前打てるから、もう1回打て!!」などというのもあったりします。

 いろいろなスポーツに触れる中で、子どもたちが野球をやっていて、楽しいという理由の一つは、“みんなが順番に打てること”だと、話してくれました。うまい子だけでは成り立たない野球という遊びの中で、日々子どもたちにはたくさんの変化が起こっています。
 野球を始めた当初、よくケンカの渦中にいてみんなからしっかりやれよと言われていた子が、大会の時に家庭の事情で来られないかもしれないという時がありました。その時、“何とかお母さん説得しようや、お前なしでどうやって勝つんや”とチームの子が話していて、素敵な仲間になってきたなぁと嬉しく思いました。

 少し話を戻しますが、特に私が巡回させていただいているチームでは、野球が出来る時間にこのエッレの道具を使って遊びます。テニスボールを下から投げて、思いっきり打って、という野球をしながら、新しい子たちは野球を楽しみながら学んだり、上級生のプレーに大喜びしたり、そんな時間を経て、どんどん野球がうまくなっているなと感じます。

 もちろん守備はこうする、投げ方はどうだということも練習しますが、まずはひたすら遊ぶことで、“これが難しい、これが楽しい”と子どもたちが感じることを大事にしています。スリランカの指導者の中には、“どうやったら子どもたちが野球を好きになってくれるか、楽しんでできるか”を考えながら子どもたちに接している指導者がたくさんいます。この素敵な環境が、もっともっと広がっていくといいなと思います。

 さて、少し話が変わりますが、U20の全国大会が2月に開催されました。この大会には全国から13チームが参加し、かなりレベルの高い試合がたくさんありました。子どもたちの試合を見ていると、練習の成果を見ることができるのもそうですが、試合を通してものすごい勢いで成長する姿を見ることができます。この子たちにとって試合がどれだけ大きく、この経験がどれだけ子どもたちを成長させているか、それを鳥肌が立つほど近くで感じられることが、本当に幸せだと感じます。

 写真の中にもありますが、同地域の結束も強く、キャンディ県のチームが試合をしているときは、このように様々なユニフォームを着た選手が一緒になって応援している姿も見ることができます。今大会はコロンボ県のNalanda Collegeが優勝しました。

 こういった大会は子どもたちにとっての晴れ舞台であると同時に、私たちにとっても大きなチャンスでもあります。大会には各チームの指導者や野球協会の関係者も多く集まるため、各関係者が時間を見つけてはいろいろな話をすることができるからです。
 しっかりとした大会運営を、という気持ちや、子どもたちの野球の発展のために動いている関係者の気持ちがこの国の野球界をどんどんいいものに変えていっていると、最近さらに強く感じます。

 彼は私の一番の友人で、この国の野球界を支える一人ですが、彼がいなければこんなにもこの国の野球は発展していないし、これからも難しいだろうと感じるほどの人です。
 今回彼を中心に、スリランカ学生野球界において歴史的なルール変更がなされました。

 最初にこの国の学生野球は5つの年齢に分かれているという話をしましたが、各世代の塁間や本塁ピッチャー間の距離の改定、球数制限(現在議論中)、U12の世代での盗塁・バント等を無しにするなど、各世代の競技レベルや成長目標をもとに、大きくルールが変更または明記されるようになりました。次回4月にU18の全国大会が開催時に、正式導入予定とのことです。

 そして、今月初めから2週間にわたってもう一つ、クラブのトーナメントも開催されました。この大会はMalinda Arumadura Trophyという大会で、スリランカ野球にとってとても大切な大会です。前回、スリランカでは内戦が2009年まで行われていたというお話をさせていただきましたが、その時期に駅で爆弾テロに巻き込まれ、野球チームのコーチと選手が亡くなってしまうという悲しい出来事がありました。この大会名にはそのコーチの名前が使われており、亡くなった方たちへの追悼の思いを込めた大会です。

 1枚だけ写真を撮らせていただきましたが、各試合前に黙とうをした後、試合が始まります。

 少し日本でもニュースになりましたが、この大会と同時期に私の任地キャンディ県でもある事件から民族間の抗争に火がついてしまい、緊急事態宣言が出るほどの事態にまで広がってしまいました。それにより、一時、野球はおろか外に出ることもままならないほどの状況に陥りました。現在は通常通り学校も始まり、何が日常かはわかりませんが、元の生活に戻りつつあります。
 大会や今回のことを通して、当たり前とは何なのかということをすごく考えました。またそれによって、野球のことをこんなに考えたり、大切な友人や子どもたちとグラウンドで会えたりできるということが、本当に幸せなことだと再確認しました。

 今大会には初出場のチームがあったり、公式戦で見事チーム初勝利を挙げたAir Forceチームがそのまま優勝したりと、すごく勢いのある大会でした。

 昨年BFAアジア選手権に初出場してからたくさんのことを学び、自分たちに足りない部分を現場と野球協会が一緒になって良くしていきたいという雰囲気が感じられることが本当に素敵だと思います。スピードアップ、選手の態度、審判団の動き方、時間管理等々、常にいろんなところで、“こうしないと、ああしないと”と会話が飛び交っており、すごくポジティブな雰囲気が感じられることに、ワクワクしています。

 今大会でベスト4に入ったチームは、昨年の大会で勝ち残ったシードの4チームと、大学の大会での優勝・準優勝の2チームとともに、今月末から開催されるSri Lanka Baseball Championshipに出場します。

 今大会で出た課題をもとにどのように大会が運営されていくかという部分も含めて、とても楽しみです。また、4月には初の女子野球大会も開催されます。まだスリランカ国内ではArmyとNavyの2チームしかありませんが初の公式戦ということで、かなりワクワクする大会となりそうです。

 少しずつ発展していくスリランカ野球。それを支えていく人たちと一緒になって仕事ができることは本当に幸せだと感じます。スリランカの方々がよく口にする“スリランカ野球を発展させるなら○○はこうしていかないと”という言葉が一つ一つ着実に形になっているように感じます。私も、たくさんの変化を見逃さないように、一緒に頑張っていけるといいなと感じています。

それでは、今回はここで終わらせていただきます。
ありがとうございました。

著者プロフィール

八木 一弥
1993年12月1日生
愛媛県立丹原高校を卒業後、大分大学へ進学。
2016年10月よりスリランカ硬式・軟式野球連盟に青年海外協力隊の野球隊員として配属。「世界中に野球小僧を」モットーに、スリランカの人々に野球の楽しさを伝えいくことを目指している。主な活動は学校・クラブチームへ野球の普及活動、技術指導やナショナルチームの指導。好きな言葉は「野球小僧」。

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