文・写真=八木 一弥
日本の皆様コホマダ(いかがお過ごしでしょうか)??
スリランカは雨季に入り、午前中は強い日差しが、午後は強い雨がという毎日が続いています。
さて、スリランカ野球についてお伝えさせていただくのは、はやいもので8回目、最終回となりました。最終回も少し、スリランカ野球のことをお話させていただき、このコラムを終わらせていただこうと思います。
前回、各世代の活躍についてお伝えさせていただきましたが、8月・9月に開催された3つのアジア大会、そして神奈川県の同世代との交流事業にそれぞれのチームが参加しました。どのチームも様々なことを感じ、たくさんの経験をして帰ってきたんだなということを、彼らの嬉しい顔や悔しい顔から私も感じることができました。
この写真は7月31日~8月9日の神奈川県交流事業の様子です。
神奈川選抜チームとの交流戦や合同練習をさせていただきました。神奈川選抜チームの選手たちが目の前で素晴らしいお手本を見せてくださり、「本当にバッティングはどんどん遠くに強く飛ばしていくんだね」、「彼らは守備はこうやってたよ」とスリランカの選手たちは目をキラキラさせながら私に話してくれました。また、野球だけでなく日本の文化に触れて、普段スリランカではないようなことに直面して、「時間を守ること」「感謝をきちんと伝えること」など驚いたこと、素敵だと感じたことを私に話してくれました。実際に日本に来て素晴らしい野球場で、素晴らしいお手本を自分たちの目で見て、触れられたということが、私が口で説明してやって見せることの何倍も、彼らの野球に大きな変化をもたらしてくれました。また、今回の神奈川遠征では、神奈川県高校野球連盟様から、グローブや野球道具を贈呈していただきました。また様々なサポーターの方々からも野球道具をいただきました。
普段顔の見えない方々の支援で、私たちは野球をさせていただいていますが、たくさんの方々がスリランカ野球の発展を願い、そして、どれだけ思いを込めてサポートしてくださっていたかを、目の当たりにして感じることができたという経験がはすごく貴重でした。帰国後も野球への取り組みはもちろんですが、道具を大切にする意識が格段に高まってきたことが本当に嬉しく思いました。
その甲斐もあり、宮崎でのアジア大会でも素晴らしい活躍を見せてくれました。まだまだ課題はたくさんありますが、野球を思いっきり楽しんで帰ってきてくれたこと、そしてたくさん勉強したことを本番で発揮する心の強さが素晴らしいなと思います。
(引用:スリランカ野球協会の公式Facebookページより)
またU12のチームも台湾で行われたアジア大会に出場し、様々なことを感じて帰ってきました。以前に書かせていただきましたが、U12の世代の選手たちが国内大会のカテゴリーに含まれるようになったのは最近で、この2年間スリランカの仲間たちと育成や普及に力を入れてきた年代の選手たちでした。U12の世代はまだ勝敗がつく大会には参加できないという決まりがあるので、難しいことも多かったですが、何とか初のU12代表チームがアジア大会に出場できたことは大変嬉しく感慨深かったです。
スリランカのこの世代の選手たちは、他の国の選手たちに比べて体も小さく、たくさんのことに驚いたようですが、見たこともないほど速いボールを投げたり、強い打球でホームランにする同世代の選手たちとの交流で、野球への意識はもちろん、家族と離れて国際大会を戦ったことで、人間としてもかなりたくましく成長して帰ってきてくれました。
12歳や18歳で国の代表として国際大会に出場するという本当に大きな仕事を成し遂げた選手たちを誇りに思いますし、心から尊敬しています。
また、個人賞もたくさんの方々のサポートでいただくことができ、選手たちの自信に繋がりさらに楽しんで野球を続けてくれるといいなと思います。
これからのスリランカ野球の未来を背負っていく世代でもある彼らが、たくさんの方々に支えていただいていること、野球はこんなにも楽しいんだということを体感してくれたことが、スリランカ野球をさらに発展させる原動力になると信じています。
私の青年海外協力隊としての活動もこの10月で2年となり、帰国することとなります。
スリランカに来てから本当にたくさんの人に出会い、様々な思いに触れながら野球に携わらせていただけたことが本当に幸せでした。
赴任当初、私の任地である中部州・北中部州あわせて8校だった野球部が、現在は中部州・北中部州あわせて14校にまで増えました。また南部州でも新しく2校始まりました。ずっと私のそばにいて、一緒にスリランカ野球をよくしたいと願い走り続けてきた仲間がいたからこそ、私もその場に立ち会わせていただくことができました。
以前にもご紹介したかもしれませんが、彼は私の一番の友人であり、スリランカ野球の発展には欠かせない人物の一人です。彼がいたから、私はこのスリランカでたくさんの仲間ができ、無事に2年間を終えることができるのだと思っています。
彼は新しい学校を始めるとき、いつも私に話をしてくれ、一緒にたくさんの場所に行きました。初の学生女子野球チームの発足や学生野球の球数制限や塁間距離を国際規格に合わせること、最年少世代は思いっきり打ってストライクを投げて純粋に野球を楽しむために盗塁なしでの試合を運営することなど、ルールの変更を可能にしてくれたのも彼です。
彼の尽力があり、これから、第2、第3の女子学生野球チームが発足する予定になっています。
私自身は、スリランカ野球の変化の年にここに運よく立ち会わせていただけて、その変化を間近で見させていただきました。スリランカ野球の発展に寄与できるほどの経験も知識もなかった私を仲間に迎えてくれて、その変化の真ん中にいさせてくれたスリランカの仲間たちに心から感謝しています。
選手たちはよく、どこに行った、あのときはどうだったという、一生の宝物である経験や思い出話をきらきらした顔でしてくれます。そんな話を何年も何回もできる仲間が野球を通してできたこと。今もそんな仲間と関わりながら生きていること。そんなことが野球を通して得た一番の宝物だと思います。私も野球を通して、一生付き合って行きたい仲間、一生忘れられない試合、プレー、日々、そんなものが今の自分を支えているのかもしれません。
もちろん野球が全てではありませんが、野球は人生の縮図だと思っていますし、私たちを映す鏡だと思っています。
これは私が尊敬する方の言葉ですが、野球をやっている中で“人生をかえる一球”に必ず出会うと教えていただきました。思い起こせば私もそうだったなと思います。この2年間一緒に野球に向き合っていく中で、そんな一球に出会えた選手もまだ出会えていない選手もいると思います。私の2年間はここで終わりますが、これからも一緒に野球を楽しめる仲間でいたいと願っています。いつか彼らも“人生を変える一球”に出会える事を祈って…
来年の3月にはスリランカの野球場で初の国際大会である西アジアカップが開催されることになりました。たくさんの方々に支えていただきながら、一つ一つ夢に見ていたことが実現していっています。
Sri Lankaという国名には光り輝く島という意味があるそうです。インド洋に浮かぶここスリランカで光り輝くたくさんの夢が、これからも少しずつかなっていくことを願って、ここで終わらせていただこうと思います。ここまで2002年から先代のJICAボランティアの方々が繋いで来られたスリランカ野球の物語の中に私も関わらせていただけたことが、本当に幸せでした。
この1年半の間お付き合いくださり本当にありがとうございました。
また、たくさんの方々に支えていただきながら2年間の活動を無事に終えられたことに心から感謝申し上げます。
- 【第8回】2018年10月17日 「2年間の活動を終えて」
- 【第7回】2018年7月27日 「各世代の活動」
- 【第6回】2018年3月19日 「発展していくスリランカ野球」
- 【第5回】2018年1月19日 「スリランカ野球の現状」
- 【第4回】2017年11月7日 「第28回 BFA アジア選手権」
- 【第3回】2017年9月13日 「スリランカ野球を支える人たち」
- 【第2回】2017年6月12日 「スリランカ野球の原点」
- 【第1回】2017年4月7日 「スリランカ野球の歴史」
著者プロフィール
八木 一弥
1993年12月1日生
愛媛県立丹原高校を卒業後、大分大学へ進学。
2016年10月よりスリランカ硬式・軟式野球連盟に青年海外協力隊の野球隊員として配属。「世界中に野球小僧を」モットーに、スリランカの人々に野球の楽しさを伝えいくことを目指している。主な活動は学校・クラブチームへ野球の普及活動、技術指導やナショナルチームの指導。好きな言葉は「野球小僧」。
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