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試合レポート

3投手による完封リレーや向山基生の決勝打で2大会ぶり20回目のアジア選手権制覇

2023年12月10日

 12月10日、「第30回 BFA アジア選手権」(12月3日から台湾・台北、台中)の決勝戦が台北ドームで行われ、侍ジャパン社会人代表がトッププロ選手を擁するチャイニーズ・タイペイを1対0で下し、2大会ぶり20回目の優勝を果たした。

 21,013人の観衆が詰めかけた完全アウェイの状況で、チーム一丸となって何度もピンチを凌いだ。
 開幕戦に続く先発に抜てきされた加藤三範(ENEOS)は先頭打者にいきなり二塁打を打たれるが後続をライトフライ、「渕上佳輝さん(トヨタ自動車)に教えてもらった」というチェンジアップによる空振り三振、センターフライに抑えてピンチを脱した。2回も2死から安打を打たれたが、続く打者をセンターフライに抑えた。
 最大のピンチは3回、2ストライクと追い込んでからの死球、これまで堅守を見せていた三塁手・中川拓紀(Honda鈴鹿)の失策で2死ながら一、二塁のピンチで相手4番の廖健富(台湾・楽天)を迎えた。だが加藤は今季の台湾プロ野球打点王にも怯むことなく向かっていくと、スライダーでライトフライに打ち取り、三たびピンチを脱した。

 加藤の粘りの投球に打線が応えたのは、その裏。相手先発の台湾シリーズMVP・徐若熙(味全)に対し、前日の守備の際に負傷した逢澤崚介(トヨタ自動車)に代わりスタメン出場した橋本典之(大阪ガス)が1死からセンター前安打で出塁。1番にかえり矢野幸耶(三菱重工East)が放った打球は併殺かと思われたが、矢野の俊足に焦ったのか、相手二塁手が一塁へ悪送球し矢野が二塁へと進んだ。
 このチャンスで、今大会通して「攻撃的2番」の役割を与えられてきた向山基生(NTT東日本)が「カウント的に変化球だと思い、狙い通り打てました」とセンター前に運んで矢野が生還。値千金の先制点を挙げた。

 加藤は4回と5回も走者を出すが、4回は矢野と中村迅(NTT東日本)の二遊間による華麗な連係での併殺、5回はオープニングラウンド最終戦以来のスタメン起用となった捕手・辻本勇樹(NTT西日本)が相手の二盗を刺すなど守備陣も加藤を盛り立て無失点。6回は「加藤の成長を感じました」と川口朋保監督も目を細めたように、2三振を含む三者凡退に抑えて加藤はマウンドを降りた。
 7回からはスーパーラウンドのチャイニーズ・タイペイ戦でも延長タイブレークを含む2イニングを無失点に抑えた渕上が登板。7回を三者凡退に抑えると、8回は1死から安打を許すが、続く打者のセーフティーバントを試みた飛球を冷静に処理して併殺を完成させ、同点を許さず。
 最終回はチャイニーズ・タイペイ戦で先発し8イニングを無失点に抑えた嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)がマウンドへ。先頭打者を内外野間にポトリと落ちる安打で出したが、「嫌な感じはしませんでした」と、今夏の都市対抗で橋戸賞(最優秀選手)にも輝いた社会人野球最強右腕は動じず。続く打者を併殺に抑えると、最後は2ストライクから粘る打者にストレート勝負を続け、見逃し三振。嘉陽は両手を掲げて、途中出場の捕手・南木寿也(JR北海道硬式野球クラブ)と抱き合うと、ベンチから一斉に出てきた選手たちの歓喜の輪の中心に吸い込まれた。

 10月の第19回アジア競技大会(中国・杭州)では悔しい銅メダルに終わったが、新たに就任した川口監督のもとで社会人野球の強さや魅力を最大限に発揮。最大目標とする第20回アジア競技大会(2026年・愛知県)の金メダル獲得に向けて、これ以上ない弾みとなる戴冠となった。

監督・選手コメント

川口朋保監督

「チーム一丸となって、コントロールできることをやっていこうと話していて、それを体現してくれた選手たちに感謝です。得点は1点のみでしたが、1球1球、投手も野手もチャレンジしてくれました。来年はU-23ワールドカップ(9月に中国・紹興市)があるので、新しいメンバーになりますが、この優勝を上手く繋げていきたいです」

向山基生(NTT東日本)

「あまり優勝の経験が無いのでめちゃくちゃ嬉しいです。こんなに嬉しいものだとは思いませんでした。アジア競技大会を経験したメンバーで引っ張ることができましたし、若い選手たちものびのびとプレーしてくれました。3年後のアジア競技大会でリベンジして金メダルが獲れるよう、これからも選ばれ続けていきたいです」

嘉陽宗一郎(トヨタ自動車)

「中1日で肘などに疲れはありましたが、全員の気持ちを背負って、思いきりストライクゾーンに投げ込みました。試合前から最終回に登板と言われていたので、出せる力を出すことができました。(最後のストレート勝負)打たれても後悔の無い球をと思いました。胴上げ投手は初めて。自然とガッツポーズが出ました」

加藤三範(ENEOS)

「緊張しましたが野手のみんなが助けてくれましたし、特に捕手の辻本さんが盗塁も刺して、ベストな配球もしてくれたので感謝です。初回のピンチで三振を奪えたことが大きかったです。嘉陽さんほどの球速は無いので、球の強さとコントロールを意識しました。被安打も多かったので、レベルを2段階3段階と上げていきたいです」

第30回 BFA アジア選手権

大会概要出場選手

大会期間

2023年12月3日~12月10日

オープニングラウンド(グループB)
12月4日(月)19:30 日本 14 - 0 パキスタン
12月5日(火)19:30 タイ 0 - 16 日本
12月6日(水)19:30 日本 9 - 1 フィリピン
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)

スーパーラウンド
12月8日(金)19:30 チャイニーズ・タイペイ 0 - 1 日本
12月9日(土)13:30 日本 5 - 2 韓国
※開始時刻は日本時間(台湾:時差-1時間)

決勝
12月10日(日)19:30 日本 1 - 0 チャイニーズ・タイペイ

開催地

台湾(台北・台中)

出場する国と地域

グループA
チャイニーズ・タイペイ、韓国、香港、パレスチナ
グループB
日本、フィリピン、パキスタン、タイ

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