文・写真=大庭良介(JICA青年海外協力隊)
Alii!アリ―(こんにちは)!!青年海外協力隊としてパラオ共和国でパラオオリンピック協会・野球連盟に所属し野球の代表コーチを務めております大庭良介(オオバリョウスケ)と申します。
パラオは赤道よりも北に位置し北太平洋に浮かぶ人口約2万人、島の面積は日本の屋久島とほぼ同じ大きさという大変小さな島国です。人口がこれだけ少ないこともあり、ほとんどの人が親戚同士なので「あの人を知ってる?」という話になると、たいてい「My cousin(私のいとこだよ)」という返事が返ってくるほど、人と人との繋がりが強いです。
また、日本と密接な関係を持ち、歴史的にも日本とはとてもかかわりのある国です。野球に関しても日本人がここパラオに伝えました。その為タイトルにもありますが、パラオでは野球はBASEBALLではなく“ヤキュウ”と呼ばれています。その話は次回以降のコラムで詳しく掲載させていただきたいと思います。
私は2015年7月にこの国に赴任し、野球の普及活動に従事して1年以上が経過しました。赴任した当初から今でも変わらなく思うことが「この国の野球はある程度のレベルまで発展し、経験もある程度蓄積されているということ」「人口約2万人の小国にも拘わらず、野球が人気スポーツの一つであるということ」です。
また、来た当初に一番に驚いたのは照明付き球場(アサヒ球場)があること。また野球道具も練習や試合をする分には申し分のない種類がすでに備わっていたこと、更には、韓国やグアム等への遠征も実施しており野球のスキルを上げるには十分な環境が整っていました。
しかし、パラオにおける野球は、中途半端な草野球止まりのレベルで止まっているのが現状です。仲間内でやるミスをしても何をしても許される野球ほど簡単で楽しいものはないのかもしれません。エラーをしても、いけないプレーをしても「ダイジョウブ、ダイジョウブ」(日本語の大丈夫と同意味のパラオ語)と試合中にその言葉が飛び交います。元々優しい国民性ということもあり、互いに厳しいことを言いあうことに抵抗があるようです。また、せっかくの照明付きグラウンドも練習後や試合後にグラウンド整備をしないですぐに帰り、毎朝球場を訪れる度にベンチ、スタンドにゴミが散乱しています。例え私が「整備しよう」「ゴミを拾おう」と声をかけても最初はわかったと言うものの1分もしないうちにどこかに消えてしまいます。もちろんグラウンド、ベンチ、スタンドは汚いままです。
パラオの野球は何故この汚い球場の状態で普通にしていられるのだろうか。何故、せっかく野球をしているのにも関わらず練習も整備もしない、ただ試合だけをするのだろうか。そこが変わらない限りこれからパラオの野球が変わっていくこともないだろうが、そもそもパラオの人たちは変わっていこうという気があるのだろうか、現地の人達は、今の野球で十分満足しているのかもしれない。日本の当たり前であったグランド整備や掃除がここでは違う・・・・ただ楽しむだけの野球には必要ないのかもしれない。活動を始めて1年以上が経った今も自問自答は続き、今まで当たり前のようにしていた整備、掃除といった綺麗な環境で練習することは、当たり前じゃないことにも気づかされました。整備や掃除をしない方がここでは正しいのではと思うこともありました。
これからのコラムでは、これらの問題に対してどのように解決すべく活動を進めていったのか、パラオ野球が今日に至るまでの経緯と共にお伝えしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。またこれからどうぞよろしくお願いいたします。
- 【第8回】2017年9月15日 「二年間」
- 【第7回】2017年6月23日 「高知ファイティングドッグス来訪」
- 【第6回】2017年5月18日 「パラオ野球新世代へ」
- 【第5回】2017年4月6日 「少しの気付き」
- 【第4回】2017年2月25日 「グラウンドに敬意を」
- 【第3回】2017年2月6日 「野球衰退の要因」
- 【第2回】2016年12月26日 「ヤキュウの歴史」
- 【第1回】2016年11月15日 「パラオ“ヤキュウ”事情」
著者プロフィール
- 大庭 良介
- 1992年9月21日生
湘南工科大学附属高校-日本体育大学
2015年7月よりパラオオリンピック協会・パラオ野球連盟に青年海外協力隊 野球隊員として配属。委任統治していた時代に日本人が伝えたヤキュウの再復興、ヤキュウを通じた人間力の向上を目指し、多くの事を現地人、環境から学び経験している。
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