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"世界の野球"パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂「高知ファイティングドッグス来訪」

2017年6月23日

文・写真=大庭良介(JICA青年海外協力隊)

 昨年12月5日から12月8日の四日間、独立リーグ四国アイランドリーグプラスの高知ファイティングドッグスがパラオへ来られました。(以下高知FD)。
 高知FDからは読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズで活躍し名球会入りされた駒田徳広監督に加え、銀二郎選手、大城優太選手、岡部峻太選手、サンフォ・ラシィナ選手が来訪し、小学校での野球教室や代表チームとの交流試合を行いました。

 巡回予定の小学校に教育省の体育巡回指導員と一緒に告知して周り、「プロ野球選手がここに来るぞ」というと、子供達は「いつだ?どこでやるんだ?」と待ちきれない様子でした。小学校の授業中に行ったため、全生徒に指導していただくことはできませんでしたが、初めて目にするプロ野球選手の姿や行動一つ一つが、指導を受けた小学生達にとってかけがえのない経験になった事と思います。
 野球教室が終わった後「良介、どうやったらプロ野球選手になれる?」と聞いてくる子もいたほどです。パラオ人からプロ野球選手は出たことはありません。テレビでMLBを見てプロ選手という存在は知っていますが、自分達が職業野球選手として活躍するというイメージはわかないのだと思います。しかし、今回目の前に選手達がいて直接指導してもらったことで、野球選手になるにはどうしたらいいのだろう?と感じたのだと思います。それだけでも大きな成果だったと思います。

 また、高知FDの銀二郎選手は小学生時代をパラオで過ごされています。同じ時間を同じ場所で過ごしていた選手がプロになれたことは、子供達にとってプロ野球選手という存在を更に身近なものに感じさせたのではないかと感じます。

 三つの小学校を周りましたが、野球教室はどの学校でも大好評でした。ペリリュー島にあるペリリュー小学校では、離島ということもあり私自身初めて野球指導を行う場所で、尚且つ、駒田監督の通訳も担当させて頂きましたので緊張がありました。しかし、その緊張や不安を払拭してくれたのは子供達でした。ペリリュー小学校に着くと既に子供達がグラウンドで元気に走り回っていて、その姿を見ると「一緒に楽しもう!」という思いが強くなりました。

 いざ野球指導が始まってからも、子供達は駒田監督の掛け声のもと一生懸命についていきます。私の拙い通訳で技術的なこと一つ一つを理解できていたかどうかわかりませんが、何よりも笑顔で楽しんでくれていたのが一番でした。時間を過ぎてそろそろ終わろうかとしていた時「もう少しできないか?」と体育の先生から依頼があり、駒田監督もそれを快く引き受けていただけました。ペリリュー小学校の体育の先生は野球を経験していた方、で先生も一緒に駒田監督の指導から何かを学び取ろうとしていた姿勢にとても良い印象を受けました。先生も子供達も駒田監督から受けたこの経験は、生涯忘れられない物になった事と思います。

 小学校の巡回指導に加え、最終日に、パラオ代表チーム対高知FD with JAPALの混成チームで交流試合を行いました。私が気になっていたのは、FDの来訪を心待ちにしていた子供達と比べて、代表チームである大人達はあまり乗り気ではなかったことです。サンクスギビングデイ(感謝祭の日)を過ぎてから年末に近づくにつれてパラオはもう既にお休みモードに入ってしまうため、高知FDとの交流試合を前に代表チームの練習をしようと声をかけても練習に来たのは、毎回1,2人。それも半強制的に連れてくる有様でした。
 口酸っぱく伝えた結果、試合当日には、選手はなんとか時間通りにグランドに来たので安心しましたが、そんな状態で試合をする高知FDの選手への申し訳なさと代表チームを運営する連盟と私の連携の不備がこのような形で露見してしまったのかなと感じました。

 試合に目を向ければ、駒田監督も4番ファーストとして出場して下さり、会場に来ていた人達を沸かせました。また高知FD岡部峻太投手の投げるストレートにパラオチームは誰一人としてかすりもしませんでした。おそらく今まで見たことないであろう球威とキレにパラオの選手達みなが驚いたものと思います。大洋州諸国では、130km/hレベルの投手はほとんどいませんので、140km/h近い球をコンスタントに投げ込む岡部投手の球を打席から見ることができたのは、選手たちにとって貴重な経験な経験になった事と思います。

 今回の高知FD来訪がパラオの選手達と子供達に刺激を与えたことは間違いないと思います。この刺激をどのよう活かしていくかが大切です。以前のコラムで記しましたが、現在指導しているガルベエズチームの選手の何名かが交流試合で岡部投手の球をスタンドから見ていました。ガルベエズの投手の子は「岡部投手のような球を投げるんだ」と練習しています。
 このような刺激が彼らの成長につながっていくことと思います。私がパラオで活動したことがきっかけとなって子供達に刺激を与えることができたのであれば、指導者冥利につきます。ご来訪頂きましたFDの駒田監督並びに選手の皆さんに、改めて感謝の意を示させて頂きます。有難うございました。

著者プロフィール
大庭 良介
1992年9月21日生
湘南工科大学附属高校-日本体育大学
2015年7月よりパラオオリンピック協会・パラオ野球連盟に青年海外協力隊 野球隊員として配属。委任統治していた時代に日本人が伝えたヤキュウの再復興、ヤキュウを通じた人間力の向上を目指し、多くの事を現地人、環境から学び経験している。

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