チームメートの千賀と同期入団で「育成選手」という同じキャリアを歩んできた25歳。千賀は2年目の4月に支配下選手登録されたのに対して、甲斐は4年目(2014年)に支配下登録された。
2015、16年はともに出場は1試合にとどまったが、13試合に出場した16年にプロ初安打を記録。そして、入団7年目となる昨年、ついにレギュラーを奪取する。自己最多103試合に出場(打率.232、5本塁打、18打点)して、2年ぶりの日本一に貢献。育成出身捕手では初となるベストナインとゴールデングラブ賞を受賞している。
昨年11月の「ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017」に、オーバーエイジ枠でトップチーム初選出(参加資格はU-24[1993年1月1日以降生まれ]または入団3年目以内)。パ・リーグを代表する捕手として認められた証だ。稲葉監督から高い評価を得たのも、キャッチャーとして生命線となる「強肩」にある。
二塁送球は一般的に1.9秒台でも「速い」とされるが、甲斐はアベレージで1.8秒台を記録する。さらに最速では1.7秒台と、正確なスローイングで投手、野手からの信頼が厚い。昨季の盗塁阻止率はリーグ3位の.324。1位はロッテ・田村龍弘337、2位は西武・炭谷銀仁朗の.327と僅差。守備率ではリーグトップの.999(失策1)と安心感は抜群だ。
初の国際舞台となったアジアチャンピオンシップでは持ち味を存分に発揮した。韓国との一戦では先発出場を果たし、7回裏に代打を告げられるまで7イニングを守った。1対0の4回に4失点と韓国に逆転を許すも、以降の後続2投手は無失点に抑える好リードを見せた(延長10回タイブレークの末、侍ジャパンが8対7で勝利)。
優勝を決めた韓国との決勝は1試合、フルでマスクをかぶり、先発・田口麗斗(巨人)を7回3安打無失点。8回は石崎剛(阪神)、9回は山﨑康晃(DeNA)を無失点で導き、アジア王者の歓喜の瞬間を、マウンド付近で迎えている。出場2試合で相手チームの盗塁企図はなく、その強肩が、相手に無言のプレッシャーを与えたと評価できるか。
「堅守」ばかりに目がいきがちだが、打撃もバットを短く持ち、しぶとさが売り。前述のように、昨年はレギュラーシーズンで4本塁打を放つなど、パンチ力も秘めている。ついに、フル代表選出に興奮を隠し切れない。
「代表に選ばれたと聞いて、とてもびっくりしています。球界を代表する選手とプレーさせていただける機会なので、何か吸収し、勉強して、貢献できるように精いっぱい頑張りたいです」
過去のWBCでは第1回で里崎智也(当時・ロッテ)、第2回で城島健司(当時・マリナーズ)、第3回で阿部慎之助(現・巨人)、第4回では小林誠司(現・巨人)が正捕手の座を任されてきた。東京開催の2年後のオリンピックでは170センチ75キロの小兵がマスクをかぶるのか、今回のオーストラリア戦が「試金石」となりそうだ。