U-18対戦国の野球/日系移民が根付かせた野球文化。近年はブラジル人も代表の中心
2015年8月19日
写真=宮野敦子
1981年に第1回大会が実施されたU18ベースボール・ワールドカップ(W杯)は今夏、日本で初開催される。出場する12の国と地域が2グループに振り分けられる第1ラウンドの上位3チームが、スーパー・ラウンドへ進み、6チーム総当たりによるリーグ戦の上位2チームで決勝を戦う仕組み。Aグループに入った日本の初戦の相手は、昨年のU18パンアメリカン野球選手権で5位となり、今大会の出場権を得たブラジルだ。ブラジルと言えば、2013年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第1ラウンドで、日本と熱戦を繰り広げたことは記憶に新しい。
ブラジル野球を語る上で欠かせないのが、日系移民の存在である。1908年に第1回ブラジル移民船・笠戸丸が神戸港を出港して以後、戦前だけでも18万3,000人が渡航したと言われ、戦後も1973年に移民船が廃止されるまで多くの日本人が海を渡った。そして、農業や経済など様々な分野で活躍し、日系移民のブラジル国内での貢献度は高く評価されている。そういった日系移民コミュニティの中から広がったもののひとつが野球なのだ。サッカー王国ブラジルにおいて野球の認知度はなかなか上がらなかったものの、1995年には三菱自動車川崎(のちの三菱ふそう川崎=2008年限りで活動休止)でプレーしていた日系3世の玉木重雄がドラフト3位で広島へ入団し、日系ブラジル人初のプロ野球選手が誕生。その後はブラジルから日本の高校や大学、社会人へ進み、ドラフト会議で指名されてプロ入りする選手が増えていった。また、メジャー・リーグ(MLB)も近年のブラジル球界に注目。バリー・ラーキン(2013WBCブラジル代表監督=元シンシナティ・レッズ)を中心にMLB派遣のコーチが指導するエリートキャンプは、毎年ブラジルで開催され、南米から将来有望な50~60名の選手が参加する。ブラジルの野球少年たちにとって、MLBの存在自体が身近なものになっており、マイナー契約を結ぶ選手も年々増加しているのだ。
こういったブラジル野球の発展に大きく貢献してきたのが、『ヤクルト・ベースボール・アカデミー』である。ブラジル野球連盟が現地法人ブラジル・ヤクルト商工株式会社の出資によって、2000年2月サンパウロ州イビウナ市に開校。セレクションに合格した13~18歳の選手が寮生活をしながら、午前中は近隣の学校で学び、午後はアカデミーで練習を行なっている。日本やアメリカでプレーしているブラジル人選手の多くがここの卒業生であり、今回のU18メンバーもほぼアカデミー在籍者だ。
今大会で指揮を執るのは、本職は産婦人科医というルイス・ホウラ監督。選手として目立った実績はないものの、息子がアカデミー在籍中の熱心な野球一家である。また、投手コーチは、2003年夏に羽黒高(山形県)を初の甲子園出場へ導き、白鷗大で主将を務めたチアゴ・カルデーラ。2013WBCでのコーチ経験があり、さらに日本の食事や気候などを熟知しているだけに、今大会ではスタッフの中心となって手腕を発揮するだろう。
注目選手は、16歳のガブリエル・マシエル外野手。昨年メキシコで行なわれたU15W杯では三番センターで全試合にスタメン出場し、俊足強肩の将来性豊かな好選手だ。17歳のイーゴル・ジャヌアリオ内野手は右投げ左打ちの強打者で、フリーバッティングでは場外弾を連発するほどのパワーを持つ。主にファーストや指名打者での出場が多いが、リリーフ登板することもあり、2m近い長身から繰り出すボールは威力がある。さらに、日本在住の相生学院高(兵庫県)2年のチアゴ柳沼投手もメンバー入りする予定だ。
元ブラジル代表監督で、現在は国際野球連盟(IBAF)のテクニカル・コミッショナーを務める佐藤允禧(みつよし)ヤクルト・ベースボール・アカデミー校長は、今大会についてこう話す。
「日本との初戦が非常に大事なポイントになりますね。序盤に1点でも先制できれば、試合の流れは変わるのではないかと思います。ただ、日本とアメリカは他チームに比べてズバ抜けているので、まずは第1ラウンド突破がチームの目標です。ブラジルでは毎年、春・夏の甲子園の準決勝と決勝がテレビ放映されているので、子供たちにとっても甲子園は憧れの場所。最近ではMLBを目指す選手も増えてきましたが、日本でプレーしたい子もたくさんいるので、訪日をとても楽しみにしているんです」
以前は、日系人が取り組むスポーツだと思われがちだった野球だが、徐々にブラジル人にも浸透し、現在は体格に恵まれた非日系人選手もナショナルチームで数多く活躍するようになった。日伯の文化が融合したブラジル野球。まずは、初戦の戦いに注目したい。
侍ジャパンU-18代表 2015
U-18代表 選手一覧
U-18代表 選手紹介
U-18代表 対戦国紹介
第27回 WBSC U-18 ベースボールワールドカップ
- 8月28日(金)18:00 舞洲BS 日本 14 - 0 ブラジル スコア詳細 試合レポート
- 8月29日(土)17:30 舞洲BS 日本 3 - 0 アメリカ スコア詳細 試合レポート
- 8月30日(日)17:30 舞洲BS オーストラリア 1 - 10 日本 スコア詳細 試合レポート
- 8月31日(月)17:30 舞洲BS チェコ 0 - 15 日本 スコア詳細 試合レポート
- 9月1日(火)17:30 舞洲BS 日本 12 - 0 メキシコ スコア詳細 試合レポート
- 9月3日(木)19:20 舞洲BS 日本 5 - 2 カナダ スコア詳細 試合レポート
- 9月4日(金)18:00 甲子園 日本 12 - 0 韓国 スコア詳細 試合レポート
- 9月5日(土)13:00 甲子園 日本 9 - 0 キューバ スコア詳細 試合レポート
- 9月6日(日)18:00 甲子園 日本 1 - 2 アメリカ スコア詳細 試合レポート
壮行試合
開催概要 チケット 放送予定
8月26日(水)18:00 侍ジャパンU-18(高校)代表 2 - 9 侍ジャパン大学代表
阪神甲子園球場