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"世界の野球"アジア選手権・日本人監督の挑戦「外国人監督の苦悩〜孤独との戦い〜」

2015年9月14日

文・写真=色川冬馬

 予想していたことが起きた。未だに、40度を超える灼熱の太陽が選手の集中力と体力を奪っていくパキスタン・ラホール。合宿も終盤を迎え、選手の疲れがピークに達するこの時期。経験したことのないタフな合宿に音をあげる者、怪我をする者、選手の行き場のない不安・不満が溜まる時期である。こんな時の標的は、外国人監督だ。

 パキスタンでは、年齢と役職がモノを言う縦社会。皆、調子が良ければ若い監督をリスペクトするが、都合が悪くなると、私より年齢の上の者、または私と同等の立場の人間をうまく利用し、文句を言いはじめる。始まって数週間の関係に、表向きのリスペクトはあっても、真のリスペクトなどないのだ。未だに、選手がミスをすると「なぜ」ミスをしたかを考えさせる前に、手が出るパキスタンの指導では、選手は普段、指導者をリスペクトしていない選手が多い。グランド内と、彼らの管理の元にある時だけ従っている「フリ」をしている場合が多いのだ。

 その疲労困憊の選手の言い分はこうなる。「監督は、外国人だからパキスタン人を理解していない」「日本人は真面目すぎる。少し休ませてくれ」なんとも代表選手のメンタリティだとは信じがたいが、これが現実である。実は、イランでも全く同じ経験をしている。こんな時は、何も言わず予定通りに練習を進めるに限る。これに反応、または相手してしまってはキリがない。外国語を使う私の言語能力で、現地語が大半を占める集団の話に入り込む隙はない。中途半端に言及すると、皆、話を都合の良いように解釈する。その噂が噂を呼び、私自身が墓穴を掘る結果となり、チーム内にブレが生ずる。
  彼らはその場をしのぐ為なら平気で嘘もつく。さらに、彼らは立場が上の会長の名前を引き合いに出して、午後の練習を中止にするように私を脅してくる。実に恥ずかしいエピソードだが、これが現実である。その日の練習後、帰ってメールを開くと会長から全く違う案件の連絡があり、引き合いに出した割には雰囲気が良すぎる。ということで、彼らは引き合いに出しただけで、会長へ何も伝えていないのが現実。ここで、私が変に今日の話を会長に持ちかけると、さらに混乱するという構造なのだ。

 毎度のことながらやはり「ピンチはチャンス」である。この機会を生かさずにして、真のパキスタン野球の成長には繋がらない。今回私の周り起きたことも、一時な疲労からくる感情の行き違いであり、野球の神様がくれた絆を強く結ぶきっかけなのだ。この次の練習にて、すかさず全員集め、選手へ語りかけた。なぜ私がパキスタンに来たのか。私がどれだけパキスタンの野球に魅力感じ、惚れ込んでいるか。君達と戦っているのではなく、君達を次のレベルへ導きたいのだと。

 私が信じているのは一つ。会長から言われた「現場は、全てお前に任せた。誰がなんと言おうと、現場はお前が言うことが絶対だ」独裁者的にも聞こえるかもしれないが、これが会長と私の信頼関係である。私がどんなに現場で孤立しても、これが耐えきれる唯一の理由である。

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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