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"世界の野球"アジア選手権・日本人監督の挑戦「パキスタン野球の可能性」

2015年9月29日

文・写真=色川冬馬

 9月18日韓国戦、初海外にワクワクする26歳を先発に指名した。彼が野球を始めたのは6年前、20歳の時だと言う。スピードガンがないので、目測ではあるが常時130キロ前半はでていると思う。直球をコーナーに突くコントロールに加え、キレの良いスライダーを投げ込む事が出来る。この日、韓国打線を相手に4回3失点に抑え、実力の片鱗をみせた。回を追うごとに緊張がほぐれ調子を上げる彼をみて、もっと投げさせたい気持ちはあったが、2日後の中国戦を考えると4回が限界だった。そもそもクイックが出来ないので、韓国サイドからすれば走り放題、そしてこの試合4つのボークというおまけ付きだった。それをしてでも、この快投は彼の実力を証明した試合だった。

 そして今大会、もう1人暴れている男がいた。試合中継のあった台湾戦では、豪快なトンネルを披露した22歳のショートだ。肩の強さだけ言えば、大会に参加した内野手で1番。あのトンネルは、クリケットから野球に転向、そして本格的に野球に向き合い始めたからこそのミスだと私は満足している。ゴロに対して全速力で突っ込むことしか知らなかった彼が、ルーティンステップを学び、ゴロ捕球の難しさの壁にぶつかっている証拠である。これから、彼がゴロ捕球に対してどう向き合うか、進化が問われる。野球の技術が向上する程、正面の捕球に悩む時期が来る。この時期を超えれば、彼は次のステージへ進む。それも、遠い世界ではないと私は感じている。さらに、彼は3ベースを放ちながらも、ホームへ暴走しアウトになる場面もあった。彼の素晴らしいとこは、豪快に失敗するとこ。非常にアグレッシブなこの男は、絶対にNOと言わない。合宿中、彼は左の小指を骨折していたにも関わらず、ギブスをすることなく、テーピングのみで最後まで戦いきった。彼の野球に対する情熱、スピード、そして神が与えた強肩は、本当にこれからが楽しみな逸材である。パキスタンに眠る才能たちは今、野球の虜となり必死にボールを追いかけている。

 国際情勢が乱れ、世界が不安視する西アジアの端パキスタン、そして中東諸国。密かに、この地域の野球は盛り上がり始めている。パキスタン野球が「野球で世界を繋ぐ」日もそう遠くはない。踏ん張れ!パキスタン野球!

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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