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"世界の野球"”アフリカからの挑戦・赤土の青春”ウガンダベースボール「ウガンダ野球の未来vol.1 日本からのサポートをどう行うか」

2017年2月22日

文・写真=長谷一宏(JICA青年海外協力隊・ウガンダ野球ナショナルコーチ)

 こんにちは。2017年1月中旬、私はウガンダで野球に携わった2年4か月の日々を終え日本に帰国しました。最後は遠く日本から今後私のやりたいこと、ウガンダ野球の未来について数回に渡りお話しして終わろうと思います。ウガンダ野球の未来を想像しながらご覧いただければと思います。

大会の整備(男子シニア、男子少年、女子野球、女子ソフトボール)

「野球はスポーツであり、スポーツは試合なのだ」これはウガンダのスポーツ協会スタッフの言葉です。選手は、そしてファンは試合を望んでいて、試合があるから選手の技術は向上し、競技の知名度もあがり、ビジネスにもなる。枝葉よりもまず幹である試合の整備が重要だというメッセージです。

 ウガンダでは2016年よりリーグ戦を開始しました。しかしこれは既に技術のある青年のためのリーグです。従って2017年からは12歳以下の少年達のトーナメント戦を開催する予定です。
 また、女子学生も積極的に練習をしています。女子選手はとてもパワフルです。また、男子にとってのサッカーのような圧倒的なメジャースポーツが女子にはあるわけではないので、ソフトボール、女子野球には非常に可能性を感じています。そのためソフトボールのリーグ戦、女子野球のトーナメント戦も2017年には実施を計画しています。
 これらの必要性を感じている一方、開催資金が不安定なため日本でイベント等を行うことで継続的にサポートをできればと考えています。

大学生チームのウガンダ遠征

 日本との交流の中でウガンダ野球を発展させることはウガンダ野球のみならず日本の野球にとっても有益であると考えています。その中の1つとして大学野球部のウガンダ遠征を企画したいと考えています
 日本野球とアメリカ野球の交流の舞台である日米野球には日本野球の黎明期と呼ばれる1908年に始まる素晴らしい歴史があります。このような交流試合を日ウで実現したいと考えています。
 ウガンダ野球はまだまだ未熟です。しかし指導者・選手達はそれに気づいていないのが現状です。「ウガンダの代表チームはアメリカの1Aくらいの実力だろ?」という声が現地の指導者からもありましたが、遥かに及びません。それ故に「本物」の強いチームを知ってほしいという思いがあります。いずれは沢村栄治投手のように日本のチームを抑え込むウガンダ人投手もでてくるかもしれません。日本の大学生にとっても野球のみならず「途上国」とされるウガンダを直接訪れることは今後の人生において有益だと思っています。野球の交流ももちろんですが、村や現地法人を訪れあらゆる方々と交流できる機会を設けたいと考えています。

サッカーとの相互発展

 在任中には野球のみならずサッカーのサポートもしたいと考えていました。これは自分への戒めとして今後は「野球対サッカー」という対立概念ではなく野球とサッカーを結び付けながら相互に発展させたいという思いがあったからです。町の中心にあったサッカーフィールドがビルの建設予定地となり、サッカー場が町から消えることが危惧された際、サッカー場を野球場の隣にある空き地につくれないかという進言をしました。
 サッカーをする子供達が野球をやり、野球をする子供達がサッカーをやるようになってもいいですし、町の人たちも両方の観戦をしてほしいと思いました。自身の仕事はスポーツの魅力を最大限に伝えることです。その上でスポーツをやるのかやらないのか、野球をやるのかサッカーをやるのかという選択は個々人に任せようと思っていました。サッカーはお金がかからないのでスラムの子供達にも競技をするチャンスを与えようと試みました。

 日本でも「ウガンダ野球」を知ってもらうために「フットサル大会」を企画したいと思っています。あらゆるスポーツと連携しながら双方の発展に寄与できるようなおもしろいものを作りあげていきたいと考えています。

審判、用具の製造に携わる方々との交流を通じた支援

「おい、パトリックがまた手を挙げているよ。どうせ審判のことを質問するんだろ」
「えーと、審判のことなんだけど…」
「やっぱり!!!笑 誰も審判になんか興味ないんだよ!笑」

 これは会議で実際にあった一幕です。パトリックという青年は会議でいつも審判に関する質問をして皆に笑われていました。選手として活躍する姿を見ていたので、「パト、審判をやりたいのかい?」と尋ねると「選手をやっていて思ったけど、この国には一流の審判がいない。だから自分がそれになりたい。そしたらウガンダ野球ももっと発展すると思うから」とのことでした。
 私は自分のことのみならずウガンダ野球全体のことを考える彼の情熱に沿いたい気持ちになりました。実際にリーグ戦を通じてジャッジの機会を増やし指導をしましたが私自身に審判の知識が乏しく、これまで日本の審判の方々との交流も持てておらず、疑問を尋ねることができなかった場面もありました。

 用具に関しても同様です。デリクという青年は日本から寄付された古いグローブで懸命に練習をしていました。そのため捕球面の皮が破れてしまい、修復が難しいと思っていました。元々がかなり古いモデルのグローブであったこと、デリクが懸命に練習をする選手であったことを考慮しアメリカからもらった1つのグローブを「今まで頑張って練習をしたご褒美にプレゼント」と言って渡しましたが、デリクは「どうしても元のグロ―ブがいい。あれが1番手にピッタリだから。」といい拒否しました。これは新しいものが好きなウガンダの人にとってはかなり珍しい発言で驚いてしまいました。そして「日本で修理できるところを探して欲しい。それで無理なら諦める」と言われ、日本に持って帰ってきてしまいました。

 私にもっと審判の、用具の知識があれば別の解決策があったように思います。ぜひこのコラムを読んでくださっている方々に上記に携わる方がおられましたらお会いしてお話しをお聞きしたく思っています。そして選手のみならず、審判や用具の製造に携わるウガンダの人へのサポート方法を考えていきたいと思っています。

活動を終えて

 さて、ウガンダで野球に情熱をささげた私の2年間も終わりです。振り返れば嬉しかったことは一瞬で、悔しかったり、もんもんと悩んでいる時間が大半を締めました。野球なんて普及する訳がない、日本の都合、価値観を押し付けるな、といった批判、なぜ国際協力の現場でスポーツが必要なのか、野球なのかといった質問、これら1つ1つを丁寧に考え真摯に向き合ってきたつもりです。
 また、これまでウガンダ野球に関わって来られた方々が素晴らしく、なぜ若輩の自分がここにいるのかと悩んだこともありました。

 しかし、真剣な選手達の取り組みやふいに訪れる一瞬の喜びはこれまでの人生の中では味わうことのできなかった何ともいえない感情を与えてくれました。リーグ戦を開始し、当初は観客が誰もいませんでしたが、ある試合で地元のチームが先取点を取った際、町から足を運んだ1人の観客が立ち上がり選手に拍手を送った光景は今でも目に焼き付いています。そこから1人また1人と徐々に観客も増えていきました。
 また、小さな子供が球場を訪れ試合を見て、試合後にピッチャーの真似をする光景や「野球をやりたい」と言った際にも、感動と喜び、そして安堵や不安までもが同時に押し寄せるなんとも奇妙な気持ちを味わうことができました。

 ウガンダでは「ヤギ」に相当する単語がたくさんあります。それは日本と比較し「ヤギ」が生活に根付いており、日本の人は気にしない微妙な差異も重要性を増すことからそれぞれに対応する単語が付けられていると考えられます。
 この話を聞き、感情も同様ではないのかと考えています。喜びにも怒りにも悲しみにもそれぞれあらゆる種類の喜びが、怒りが、悲しさがあり、言葉が対応できないほど豊かであると思います。ウガンダで過ごした日々の中で、今まで感じることのできなかった感情をシャワーのように浴び、彩りある豊かな心になったような気がしています。

 帰国後の進路はまだはっきりとしていません。しかし、これまでの日々を恥じることがないよう楽しんで過ごしていきたいと思います。日本各地で野球に携わっておられる方々のお話しをききながら、何かおもしろいことをできればと考えています。皆さま、ぜひお会いしましょう。
 さて次回は今号でも書いた大学生の訪ウプログラムの一環として試験的に行ったウガンダ野球を視察に訪れた大学生のスタディツアーの模様をお伝えします。お楽しみに!

著者プロフィール
長谷 一宏
1987年10月6日生
2014年10月より青年海外協力隊員としてウガンダ野球協会へ、選手の指導及び指導者育成のためナショナルコーチとして派遣されている。「ウガンダ野球の自立的・持続的な発展」を目標とし、各チームへの技術指導に加え、リーグ戦の運営、学校への普及などを行っている。

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