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"世界の野球" ”アフリカからの挑戦・赤土の青春” ウガンダベースボール「野球の普及と強制」

2016年9月8日

文・写真=長谷一宏(JICA青年海外協力隊・ウガンダ野球ナショナルコーチ)

「野球をやりたくない子に野球をすることを強制したくないな」
「野球をやりたいと言う子に『日本的な野球』を強制したくないな」
「野球をやる子全てに毎日練習をすることを強制したくないな」

 ウガンダ野球協会への配属が決まり、わくわくと不安が混じりながらの飛行機内で頭をよぎっていたことはこんなことでした。いろいろな「強制したくないな」。そしてウガンダで約2年の歳月が経過した今もその思いは変わっていません。

「野球をやりたくない子に野球をすることを強制したくないな」

 ウガンダではまだまだマイナースポーツである野球。しかし、だんだんと認知度は上がっており学校の先生から「うちの学校にぜひ野球を紹介しに来てほしい!」という依頼をたびたび受けます。「野球のおもしろさを伝えたい」という熱意にあふれる野球協会のスタッフ達と一緒に出かけていき野球の紹介をした後、いつも言うのは
「野球はおもしろかった?僕たちは野球を一緒に楽しんでくれる人が増えれば嬉しい。でももしフットボールが好きならフットボールをやればいいし、バスケットが好きならバスケットをすればいいよ!」

 この2年間、野球を通じて子供達は団結力を上げたり、目標に向かって努力することを覚えたり、他人の気持ちを考える習慣を持ったりと様々な成長を見せてきました。しかし、それは別に野球でなくても構いません。何か自分にとって楽しいことを見つけてほしいと思っています。
「バットで遠くにボールが飛んだらスカッとする。気持ちいいね」
「いつでも逆転のチャンスがあるのがいいね。ホームランを打てればゲームをひっくり返せるところがエキサイティングだ!」
「野球はフェアだよね。フットボールはフォワードばかり目立つし、バスケットやバレーボールは身長の高い民族、選手が活躍する。野球はみんなにチャンスがある。これはすごい大切なことだ!」
「野球は頭を使うスポーツだね。頭を使えれば勝つ確率がグッとあがるところがおもしろい。インテリジェンスを磨きたいと思っている。」

「野球をやりたいと言う子に『日本的な野球』を強制したくないな」

 嬉しいことに「野球はおもしろい!」と言って野球を始める子もたくさんいます。そこには常に「日本の野球」をどこまで求めるの?という自問自答があります。
 例えば日本の野球部であれば「時間を守ること」はマナーであり、当然とされていますよね。しかし、ウガンダでは道中で会った人との会話を楽しむのが文化であり、それゆえ遅刻をすることもあります。突発的に家事を頼まれる機会も多く、時計を持っていない選手もいます。そのような環境下で「時間を守らなければならない」と厳しく求めることは正しいのでしょうか。

 これに対する答えの1つは日本で選手としてプレーをしたオケロが持って帰ってきてくれました。指導者となったオケロは「挨拶をしっかりする」「道具を大切にする」「時間を守る」といった日本で当然とされていることを選手達に徹底させました。
「長谷さんは日本で常識とされていることがウガンダでも当てはまるとは限らないと考えて選手に強制させることが難しいと言っていた。しかし、これらの行動に関しては日本だけでなくウガンダでもライフスキルとして大切だとみんなが理解している。なのに文化の違いや環境の厳しさのせいにしてやろうとしない。でも、できない人達が多いからこそこれができる人はみんなからの信頼を集めることができると思う。結果的にいい仕事に就ける可能性が高くなると思う。だから厳しく求めたい」
 その結果、学校や両親、地域の方々が「子供達の態度が変わった」といって球場までの交通費をだすなど多くのサポートをしてくれるようになりました。
 また、日本の少年野球の指導現場では「フライを打つな!ゴロを打て!」と指示がとぶことがあります。ウガンダではグラウンド状態が悪く、ゴロを打てば不規則な打球になり出塁の確率が高くなります。しかし、国際大会でグラウンド状態がよくなれば、そして相手のレベルが上がればそれは通用する可能性がグッと下がります。そして今、ウガンダの子供達の楽しみは「ボールを遠くに飛ばす」ことです。ウガンダ野球の未来を考えると「ゴロ打ち」は適切ではないかもしれません。「日本の野球」を参考に「ウガンダ野球」をつくろう!という試みがこのようにして行われています。

「野球をやる子全てに毎日練習をすることを強制したくないな」

 スポーツに限らずあらゆる面で「途上国」では選択肢が少ないのかもしれません。当たり前のように見える行動もそれが好きで行っているわけではなく、選択肢がそれしかないからなんとなくやっているというふうに見えることもあります。もっと選択肢があればその中にもっと夢中になれることがあるのかもしれません。強制ではなく野球という選択肢を与えること。それがウガンダ野球協会の活動です。
 日本と同じようにサッカーを好きな子もいて野球を好きな子もいます。そして野球が好きな子の中にも週に1回友達と遊ぶ程度がいいと思う子もいれば、試合での勝利を目標とする子、海外でプレーをしたいという子までモチベーションは様々です。それぞれの「やりたい!」を実現できる環境を整えてあげることが大切です。

「まず試しにやってみよう。フットボールがおもしろいと思ったらフットボールをやればいいし、野球もいいな!と思ったならこの後も時々みんなで遊ぶといい。もうちょっとしてもっとうまくなりたい!思ったならちょっとだけ練習を頑張ってみるといい。そのうちみんなより速く球が投げられるようになって、ボールを遠くに飛ばせるようになるはずだから。そしてもっともっと頑張って、誰にも負けたくない!一番になりたい!海外でプレーをしたい!と思うようになったら相談においで。そのときはここにいるみんながきっと協力してくれるから。」

クラウドファンディング結果

皆さまのご支援のおかげで前回お知らせしたクラウドファンディングが成功し、カトー、オメリの2名が日本へ派遣されることが決まりました。また、ウガンダでスポンサーを獲得した投手のカベンゲも同時期に同目的で来日します。ご協力ありがとうございました!3人の滞在の模様は今後のコラムにて掲載予定です。お楽しみに!

滞在予定

カトー 8月31日より90日間
オメリ 10月21日より40日間
カベンゲ 11月5日より30日間

ウガンダ野球 動画

野球を東京オリンピック正式種目に!ウガンダチームはオリンピック出場を目指しています!#キャッチボール

【ウガンダより!】2020年 野球・ソフトボール復活! 「ありがとう」メッセージビデオ

動画撮影協力:アクション・フロム・ジャパニ 大平貴之

著者プロフィール
長谷 一宏
1987年10月6日生
2014年10月より青年海外協力隊員としてウガンダ野球協会へ、選手の指導及び指導者育成のためナショナルコーチとして派遣されている。「ウガンダ野球の自立的・持続的な発展」を目標とし、各チームへの技術指導に加え、リーグ戦の運営、学校への普及などを行っている。

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