ラテンアメリカと呼ばれるメキシコ以南のアメリカで支配的なスポーツは、おおむねサッカーであるが、歴史的にアメリカの影響が大きかったいくつかの国々では野球の方が盛んである。アメリカ人傭兵隊長が政権を掌握した歴史のあるこの国も、そういう国のひとつである。「国立競技場」と言えば、サッカー場が相場のこの地域にあって、首都マナグアのそれは、3万人収容の野球場である。その球場には、この国出身の最初のメジャーリーガーであるデニス・マルチネス元投手の名が冠されている。
野球の伝来は、1887年のこととされる。1904年には、首都マナグアにクラブチームができ、直前に勃発した南アフリカ戦争に際して大英帝国に立ち向かったオランダ系住民たちの呼び名にちなんで、その名を「ボエル」とした。このチームは現在もウィンターリーグの名門として君臨している。
野球が国民的スポーツとしての地位を確立するのは、1930年代のことである。アメリカ留学帰りの独裁者アナスタシオ・ソモサは支配の道具として野球を利用したのだ。その後、1956年にプロリーグが創設されたが、当初夏に行われていたこのリーグは、メジャーリーグのシーズンを邪魔しないよう翌年にウィンターリーグとなった。この結果、アメリカの球団と契約を結んだ選手が国内リーグから去ってしまい、1967年にプロリーグは廃絶してしまう。それでも、2004-05年シーズンからプロリーグは復活、現在4チームによって覇が競われている。2006-07年シーズンからはコロンビアリーグのチャンピオンとの国際シリーズが始まり、これは2014年に両国にパナマとメキシコのベラクルスリーグを加えた4か国によるラテンアメリカシリーズに発展している。
プロ未満のジュニア世代の育成の場は、地元の名士に資金援助によって運営されるクラブチームである。各自治体から援助もある全国大会ともなると、メジャーや国内プロリーグからスカウトが駆けつける。また、首都マナグアにはプロへの選手送出を目指したアカデミーも開設されるようになった。
U-18世代では、これまで目立った戦績は挙げていないニカラグアだが、昨年の「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」では、侍ジャパン相手に敗れたものの、1対3と善戦している。MLBではドラフト対象のアメリカ、カナダ、プエルトリコ以外の国の選手は16歳から契約可能で、その結果、ラテンアメリカ各国のそれ以上の年代の選手は、ほとんどがマイナーでプレーしていることを考えると、この結果も不思議ではない。今大会でも選手の多くはプロ経験のあるものと思われ、また、いまだプロ契約のない選手は、今大会が最後のアピールチャンスと目の色を変えてくるに違いない。その彼らのハングリーさが大きな武器になるだろう。
第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ
大会期間
2017年9月1日~9月11日
オープニングラウンド
9月1日(金)22:30 メキシコ 1 - 10 日本
9月3日(日)5:00 日本 0 - 4 アメリカ
9月4日(月)6:00 日本 7 - 2 キューバ
9月5日(火)3:00 オランダ 1 - 3 日本
9月5日(火)22:30 日本 12 - 0 南アフリカ
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
スーパーラウンド
9月7日(木)22:30 日本 4 - 3 オーストラリア
9月9日(土)6:00 日本 4 - 6 カナダ
9月10日(日)2:00 韓国 6 - 4 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
3位決定戦
9月11日(月)1:00 カナダ 1 - 8 日本
※開始時刻は日本時間(サンダー・ベイ:時差-13時間)
開催地
カナダ サンダー・ベイ
参加国
グループA
カナダ、韓国、チャイニーズ・タイペイ、オーストラリア、イタリア、ニカラグア
グループB
日本、アメリカ、キューバ、メキシコ、オランダ、南アフリカ